2016年01月12日号

(2016年01月04日~2016年01月08日)

先週の為替相場

年明け波乱のスタートに

2016年年明けの相場は波乱のスタートとなった。人民元安への警戒感から、中国株式市場が年明けから暴落。今年からサーキットブレーカー(用語解説1)制度を導入した中国株式市場は、今年最初の営業日となった4日の大暴落でいきなりサーキットブレーカーが発動。7日にも再び発動し、結局同制度が一旦休止となるなど、中国市場は大波乱の展開となった。この中国ショックが世界的なリスク回避の動きを招き、為替市場ではリスク回避通貨(用語解説2)である円買いが一気に強まる動きを見せた。

年末まで120円台前半を中心に狭いレンジでもみあっていたドル円は、4日の中国ショックで一気に119円割れまで下落。その後一旦値を戻したものの、120円が重くなりじりじりと下落。7日の二度目のサーキットブレーカー発動で117円台。さらに週明けには116円台まで値を落とすなど、激しい円高進行となった。中国人民銀行が週明けドル売り人民元買い介入を実施し、中国からの資金逃避の動きに歯止めをかける姿勢を示したことで、その後は少し値を戻しているものの、頭は重い。

8日の米雇用統計はかなりの好結果で、一時的にドル高円安が進行も、すぐに値を戻すなど円高傾向の強さが印象的な展開に。

ユーロ円、ポンド円、豪ドル円などクロス円も軒並みの円高進行。特に中国との経済的な結びつきが深い豪ドルは対円以外でも売り込まれる動きが目立った。

今週の見通し

リスク警戒感が継続する展開となりそう。ドル円は昨年9月から10月にかけて下値を支えた118円が中期的なサポートとして意識されていたが、今回の円高進行で同水準をしっかり割り込んだことで、下値リスクが強まる展開となっている。昨年8月の中国ショックの際につけた116円近辺が次のサポートとして意識されている。

8日の米雇用統計は好結果となったが、中国経済の鈍化懸念など、対外リスクが強まったことで、米FRBは市場が期待する今年4回の利上げペースを鈍化させる可能性が意識されている。今週発表される米指標などがきっかけとなり、こうした利上げペース鈍化見通しが強まるようだと、もう一段のドル安円高進行もありそう。116円を割り込むと、次は110円まで大きなサポートが無い。行き過ぎ警戒感などもあり、114円-115円では一旦買いが入ると見られるが、下方向に向きやすい流れは意識しておきたい。

資源国通貨、新興国通貨安の流れは、ドル円以上に厳しいものとなりそう。NY原油の下げが止まらず、30ドル割れも視野に入る状況。OPECの減産不合意から始まった今回の原油安。需給バランスの乱れが指摘されており、当面は下値リスクが意識される展開に。国際商品市場全般の低下にもつながっており、資源国通貨としてはかなり厳しい局面となっている。特に先進国唯一の純産油国(原油の輸出>輸入の国)であるカナダへは売りが集まっている。2012年以来となる82円台をつけたカナダ円は、80円の大台が意識されるところ。対ドルではすでに13年ぶりのカナダ安となっており、地合いは相当軟調なものとなっている。中国が最大の輸出先である豪ドルも下値リスクが意識されている。すでに大きく値を落としており、週明けには81円割れまで下落。そこからはさすがに少し値を戻しているが、84円がすでに重くなっており、下値を意識する展開が続いている。中国動向次第では80円割れも視野に。

用語の解説

サーキットブレーカーCircuit Breaker
株式市場や商品先物市場などにおいて、値動きがあらかじめ定められた幅以上の変動を起こした場合に、取引を一旦休止とする制度。中国では昨年夏の株式市場急落をうけて今年から同制度の導入を決定。中国を代表する株価指数であるCSI300指数が前日比で上下5%を超える動きを見せた時点で15分間の取引停止、同7%を超える動きを見せた時点で終日の取引停止という仕組みを採用した。しかし、制度開始となった1月4日の市場でいきなり7%を超える下落となり取引停止を実施。その3日後に再び7%を超える下落となり、わずか4営業日で二回も取引が終日停止となる異例の事態となった。1月8日からは同制度の当面の停止が発表されている。
リスク回避通貨市場の混乱、政情不安、戦争などの紛争などにより、世界的にリスクが高まる局面において、投資資金の逃避先として利用される通貨。かつては市場の中心であり圧倒的な流動性を誇る米ドルがこの役割を果たしており、「有事のドル買い」と呼ばれていた。しかし、90年代の湾岸戦争や2001年の同時多発テロ、さらには2008年のリーマンショックなどにおいて、米国がリスクの主体となったことから、ドル売りが起こり、米ドルのリスク回避通貨としての役割は後退した。代わって永世中立国であるスイスフランがその役割を果たす場面も見られた。しかし、スイス中銀による2015年1月のユーロスイスでのユーロ買い介入の突然の取りやめとその後の市場の混乱をうけて、その役割は一気に小さくなった。
これらの結果から、現在リスク回避通貨としては日本円がその役割をもっとも強く担っている。ドル、ユーロに次ぐ流動性があること、金融システムが安定していることなどが、市場の信頼につながっている。

今週の注目指標

英中銀金融政策会合(MPC)
1月14日21:00
☆☆
米国に次いで利上げが早いと見込まれていた英国であるが、ここに来て利上げ期待が後退している。昨年の夏ごろは、早ければ今年の第1四半期にも利上げに踏み込むと見込まれていたが、今年終盤から来年以降に先送りされるとの見方が広がってきた。原油安やポンド高を受けての輸入物価の低下などにより、インフレ率が低迷。早期利上げの根拠とされてきた賃金の上昇もここに来て鈍化を見せており、厳しい状況が続いている。もっとも、英中銀は世界有数のインフレファイター(景気よりも物価安定を重視する中銀の姿勢)として知られており、同会合の参加者9名のうち一人は昨年8月以降一貫して利上げを主張している。この主張に同調者が出るようだと、ポンド円は直近の低下から反発し、173円台を目指す可能性も。
米小売売上高(12月)
1月15日22:30
☆☆☆
米国の個人消費動向を直接現すことで重要視される指標。特に12月の小売売上高はクリスマス商戦動向を反映しており、注目度が高い。今のところの予想は前月比+0.1%(11月+0.2%)、変動の激しい自動車を除いたコアの数字が前月比+0.2%(11月+0.4%)。11月に比べてやや低調も、プラス圏という見方。これまでに発表された米小売各社のクリスマス商戦の売上高は予想を少し上回る好結果となっており、それほど弱い数字にはならないのではとの期待につながっている。もっとも、ウォールマートなどかなりの大手小売業者がまだ12月分の売上げを発表しておらず、波乱が起こる可能性も。予想を大きく下回り前月比マイナスを記録すると、一気のドル売りも。この場合116円をめぐる攻防となりそう。
米生産者物価指数(PPI/12月)
1月15日22:30
☆☆
米雇用統計と並んで今後の米国の利上げペースに影響を与えると見られるインフレ動向。主要インフレ指標の中で最も早く生産者物価指数が発表される。原油安の影響を受けて全体の数字は前年比-1.0%と、11月の-1.1%に続いて大きな低下が見込まれている。ある程度は織り込み済みも、予想を超えて前月よりも大きな下落率を見せると、ドル売りにつながる可能性も。もっとも、来週の消費者物価指数など他のインフレ指標を待ちたいという思惑もあり、よほどのブレが無い限り、同指標単独で116円割れを試すのは厳しそう。

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