2016年02月08日号

(2016年02月01日~2016年02月05日)

先週の為替相場

急速にドル売り広がる

先々週の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利導入を受けて121円台まで上昇したドル円が、116円台まで大きく値を落とすなど、ドル売りが急速に広がった。中国経済の鈍化懸念や原油安による物価の低下圧力などを受けて米国が追加利上げのペースを鈍化させるとの思惑が広がり、ドル売りに繋がった形。米国の金融政策の実務を担当し、地区連銀の中でも唯一常に投票権を有する重職であるNY連銀総裁のダドリー氏が、「金融市場環境は利上げを決めた12月のFOMC時点よりも逼迫しており、次回会合での勘案必要」と、3月の利上げに消極的な発言を行ったことも、ドル売りに拍車をかけた。ユーロドルが1.08台から1.12台までユーロ高ドル安が進むなど、ドルは全面安の流れに。結果的に日銀のマイナス金利の効果は数日のものとなり、日銀金融政策決定会合結果発表時の水準よりもドル安円高の水準に。

注目された5日の米雇用統計(2月分)は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回り、瞬間的にドル売りが進行。ドル円は先月20日以来のドル安円高圏となる116円30銭近辺まで値を落とした。しかし、失業率の低下や平均時給の上昇など、NFP以外の数字は好数字であり、好悪入り交じる結果に直ぐに値を戻し、その後は117円台を回復するなどドル買いがやや優勢な展開に。雇用統計という大きなイベントをクリアしたことで、先週を通じて売り込まれたドル売りポジションに対する調整が出た面も。

その他目立ったのは、ポンドと豪ドルの売り。両通貨とも対米ドル、対円ともに売り込まれた。

ポンドはスーパーサーズデー(用語説明1)となった4日の英中銀金融政策会合(MPC)において、8月以降一貫して利上げを主張してきたマカファティ委員が、一転して据え置きに回り、MPCが全会一致での据え置き決定となったことを受けたポンド売りに。カーニー英中銀総裁やブロードベント同副総裁などが、現在は利上げを実施する状況ではないと発言したことも、ポンド売りの材料となった。

豪ドルは5日の豪中銀四半期金融政策報告において、低インフレにより金融緩和策(利下げ)の余地との指摘があり、豪ドル売りに。

今週の見通し

今週の10日、11日に予定されているイエレン議長による半期議会証言(用語解説2)が注目されている。このところフィッシャーFRB副議長やダドリーNY連銀総裁など、FRBの要人から今後の利上げについて慎重な見方が目立っている。もっとも、タカ派(利上げの積極的)のメンバーからは利上げに前向きな発言が出ており、議長の証言が利上げ・利下げのどちらへのバイアスが目立つものかが注目されるところに。イエレン議長は元々非常にハト派(利上げに慎重)な人物であるが、議会証言という場は比較的前向きな見解を述べるケースが目立つだけに、事前の見通しが難しい。

先週の雇用統計での平均時給の伸びにも見られるように、雇用増だけでなく賃金の上昇まで目立ちつつある米国の雇用市場の堅調さを強調してくると、利上げ期待が支えられ、ドル買いが優勢に。この場合ドル円は日銀金融政策決定会合前の119円近いところまでの上昇も期待される。一方で、中国の景気鈍化などに見られる対外リスクなどに焦点を当てる証言となった場合、利上げ期待が相当払拭される。この場合、116円を試す動きが予想されるところ。

再び軟化気味の原油市場動向も警戒される。米大手石油ガス開発のベーカー・フューズが5日に発表した米国内の原油掘削装置(リグ)稼働数が7週連続で減少するなど、需給バランスの崩れに関しては解消の動きも見えてきているが、サウジアラビアを始めとした生産側の減産への動きが具体的に見えてこない限り、原油先物の不安定な状況は続くと見られている。今後30ドルを割り込んで更に下を試すような展開になると、産油国であるカナダドルに加え、豪ドルや南アランドなどの資源国通貨にはかなりの重石に。もっとも、一時ほど警戒感は広がっておらず、カナダ売りなどは今のところ限定的なものにとどまっている。このまま大きな動きが抑えられると、これまで売り込まれてきた反動もあって、カナダ円は87円程度までの戻しも期待されるところ。

用語の解説

スーパーサーズデーSuper Thursday
原則として毎月第1木曜日に開催される英国中央銀行の金融政策会合では、長い間会合後の発表が結果のみに限定され、会合後の会見や声明発表が原則行われないことに加え、2週間後の議事録発表までは投票の内訳などについても開示されず、速報的な情報開示がかなり少ない会合であった。また、3ヶ月に一度の四半期インフレ報告について、MPC時点では完成しており会合内で参考にされると示されていたものの、一般への開示は会合の数日後という方針であった。
しかし、昨年8月に方針が大きく変更され、会合後の結果発表時に合わせて議事録を公表、投票内訳なども同時発表、また、四半期インフレ報告についても会合結果と同時に内容の公表となった。そして四半期インフレ報告とMPCの結果が同時に発表される2月、5月、8月、11月を特にスーパーサーズデーと呼ぶこととなった。
半期議会証言インフレの抑制などを目的とした旧ハンフリー・ホーキンズ法に基づいて、FRB議長が半期に一度2月と7月に上院/下院両院で行う証言。法律自体は2000年に失効しているが、慣習としてその後も継続して実施されている。経済見通しや金融政策に関する報告書(ハンフリー・ホーキンズ報告書)を前もって提出し、その報告書に沿って証言が行われる。上院/下院ともに同じ報告書を元にした証言となるため、先に行われる証言に(今年の場合は10日の下院金融サービス委員会)より注目が集まる。もっとも、質疑応答などで後の(今年の場合は11日の上院銀行委員会)証言が相場に大きな影響を与えることもある。

今週の注目指標

春節
2月7日~13日
旧暦の正月。中華圏でもっとも重要とされる祝祭日で、新暦の元日にあたる2月8日だけでなく7日日曜日から13日土曜日までが休日となる。今や世界の相場動向に大きな影響を与える中国株式市場や中国人民元市場などが休場となるため注意が必要。具体的に相場をどちらかに動かすものではないが、アジア圏を中心に取引参加者自体が減少するため、不安定な値動きに注意したいところ。
ニューハンプシャー州予備選挙
2月9日
1日のアイオワ州での共和党、民主党両党の党員集会で幕を開けた2016年の大統領選挙。次の舞台となるのが9日のニューハンプシャー州での予備選挙。初戦のアイオワ州では、民主党はクリントン前国務長官とサンダース上院議員がほぼ互角の情勢となり、わずか0.2%の差でクリントン前国務長官の勝利となった。今回の結果次第で、どちらかの候補の優位性がはっきり出てくるかが注目材料に。共和党は事前世論調査でトップと言われたトランプ氏が2位に沈み、保守強硬派のクルーズ上院議員が勝利。穏健派と言われるルビオ上院議員が3位ながら2位のトランプ氏に支持率で迫っており、三つ巴の争いに。同州でもトップに立てないようだと、トランプ氏はかなり厳しくなるとも言われており、結果が注目される。経済政策などが不透明なトランプ氏が勝利してくると、ドルに対してはやや売り材料。116円を割りこむような影響までは出てこないとみられるが、頭の重い展開になる可能性も。
米小売売上高
2月12日22:30
☆☆
米国の個人消費を表す重要な指標である小売売上高。前回12月分の数字は、総合、変動の大きい自動車除いたコア部分ともに前月比-0.1%の減少となり、米国の第4四半期の成長鈍化を印象づけた。今回はともに+0.1%の回復が期待されている。期待通りの数字が出てくると、先週の米雇用統計での平均時給の上昇とも合わせ、個人消費をめぐる好調な状況の数字的な裏付けとなる。予想をさらに上回る好結果となると、ドル買いが加速し、119円を目指す動きに繋がる可能性も。

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