2016年02月15日号

(2016年02月08日~2016年02月12日)

先週の為替相場

ドル円一時110円台まで

世界的に株安の動きが強まり、ドル安円高の動きが広がった。春節で中国市場が1週間のお休みとなり、アジア市場での参加者が減る中、11日建国記念日で日本勢もお休みという状況で、投機筋などからの売りが加速。安値をつける展開となった。もっとも、流石にやり過ぎ感があったことや、週末の欧米市場で株の買い戻しが優勢となったこと、財務省・日銀などからの介入を含めた対応が入るのではとの思惑が広がったことなどから、安値からは少し値を戻している。

昨年12月の日銀短観調査による大企業製造業の想定為替レート(用語説明1)は平均で119円40銭。現水準は想定レートからかなり円高に乖離しており、輸出企業を中心に決算の大きな下振れと、来季予想の下方修正が意識される水準だけに、財務省・日銀当局からの対応が入ってもおかしくない状況。黒田総裁が安倍首相の元を訪れただけでドル買い円売りの動きが広がるなど、市場はかなり神経質な動きを見せた。

その他通貨も基本的にはドル売りの動き。ユーロドルが一時1.13台に乗せる場面などが見られた。ドルの追加利上げが相当後ろにずれるとの見通しが、ドル売りに繋がる展開に。

豪ドル円が78円割れ、ポンド円が160円割れをつけるなど、円高の動きが強まる場面も見られた。もっとも、週末にかけては調整が主体に。26ドル近辺まで下げていたNY原油が下げ止まりを見せたことなども、資源国通貨の買い戻しに寄与した。

今週の見通し

警戒感の強い展開となっているが、短期的には調整ムードが広がっている。流石にやり過ぎ感が強く、自律反発を誘う展開に。先進国による為替介入(用語説明2)に関しては国際的な批判も強く、ハードルが高いため、実施については微妙なところもある。ただ、水準を引き上げるかたちではなく、急激な変化への対応という形での介入であれば、実施の余地は充分あるだけに、安値からのドル売り円買いには慎重な姿勢が目立っている。また、為替介入以外にも、日銀による臨時会合での追加緩和など、円高阻止の手段は幾つもあるだけに、ここから更に円高が加速するという展開はやや難しいか。

春節明けで懸念された中国市場の混乱も見られず、市場の警戒感は後退気味。市場の注目はこの調整ムードがどこまで続くか。

戻りでは売り意欲も目立っている。急速な円高進行で輸出企業などの実需筋の一部で売り遅れが目立っており、115円を超えた水準からはドル売り円買い注文が入ってきている。

今週はFOMC議事録が注目を集める程度で、それほど大きな材料もなく、世界の株式市場動向や中国経済動向などを睨みながらの展開が見込まれる。短期的に一旦は底を打ったという見方も強く、110円台は少し遠くなった印象。ポンド円など下げが目立っていた通貨ペアの買い戻し傾向もドル円を支えそう。大きな新規材料が入らなければ115円を一旦試す展開となりそう。

115円を超えて回復できるかどうかは、米国市場動向次第。3月の利上げ見送りは織り込みが進んだものの、年内いっぱいの金利据え置きまでは織り込み切れていない。ユーロ圏、日本などが緩和に動く中、利上げに向かう米国の対象的な状況が相場をリードしていただけに、その前提である利上げ姿勢が崩れた場合、大きな相場の変化をもたらす。中長期的なドル売りトレンドが生じることも意識しながら、目先の戻りのポイントを探る展開に。

ただ、堅調な雇用情勢に見られるように、他の主要国に比べて米国の経済状況は明らかに力強い。中国の不安定な状況などを受けての新興国からの資金流出懸念なども合わせ、米国にお金が集まりやすい状況は継続している。115円近辺に戻す動きが、あくまで調整か、ドル高トレンドの再開なのかの見極めが重要な局面に。113円-115円のレンジを中心に、115円超えの勢いを確かめたいところ。

その他通貨に対しても円高の調整が主体とみられる。特に当面の利下げ期待が後退した豪ドルに対する買い戻し意欲が強い。世界的な株安・商品安の動きが一服し、金利面の相場への影響力が回復しているくると、豪ドル円の買い戻し意欲はさらに強まる期待も。目先のターゲットである84円を意識する展開が予想される。

用語の解説

想定為替レート輸出入などで外国為替取引を行う企業が、業績の見通しを立てる際に前もって定めておく為替レートのこと。輸出企業の場合、一般的に想定為替レートよりも円安に振れれば企業業績にプラスの効果、円高に振れればマイナスの効果が生じる。直近の為替レート水準や、今後の相場見通しなどを基に、各企業が独自に設定するため、企業ごとにかなりの乖離がある。決算発表時などに各企業の想定レートが表示される他、3ヶ月に一度発表される日本銀行全国短期経済観測調査(日銀短観)において規模・業態ごとの平均値が発表される。
為替介入各国・地域において通貨政策を担当する部門(当局と呼ばれる)が、自国通貨の水準の調整や安定などを目的として、外国為替市場で実際に売買を行うこと。一般的に中央銀行が管轄する場合が多いが、日本の場合財務省が介入の決定権を有しており、日本銀行は財務省の決定に基づいて介入の実務を担当する(法解釈上は日銀単独でも可能であるという見方もあるが、事実上は財務省がすべての決定を行っている)。
ドルペッグ制や通貨バスケット制を採用する香港やシンガポールなどの国では日常的に行われる他、中国なども頻繁に行っているとされる。また新興国やNZなどそれほど経済規模の大きくない国でも大きな相場の変動があった場合には介入が実施されることが多い。ただ、日本を始め、米国、ユーロ、英国などの主要国では介入の実施は世界的な通貨安戦争に繋がるという点から批判を受けることも多く、近年ではかなり消極的。米国は2000年以降介入の実施実績がない。日本では2003年-04年の介入後は、80円を割りこむような円高となった2010年まで介入の実施がなく、その後2016年2月14日時点まで介入の実施は見られない。

今週の注目指標

FOMC議事録
2月18日04:00
☆☆☆
12月の利上げ後初めての会合となった1月26日・27日開催のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録。12月の利上げ時点では年内4回の利上げが見込まれていたが、その際でも初回は3月のFOMCと見られており、さらにその後中国ショックなどもあったことで、据え置きというFOMCの結果自体は、発表時点でも順当とみなされていた。その際の声明では世界の経済金融動向を注視するという一文が入ったものの、米経済については前向きな姿勢を維持しており、市場の見通しよりも強気との印象を与えるものであった。ただ、1月のFOMCの時点で、中国株安からの世界的な株安やNY原油の予想以上の下落などが見られており、声明での市場の印象ほど強気な会合であったのかどうかをこの議事録で見極めたいという見方が強い。また、中国をはじめとする世界の経済・金融動向や原油相場が下落する中でのインフレ見通しについてどのような議論が見られたのかなども注目ポイント。声明での印象に比べ、慎重な姿勢が目立つようだと、利上げ期待の後退からドル売りが進行する可能性が高い。今週もっとも注目されている材料であり、内容次第ではドル円は110円台の安値更新を試す可能性も。
豪雇用統計(1月)
2月18日09:30
今月2日に9ヶ月連続での金利据え置きを決定した豪中銀(RBA)。最大の輸出先であり中国の景気減速懸念が強く、主力輸出品である鉄鉱石価格の下落も目立つなど、厳しい状況は続いているが、RBAが据え置きを続ける最大の要因となっているのが、雇用の堅調さ。2015年の豪州の雇用者数は9年ぶりの拡大を示しており、利下げなどで景気浮揚を図る必要性が生じていない。今回も好調さを保つようだと、豪ドル買いに安心感が出る期待も。前々回の7.14万人増という驚異的な数字の反動で前回は0.1万人のマイナスとなったが、今回は+1.3万人と堅調な増加ペースに復すと期待されている。失業率も豪州としては低い5.8%を維持の見込み。予想前後の数字が出ると豪ドル円の買い戻しを支え82円から83円にかけての水準を試す可能性も。
米消費者物価指数(CPI・1月)
2月19日22:30
☆☆
イエレンFRB議長による議会証言において追加利上げが鈍化する可能性が示され、3月どころか年内の利上げ期待も後退している米国。堅調な地合いを示す労働市場に対して、原油安から下落圧力にある物価動向が今後の利上げに大きな影響をを与えると見られている。日本も含め多くの主要国で採用されているインフレターゲットに関して、ほとんどの国では対象となる物価指標は消費者物価指数(CPI)関連であることが多いが、米国に関してはPCE(個人消費支出)デフレータで、CPIではない。ただ、PCEはCPIに比べて発表が遅い上、傾向的にはほぼ同様の動きを示すため、市場での注目はCPIが上回っている。予想は変動の激しい食品・エネルギーを除くコア部分が前年比+2.1%と前回と同水準。予想前後であれば影響は限定的も、予想を下回り2%を割り込んでくると、利上げ期待の後退を誘いドル売り材料に。この場合110円に向けた動きへのきっかけとなる可能性も。

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