2016年02月22日号

(2016年02月15日~2016年02月19日)

先週の為替相場

EU首脳会議英国提案合意

ドル円は115円を付けきれず、その後はジリジリと頭を抑えられる展開となった。18日に発表された米国週間原油在庫統計において、米国の原油先物の代表的な銘柄であるWTIの受け渡し拠点であるクッシング地区の在庫が3週連続で史上最大を更新するなど、原油市場での需給バランスの乱れが意識されたことで、リスク警戒感が継続した。注目されたFOMC議事録は大きな変化なくクリアしたものの、反発までの勢いは生まれず、週の後半にかけて株安円高の流れに。

英国のEU離脱を巡る議論で注目を集めた18日・19日のEU首脳会議。英国側からEUに対して行われた移民に対する社会保障制限などの提案を合意できないと英国内で離脱に向けた動きが一気に強まる可能性があるとされていた。会議は前向きな雰囲気で行われ、ポンドもそれにともなって対ドル、対円で上昇。結局金曜日のNY市場夕方に提案合意が報じられ、ポンドは最後にもう一段高値をトライする形で週の取引を終えた。もっとも、週末に与党保守党の有力議員でキャメロン首相の後継者の一人とも言われているジョンソン・ロンドン市長(用語説明1)が英国のEU離脱を支持すると表明したことで、週明けは一気にポンド安に。

18日の豪雇用統計は失業率が予想外に0.2%も上昇して6.0%に。雇用者数も増加予想に反して7.9千人の減少とかなり弱いものとなった。雇用者は特に正規雇用の減少が目立っており、内訳も厳しいものに。原油先物が値を戻す中で豪ドル円も82円台を回復する動きを見せていたが、この雇用統計を受けて再び売りが強まり、金曜日には80ドル割れまで値を落とす展開に。

今週の見通し

戻りを期待する向きも見られるが、戻りでは売り意欲も見られ、どこまで戻せるかという展開に。サウジアラビア・ロシア・カタール・ベネズエラの4カ国が合意した1月生産水準での原油生産量維持提案に、イラクやイランなど他の産油国も同意する動きを見せており、原油安進行への警戒感が一服していることはかなりの好材料。また、景気減速懸念が強い中国に関して、3月5日からの全人代(全国人民代表大会)を前に景気刺激の動きを強めるのではとの期待が広がっていることも好材料となっている。もっとも、6月23日に実施が決定した英国のEU離脱をめぐる国民投票がリスク要因に。現時点での世論調査などでは残留派が大勢となっているが、保守党の次期リーダーの有力候補として名前の上がっているジョンソン・ロンドン市長が離脱指示を打ち出すなど、今後の情勢がかなり不透明。今後の世論調査結果などによってはポンド売りから、世界的なリスク警戒感拡大に繋がりかねないだけに、ドル円なども要注意。112円から113円台半ばを中心としたレンジの中から、どちらの方向を攻めてくるのという展開になりそう。原油がはっきりと持ち直せば114円台半ばまでの上昇もありうるが、原油先物の戻りは鈍く、やや状況は厳しい。原油が戻りきらず、英国の世論調査で離脱派が拡大するなど悪材料が優勢となると、ドル円は112円割れを意識へ。

その他注目材料は週末に上海で開かれるG20(用語説明2)。中国をはじめ新興国の景気減速懸念が広がり、原油安も続く中で、世界的な株価・為替の安定に向けた合意が示されるのかが注目ポイントとなっている。先日メキシコが通貨防衛のためのサプライズな利上げを行うなど、新興国からの資金流出の動きが深刻となっている。G20参加国としてはメキシコ以外でもブラジル、南アなども同様の資金流出懸念に見舞われており、これらの国からどのような要求が出てくるのか、また、原油安についてはサウジアラビアやロシア、カナダなどの主要産油国からの発言なども注目されるところ。新興国の台頭によって影響力が低下したG7(G8)に代わって、世界経済の枠組みを決める重要な役割を果たしつつあるG20だけに共同声明だけでなく、その議論の中身なども相場に影響を与えそう。結果が出てくるのは今週末で、相場への影響としては来週がメインとなるが、参加国の要人発言などによって、実際の会議の前からある程度影響が出てくるので注意したいところ。国際協調への期待の高まりは、このところの円高進行からの反転材料となりうる。113円台半ばに向けた動きも。

用語の解説

ジョンソン・ロンドン市長Alexandar Boris de Pfeffel Johnson
ボリス・ジョンソン・ロンドン市長、51歳。ジャーナリストを経て、下院議員を二期務めた後、現職(現在二期目)。与党保守党の政治家としてかなり人気の高い人物。現在2期目のキャメロン英首相は、3期目の出馬に否定的で、ボリス・ジョンソン市長をテリーザ・メイ内務相、ジョージ・オズボーン財務相とともに自身の有力後継候補として示している。キャメロン首相の懐刀と呼ばれるオズボーン財務相などと比べて、キャメロン首相とは距離をおいている。
G20Group of Twenty
主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議。中国をはじめとする新興国経済の台頭を受け、従来のG7(もしくはロシアを加えたG8)が世界経済に占める地位が低下したこともあり、G8に新興国を加える形で1999年に開始された国際会議。同枠組みでの首脳会合(G20サミット)も2008年から始まっている。参加国・地域はG8メンバーである日本・米国・英国・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ・EU・ロシアに新興11カ国として中国。インド・ブラジル・メキシコ・南ア・オーストラリア・韓国・インドネシア・サウジアラビア・トルコ・アルゼンチンが加わった物(もともとEU(ECB)が入る分、G8とはいえ9カ国・地域が参加していたため、11カ国参加で20となる。)世界のGDPの約90%を占めており、共同で行動すると世界経済に与える影響は大きい。

今週の注目指標

独Ifo景況感指数(2月)
2月23日18:00
移民問題や英国のEU離脱問題などで揺れる欧州。さらにドイツなどの金融機関に対する懸念が欧州株の重石となる状況が続いている。こうしたなか、独経済自体は比較的しっかりの展開が続いているが、逆に言えばここが崩れると懸念が一気に広がる可能性もある。ドイツの経済指標でもっとも注目されるものの一つであるIfo景況感指数は前回(1月分)予想以上の低下を示し107.3まで落ち込んだ。中国など新興国の景気鈍化懸念がドイツの主力産業である輸出関連産業の景況感を悪化させたものと見られた。今回は107.0と小幅ながら3ヶ月連続での低下が予想されている。予想通りもしくはそれ以上の低下が出てくると、ユーロ売りに繋がる可能性も。ユーロ円は125円をしっかり割り込むと、もう一段下への動きが強まりそう。
日本全国消費者物価指数(CPI・1月)
2月26日08:30
☆☆
株安円高の進行もあり、マイナス金利のマイナス幅拡大など更なる金融緩和への期待感が生じている日本。1月のCPIは生鮮除くコア前年比の予想が±0.0%と前回12月分の+0.1%から低下する見込みとなるなど、原油安の進行などによってデフレ圧力がかかる状況が続いている。予想をさらに下回って物価の下落が進むようだと、追加緩和期待が広がり、円安に繋がる可能性も。数字次第では114円に向けた動きも期待されるところ。
米10-12月期GDP(改定値)
2月26日22:30
☆☆
1月末に発表された速報値ベースで前期比年率+0.7%と7-9月期の+2.0%から大きく減速した米国のGDP。暖冬による個人消費の減速やエネルギー関連産業の投資削減などが背景とされた。今週発表される改定値では+0.5%と速報値からさらに下方修正の見込み。速報値発表後に報じられた12月の受注や在庫関連の指標がやや弱めとなっていることが要因に。予想以上に落ち込みが目立つようだと年内の利上げ期待を押し下げる結果になると見られ、ドル売りが予想される。落ち込み幅にもよるが112円を試す展開も考えられるところ。

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