2016年01月18日号

(2016年01月11日~2016年01月15日)

先週の為替相場

神経質な展開続く

年初からの中国ショック。人民元安は中国当局の介入もあって一服する動きを見せ、上海株も一時持ち直す動きを見せたが、結局は売りが優勢になるなど、不安定な展開が続いている。原油安の動きも継続。NY原油先物(WTI)は心理的に大きな節目であった30ドルを一時割り込み、2003年以来となる安値圏まで下落する動きを見せた。先進国唯一の産油国(輸出>輸入)であるカナダ(用語説明1)を中心に豪州やNZなど資源国の通貨を売る動きが目立った。

116円台まで値を落としていたドル円は、人民元安の一服などを好感して、一時118円台を回復。しかし、週末に再び116円台まで値を落とし、さらに直近安値を更新してドル安円高をトライするなど頭の重さが印象的な展開となった。先行き不透明感が世界的に大きく、リスク回避通貨である円とユーロに投資資金が流れ込む動きが続いている。

今週の見通し

下値への警戒感も広がっているが、中国経済の不透明感が強く、NY原油の下げ止まりも見えない中だけに、不安定な展開が続くと見られる。ドル円は昨年末からの下げ局面で意識されていた118円00-50銭のサポートラインを年初の動きで割り込んだ後、同水準が上値抵抗水準として作用している。中期的なドル高円安の大きな根拠とされてきた米国の年内4回の追加利上げ観測に関しても、世界経済の不安定性からペースの鈍化を余儀なくされるのではとの思惑が広がっており、ドル売りにつながっている。8月の中国ショック時には維持した116円の大台が目先の重要なポイント。すでに大きく値を落としてきただけに、安値からの売りには慎重な姿勢も見られ、116円台前半では買い戻し注文も入っているため、割り込むかどうかは微妙なところ。ただ実際に割り込んだ場合は、もう一段大きな下値トライが入り、次の大台115円もあっさり割り込むような動きまで意識されるところに。

ユーロは対ドルでキャリートレード(用語説明2)の解消による買戻しなどが目立つこともあり、円に対しても他の通貨に比べるとしっかりの展開となっている。しかし、その他通貨は基本的に軟調。とくにカナダ、豪ドルといった資源国通貨や、南アランド、トルコリラ、ブラジルレアルなど新興国通貨売りが目立っている。リスク警戒感が広がり、投機的な取引に対して慎重な動きが出ることで、流動性や信用性に欠ける新興国通貨から投資資金が逃げやすい状況が出来ている。また、資源国、新興国の多くが重要な輸出先として位置づけている中国発のショックであることが、こうした状況をさらに厳しいものとしている。

ただ、ここまで株安円高が進むと、さすがにやりすぎ感も出てきている。一時80円の大台を割り込み、その後少し値を戻している豪ドルは、流れ次第では再びの80円割れの懸念も。しかし、中国ショックが落ち着き、日経平均を始め先進国の株価下落も一服してくるようだと、先週末の80円割れをいいきっかけとして83円台まで反発する可能性も充分にある。このあたりは中国及び原油市場次第といったところ。

用語の解説

産油国としてのカナダ輸出先のほとんどが隣の米国ということもあって、日本では産油国のイメージがそれほど大きくないカナダ。しかし、国際石油資本(メジャー)のBP社が発行するエネルギー白書の最新データ(2014年)によると、埋蔵量で世界第3位、生産量で第4位の石油大国となっている。生産量だけで見ると米国は世界一位となっているが、消費量がそれ以上に大きいため、カナダは先進国の中で唯一、原油の輸出が輸入を上回る(純)産油国の定義に当てはまる国となっている。カナダ統計局によると原油の輸出が全商品輸出の中で占める割合は17.5%(2014年、以下も同じ)、天然ガスなども含めたエネルギー関連資源全体では24.3%と、輸出品目の中でトップの位置を占めている。それだけに原油安が自国経済に与える影響がかなり大きなものとなっている。
キャリートレードキャリー取引ともいう。金利の低い国の通貨で資金を調達(借り入れ)し、金利の高い国の通貨に交換(外国為替取引)、金利を利用して収益を稼ぐ運用手法のこと。長らくゼロ金利が続き、世界的に見て低金利であった日本円が調達通貨として利用されてきた(この場合は円キャリートレードと呼ばれる)。また、最近ではマイナス金利に陥ったユーロを調達通貨として利用するケースも目立っている(この場合はユーロキャリートレードと呼ばれる)。
機関投資家やヘッジファンドなどの間で有用な投資法として広く利用されてきたこの取引手法。しかし金利差を狙うという関係上、リスクが高く先行きが不安定で金利差以上の値動きが予想される局面では利用しにくいという性質がある。その為、世界的にリスク警戒感が強まる場面では、こうした取引を解消する動き(保有していた高金利通貨を売って、調達通貨であった円やユーロを買い戻す動き)が広がることになる。

今週の注目指標

中国第4四半期GDP(前年比)1月19日11:00
☆☆☆
年初からの中国ショックの背景には、市場で根強い中国経済の鈍化懸念がある。そうした中、今週は中国の第4四半期GDPが発表される。前回7-9月期のGDPは前年比+6.9%、今回の予想値も+6.9%となっており、7-9月並みの成長率が期待されている。今月16日に中国の李首相は2015年の実質GDP成長率について7%前後と発言している。予想を大きく下回る場合、2015年の成長率が7%を下回り、政府の想定以上の鈍化が進んでいるとして、中国への警戒感が強まる可能性がある。この場合、リスク回避の円高から、ドル円は116円を割り込んで下をトライする可能性が高まると見られる。
カナダ中銀金融政策発表
1月21日00:00
☆☆☆
このところの原油安を受けてカナダ経済は深刻なダメージを受けており、今回の中銀会合で利下げを決定するのではとの期待が強まっている。もっとも、経済的な結びつきの非常に深い米国が先月利上げに踏み切っており(0.00%~0.25%から0.25%~0.50%)、現状で0.50%のカナダが利下げを実施して0.25%となると、金利差が並ぶもしくは下回るところまで変化してしまうだけに、慎重な見方も強く、見通しはほぼ真っ二つになっている。利下げを実施した場合、カナダ売りの動きが強まり、80円をしっかり下回る展開となりそう。
ECB理事会
1月21日21:45
☆☆
金融政策自体は現行維持で市場の見通しが一致しており、波乱要素は少ない。ただ、このところの国際経済の不安定な状況もあって、ECBが比較的早い段階で追加緩和に踏み切るのではとの思惑が一部で広がっている。具体的には現行で既にマイナス圏(-0.1%)にある中銀預金金利のマイナス幅を拡大する方向となりそう。こうした動きに向けて、理事会後に行われるドラギECB総裁の記者会見に注目が集まっており、総裁が今後の緩和に前向きな姿勢を示すと、ユーロ売りが広がり、ユーロドルが1.07の節目を意識して売り込まれる可能性も。

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