2015年12月28日号
先週の為替相場
調整ムード広がる
先週は25日金曜日クリスマスに絡み、世界的にもっとも取引が少ない週となった。市場は週末に向けてのポジション調整が主体となり、大きく下げていたNY原油先物に買い戻しが入るなど調整が主体の動きに。ドル円に関しては、15日・16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定された利上げへの期待感があるものの、動きとしてはこれまでのドル高に対する調整が主体となり、一時120円を試すなどの動きに。ユーロドルが1.09台後半を試すなど、全般にドル売りが優勢な展開となった。
主要通貨でやや目立ったのはポンドの売り。米国と並んで早期利上げが期待されていた英国だが、このところの賃金の伸びが鈍いことなどが懸念されており、早期の利上げ期待が後退。状況次第では2016年中の利上げ自体が難しいのではとの思惑が広がっており、ポンド売りを誘っている。22日に発表された11月の公共部門ネット負債(財政赤字に相当)の弱めの数字もポンド売りを誘った。対米ドルで4月以来の安値をつけた他、対円では節目と見られた180円をしっかり割り込み、一時179円を割り込むなど売りが優勢な展開に。もっとも英国は28日月曜日も祝日で、休場期間が長いこともあり、クリスマス休暇直前の買い戻しが入って、週の後半にかけては少し値を戻す動きを見せた。
今週の見通し
今週から海外勢がクリスマス休暇明けで復帰して、実質的2016年相場の始まりとなる。もっとも、クリスマスを避けて米GDPなど主要な指標が前倒しですでに発表されており、やや手がかりに欠ける展開に。
先週までドル売りの動きが続いていたが、この動きはクリスマス休暇を前にしたドル買いポジションの調整という見方が一般的。米国は来年4回の利上げが期待されているだけに、中長期的にはドル買いの意欲が強いと見られている。先週末の下値トライでドル円の120円ちょうど近辺の買いがしっかりしていたことも、買い安心感に繋がっており、ドル円は少し値を戻す動きが期待されている。
ただ、日本勢は31日木曜日が大晦日で銀行休業日(日本以外は通常営業)で、金曜日の元旦と合わせ営業日が短いこともあり、大きな動きは期待しにくいところ。来年以降の中長期的なポジション作成を期待して、下値しっかりの展開も、値幅は限定的なところにとどまる見込み。120円台を中心とした取引が続きそう。
なお、取引量がかなり少ないため、大口の売買注文が入ると相場の値動きが激しいものとなりやすい点には要注意。日本を除くと通常営業モードに戻りつつあるだけに、ヘッジファンドなど海外大口投資家の動きに要注意。大口取引による値動きは一時的なものにとどまることが多い。瞬間的な乱高下に備え、少し余裕を持った取引を心がけたいところ。31日発表の米新規失業保険申請件数(用語解説1)など、いつもはそれほど大きく反応しない指標でも、取引量が少ない分、一時的に動きが荒れる可能性があり要注意。なお、世界中の市場が基本お休みの元旦に中国が12月のPMI(用語解説2)を発表する。数字次第では週明け4日からの市場に影響が出てくるので要注意。弱めの数字が出てくると豪ドル売りに繋がる。86円ちょうどから半ばにかけての下値支持水準を割り込むと、下値リスクが一気に強まるので注意したいところ。
年明けは6日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(12月15日、16日開催分)、8日の米雇用統計が注目材料に。これらを通じて年内4回の利上げ期待がサポートされると、ドル買いの流れが強まりそう。先週までの調整でユーロドルの1.10、ドル円の120円等ポイントを試し、過熱感が一服しただけに、ドル高基調に復した場合、力強いものとなる可能性も。中長期的な125円のターゲットに向けた動きが始まるかどうかを注目したいところ。
三が日明け4日月曜日のISM製造業を始め、雇用統計の関連指標にも注意したい。ドルの買い戻しが入りやすい地合だけに、予想を上回る好結果などに反応しやすい。
用語の解説
新規失業保険申請件数 | Initial claims 米国本土内の失業者が失業保険給付を初めて申請した件数を米労働省が週ごとに集計したもの。失業者が増えると申請件数も増加するため、数字が大きくなる程弱い数字となる。週ベースの集計が翌週の木曜日に速報値として発表されるなど、速報性が高い。もっとも週ごとのブレが比較的大きいため、単体での数字だけでなく、ある程度まとまった期間の傾向を参考にすることが多く、4週移動平均の数字なども注目される。先週24日に発表された12月13日~19日分の数字は予想を下回る26.7万件と4週間ぶりの低水準(好結果)となった。31日に発表される12月20日~26日分は27.3万件と少し悪化見込みとなっているが、前週並みの数字が出てくるようだと、雇用情勢回復への期待感が強まり、ドルの買い戻しを誘いそう。 |
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中国PMI | Purchasing Managers Index 購買担当者景気指数とも呼ばれる。製造業やサービス業の購買担当者を対象としたアンケートの回答を元に導かれる景気指数。日本や欧州にも同様の指標がある。米国のISM景気指数も同様の指標。速報性が高いことが特徴で、相場への影響力も比較的高い。中国では国家統計局による指標と民間メディアグループ財新による指標の2種類が存在する。1日に発表されるのは国家統計局による製造業PMIと非製造業PMI。50が好悪判断の境目とされているが、注目度の高い製造業PMIは前回まで4回連続で50を下回っており、中国の景気減速懸念の判断材料の一つとされている。なお、財新製造業PMIは前回までに8ヶ月連続で50を下回るなど、国家統計局の数字よりも弱めに出ている(発表は4日)。製造業PMIの今回の予想は49.8、前回の49.6からやや改善も50には届かない見込み。予想及び前回を下回るような数字が出てくると、対中国向け輸出が自国経済で重要な位置を占める豪州への懸念につながり、豪ドル売りを誘いそう。 |
今週の注目指標
米ISM製造業景気指数(12月) 1月5日0:00 ☆☆ | 12月1日に発表された前回11月分の数字は、予想を大きく下回り、4年ぶりに節目の50を下回る48.6という低水準に。この数字はリーマン・ショック後の景気減速期であった2009年6月以来の水準。エネルギー価格の低下が主要因も、新興国市場の景気減速懸念などが背景にあると見られた。項目別に見ると、新規受注が48.9まで低下、価格指数に至っては35.5と前回の39.0から大きく低下しており、全体の重石となった。もっとも雇用指数は51.3と4ヵ月ぶりの高水準を付けており、大きな悲観には繋がらなかった。今回は49.0と、50には届かないものの少し改善の見込み。予想前後の数字が出て、雇用指数が前回同様に50を超えてくると、金曜日の雇用統計への悪材料にはならず、ドル買い基調継続へ。予想を大きく下回るとドル円の120円割れなどのきっかけになる可能性も。 |
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米FOMC議事録(12月15日/16日開催分) 1月7日04:00 ☆☆☆ | 9年半続いた実質的なゼロ金利政策の解除となる利上げを決定した今回のFOMC。シカゴ連銀のエバンス総裁を始め従来ハト派(利上げに慎重派)とされるメンバーも含め、全員一致の賛成による利上げとなった。議事録ではエバンス氏に加え、タルーロ理事やブレイナード理事などハト派メンバーの発言などに注意したいところ。順調ならば2016年一年で4回の利上げが期待されている今のFRB。議事録内容でその見通しが支えられるようだと、ドル買いの動きに繋がる。雇用統計前だけに上値追いには慎重になる可能性もあるが、121円台にしっかり乗せる程度の買いは十分期待できるところ。 |
米雇用統計(12月) 1月8日22:30 ☆☆☆ | 2016年の米国の利上げペースが注目される中、そのもっとも大きな鍵を握る雇用情勢への注目度は相当高い。ここ二回節目の20万人を超えてきた非農業部門雇用者数(NFP)は、今回20万人と節目の水準近辺が予想されている。予想通りもしくはそれ以上で大台を維持してくると、米国の利上げ期待を後押しし、ドル買いが入りそう。5.0%まで下げている失業率は、前回と変わらず5.0%が予想値に。一部ですでに完全失業水準ではと見られており、ここからさらに下げることが出来るかどうかは微妙なところに。予想を下回り4%台に突入するようだと、こちらもドル買い。利上げ期待の上昇という中長期的にも大きな影響を与える効果が期待されるだけに、数字次第では一気に122円台へ。 |
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