2016年02月01日号

(2016年01月25日~2016年01月29日)

先週の為替相場

日銀のマイナス金利導入で急激な円安に

先週28日、29日の日銀金融政策決定会合において、日本では初めてとなるマイナス金利(用語説明1)の導入が決定された。原油安によるデフレ圧力や中国など新興国の景気鈍化への警戒感などから、市場では今会合での追加緩和を期待する声が上がっていた。もっとも、そうした期待はあくまで量的緩和の拡大や踏み込んだとしても付利(用語説明1内で追加説明)の0.1%から0.05%への細かい引き下げなどにとどまると見られていた。しかし、日銀は市場の想定範囲外であったマイナス金利導入にまで踏み込んできた。発表の10分ほど前に日経新聞が「会合でマイナス金利を議論」と報じたことでドル円が118円台から119円台前半まで上昇して迎えた実際の結果発表。マイナス金利導入決定の一報にドル円は121円台半ば手前まで一気に上昇。その後一旦上昇幅をすべて打ち消すなど派手な振幅を経て、海外市場で高値を更新して121円台後半をつけるなど、円安の動きが一気に広がった。

日銀会合までも比較的堅調な展開を見せていた。先々週のECB理事会後にドラギECB総裁が追加緩和を示唆したことで、市場の過剰なリスク警戒感が後退。ドル買いユーロ売り円売りの流れが出来ていた。

26日、27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場が期待する3月の米追加利上げについて慎重な姿勢が目立ったことも、世界的な株価上昇の材料となり、リスク警戒感後退による円売りを誘った形に。

また懸念されていたNY原油について、サウジアラビアとロシアなどが減産で協調へとの一部報道などが原油の買戻しを誘った。底値が見えない下げとなっていたNY原油が下げ止まりを見せていたことで、資源国通貨の買戻しが入る場面も見られた。

もうひとつの注目材料である米国の第4四半期GDP速報値は予想を下回る弱めの結果となった。しかし、内訳の中で個人消費が堅調な伸びを示したこともあり、影響は限定的なものにとどまった。

今週の見通し

マイナス金利の影響をどこまで見込むか。週末に報じられたIMM通貨先物(用語説明2)の26日時点での円ポジションは、50026枚の買い越し(円買いポジション>円売りポジション)と会合前の段階で円買いがかなり積みあがっていた。そうしたポジションのかなりの部分が先週金曜日の動きの中で解消されたと思われるが、まだそれなりの額が残っていると見られ、120円に近づくとドル買い円売りの意欲が強いと考えられる。今回のマイナス金利について中期的な円安の影響に懐疑的な見方も見られるが、当面は下値でのドル買い円売り意欲が残り、堅調な展開が期待されるところに。120円台での買い意欲を意識しながら、122円台トライのタイミングを図る展開が予想される。

資源国通貨の買い戻し基調にも注目したい。日銀のマイナス金利導入は日本株の大幅な上昇を招いただけでなく、NYダウ平均株価が終値ベースで400ドル近い上昇を見せるなど、世界的な株高の流れを誘った。商品市場も買戻しが目立ち、懸念されているNY原油先物も33台ドル後半まで値を戻すなど、世界的なリスク警戒感後退の流れを加速させた。株安・原油安などを背景に年明け以降売りが目立った資源国通貨にも買戻しの動きが広がっている。豪ドル円は節目の85円をしっかり超えて上昇。一時86円台をつけたあと少し調整が入ったものの、85円手前には買い意欲も見られ85円台後半での推移に。昨年末に推移していた88円近辺ぐらいまでの買戻しは充分ありそう。

その他の通貨も基本的に外貨買い円売りの流れ。それだけ今回のマイナス金利のインパクトが大きかったといえる。

用語の解説

マイナス金利金利がマイナスに成ること。日本では2003年に金融機関同士が短期資金の流通を行う無担保コール翌日物市場でマイナス金利が生じたことがある。中央銀行の施策としてのマイナス金利という場合は、金融緩和策の一環で政策金利の一部をマイナスとするもの。一般的には金融機関が中央銀行に預け入れる当座預金の金利(預金に対する法定準備金を超える預け入れに対する金利を付利と呼ぶ)をマイナスとするもの。2012年にデンマークが世界で初めて政策金利のマイナス金利を実行した。その後、2014年にECB、スイス、2015年にスウェーデンがマイナス金利を導入。1月28日、29日の日銀金融政策決定会合で、日本も5通貨目となるマイナス金利に踏み切った。
今回の日銀によるマイナス金利は金融機関が日銀に預ける当座預金の一部をマイナスとするもの。従来預け入れていた残高相当額は「基礎残高」として従来通り+0.1%の金利が付与される。つづいて量的緩和などにより日銀の当座預金残高がマクロ的に増加する分の調整として「マクロ加算残高」としてゼロ金利に。これら2つに含まれない分に関してのみ「政策金利残高」としてマイナス0.1%のマイナス金利が適用される。
IMM通貨先物シカゴマーカンタイル取引所(CME)で取引されている通貨先物のこと。IMMは「International Money Market」の略。3月、6月、9月、12月の第3水曜日を決済日とした先物取引が行われる。基本的には対米ドルに対する取引となる。ヘッジファンドや金融機関などが同取引に参加しており、火曜日時点でのこれらのポジション残高がその週末に報じられる。なお、計測日と発表日にタイムラグが有るため報じられた時点では実体とずれている場合がある点が注意事項。

今週の注目指標

米大統領選挙アイオワ州党員大会
2月1日 ☆
今年11月の大統領選に向け、共和、民主両党の候補者を決める党員大会が2月1日アイオワ州でスタートする。今月はニューハンプシャー州で9日に予定されており、その後は9州での大会が重なる3月1日のスーパーチューズデーとなる。アイオワ州での党員大会、共和党は実業家のトランプ氏がリードを保っている。クルーズ上院議員が二番手、ルビオ上院議員が三番手。宣伝費をもっともつぎ込んだと言われたブッシュ前フロリダ州知事は低迷。民主党は混戦でクリントン前国務長官が世論調査でトップに立っているものの、サンダース上院議員が僅差で追っている状況。
トランプ氏は対中国だけでなく対日本へも貿易関係で非難する発言を続けておりこのまま共和党候補として独走した場合、リスク要因と意識される可能性も。
豪中銀金融政策会合
2月2日12:30
豪中銀(RBA)は2日の金融政策で政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを史上最低水準である2.0%で据え置く見込み。最大の輸出先である中国経済の鈍化懸念などから利下げの期待が一部で出ているが、先週発表された第4四半期消費者物価指数は前年比+1.7%と第3四半期の+1.5%から伸びており、利下げ期待はそれほど高まっていない。現在の貿易情勢や商品市場動向などを踏まえて、今後について声明でどのような姿勢を示すかが注目ポイントに。
英中銀金融政策会合(MPC)
2月4日
☆☆
賃金の上昇や不動産投資の活性などを受けて米国に次いで利上げに向かうと目されていた英国。しかし、ポンド安やエネルギー価格の低下を受けて、デフレ圧力が拡大。インフレターゲットの対象である消費者物価指数前年比が昨年秋にマイナス圏まで低下。その後回復を見せ直近12月の数字は約1年ぶりの高水準である+0.2%まで上昇を見せたが、ターゲットの許容下限である+1.0%はまだ程遠い状況となっている。こうした状況を受けてカーニー総裁は利上げ時期は今ではないとの発言を行っており、今回の会合でも現状維持が見込まれている。昨年8月以降会合で利上げを主張しているマカファティ委員が据え置きに回るようだと、利上げ時期の先送り見通しがさらに加速し、ポンド売りに。この場合節目の170円を意識する展開も。総裁などの意見にあまり左右されない同会合だけに利上げ派が増えている可能性も。この場合はポンド買いが強まり、175円を超えて上昇する期待も。
米雇用統計/非農業部門雇用者数(NFP)(前月比)(1月)
2月5日22:30
☆☆☆
米FRBに課せられた二大命題は「物価の安定」と「雇用の最大化」。予想が別れる3月のFOMCでの利上げ実施の可否について、もっとも影響が大きい指標ということで、市場の注目を集めている。
事前の予想は+19.0万人。前回12月の+29.2万人からはかなり増加数が抑えられ、節目の20万人の大台にも届かないという見込みになっている。ただ、直近3回の+29.2万人、+25.2万人、+30.7万人という数字が高すぎたこともあり、その分の調整を考えると、それほど弱い数字とはいえない。予想前後の数字が出てくると、3月の利上げ期待はそれほど高くはならないものの継続とみられる。直近3回並みとは言わないまでも25万人にせまるような数字が出てくると、利上げ期待を押し上げ、ドル買いが広がる見込み。この場合は中長期的な125円に向けた動きも期待できる。一方で、調整が強く出て15万人を割りこむようだと、利上げ期待が後退。この場合は120円を巡る攻防も。同時に発表される失業率はここ3回と同じ5.0%の予想。

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