2016年02月29日号

(2016年02月22日~2016年02月26日)

先週の為替相場

英国のEU離脱リスクで円高も値を戻す

週初から週の半ばまでは英国のEU離脱問題がリスク警戒感を誘ったが、週末にかけてはドル高円安ムードが広がる展開が見られた。

18日・19日のEU首脳会議において、難民への社会保障制限などに関する英国提案が受け入れられたことを受け、英国のEU離脱に関する国民投票の実施が決定された。首脳会議での合意直後は離脱可能性が低くなったという判断が広がったが、国民的な人気の高いロンドン市長が離脱賛成に回ったことで、週明けになってリスク警戒感が一気に拡大。対米ドルで1.44台をつけていたポンドが1.38台まで大きく値を落とすなど、ポンドが急速に売られる展開となった。ポンド円が162円近辺から155円割れまで値を落とす中、ユーロ円なども円高が強まる流れとなり、ドル円も111円近辺まで一時下値を試す展開が見られた。

しかし、24日に発表された米国の週間原油在庫統計でガソリン在庫などの減少が伝えられ、原油が買い戻されると、状況が一変。需給バランスの改善期待が原油の先安観を後退させ、ドル買いに繋がる格好でドル円に買い戻しが入った。週末のG20に対する期待感などもドル円の買い戻しを誘った。また、26日に発表された米国の2015年10-12月期GDP改定値(速報値は先月末発表済)が予想外に上方修正されたことも、ドル買いを加速させる結果となり、ドル円は114円近辺まで値を戻して週の取引を終えている。

G20では過剰な為替変動への警戒感などが共有されたが、大きなサプライズはなく、相場への影響はやや限定的。

今週の見通し

週末の米雇用統計を睨む展開に。ドル円に関しては先週末の一気の買い戻しに対する調整や、114円-115円にかけての上値抵抗水準を意識した動きもあり、一旦は頭が重くなる可能性が高いが、雇用統計への期待感は高く、週末にかけてはドル高円安ムードが予想されるところ。米雇用統計が強めに出たとしても、3月のFOMCで米国が利上げに踏み切る可能性はそれほど高くない。ただ、年内の利上げを意識する動きは強まりそうだ。一時は追加緩和は来年以降ではと言われていただけに、中長期的なドル買いの材料として意識されている。また結果が予想を上回った場合は一気のドルの買い戻しもありうる。1日のISM製造業景気指数や2日のADP雇用者数、3日のISM非製造業景気指数、新規失業保険申請件数など、雇用統計との関連性の強い指標結果も合わせて注意しておきたいところ。

週半ばには米国の多くの州で大統領候補選びの予備選挙や党集会が集中するスーパー・チューズデー(用語説明1)も控えている。事前見込み通りの結果が出てくると、民主党はクリントン前国務長官、共和党はトランプ氏が候補者決定に向けて大きく前進する。ともにややドル売り材料であるが、今週時点での影響は限定的とみられる。

週末には中国で全人代(用語説明2)が開催される。李首相による経済報告は今週の取引を終えた土曜日にあり、週前半時点での反応は難しい。もっとも基本的には景気減速懸念に対抗する経済政策が示されると見られるだけに、ドル円にとっては買い材料か。全人代を目前に控えて中国人民銀行が人民元水準を安定的に管理することが期待されることも、今週のドル円、クロス円を支える材料として意識される。

総じてドル買い円売りに対する期待感が強いだけに、先週つけた安値はやや遠くなった印象。115円手前の売りが依然として観測されており、上値を一気に試す展開も難しそうだが、小じっかりとした中で上値トライのタイミングを図る展開が予想される。

用語の解説

スーパー・チューズデー米国の大統領選挙の民主/共和両党の候補者指名争いにおいて、前半戦のヤマ場となる、多くの州で予備選挙・党員集会が開かれる3月1日のことを、スーパー・チューズデーと呼ぶ。今回のスーパー・チューズデーでは民主・共和両党ともに11の州で予備選挙・党員集会が実施される。事前の世論調査では、民主党はクリントン候補が9つの州でサンダース候補をリードしている。直近2月27日のサウスカロライナ州での予備選挙でクリントン候補が圧勝したこともあり、事前見込み通り9州前後でクリントン候補が勝利した場合、候補者としてほぼ確定的との見方が強い。クリントン候補は日本の円安誘導に警戒感を示しているとされ、若干円高材料であるが、反応は限定的か。共和党は、トランプ候補が9州でリードしている。対抗馬であるクルーズ候補は地元テキサス州での勝利が期待されているが、その他地域での勢いに欠ける。このままトランプ候補が勝利した場合、共和党候補としてそのまま突き進む可能性が強まる。暴言が多く、中国・日本などへの過激な発言も多い同氏だけに、この場合はドル売り材料に。トランプ候補ではクリントン候補に勝てないという見方が一般的で、今のところ相場への影響は限定的も、中長期的なドル売り材料として意識したいところ。
全人代中国での国会に当たる全国人民代表大会のこと。5日の開幕にあたって李首相が今年の経済成長目標などを含む政府活動報告を読み上げる。先週行われたG20において中国景気の鈍化懸念などに対する各国からの警戒感をうまく躱した格好の中国。ラガルドIMF専務理事が中国には人民元切り下げの意思はないとG20で発言するなど、年明けから市場で広がった中国への不信感がうまく緩和される展開となっている。そうした中で中国政府は今後の景気減速懸念をどこまで後退させることが出来るのかが注目されている。やり過ぎ感があると財政赤字に対する警戒感が広がり、弱いと景気減速懸念が加速と、かなり難しいバランスが要求されている。市場が評価するような経済政策の発表や現実的な成長目標が示されるとドル高円安に繋がる。内容次第であるが115円を超えて上昇するきっかけになる可能性は十分にある。

今週の注目指標

豪中銀(RBA)金融政策理事会
3月1日12:30
☆☆☆
予想通り金利の据え置きを決めた前回2月の会合の議事要旨が16日に発表され、非常に低い金利と豪ドル安が豪経済を支えているという豪中銀の評価が確認された。また、低インフレの継続により必要な場合には一段の緩和(利下げ)余地と今後の追加緩和の可能性も指摘された。こうした中銀の姿勢は2月5日に発表された豪中銀四半期金融報告とも合致している。そのため市場ではどこかのタイミングで豪中銀が利下げに踏み切るという予想が一般的。ただ、タイミング的に今回ではないという見方で一致しており、今回の理事会では据え置きが決定されるとみられる。前回会合からの大きな状況の変化も見られず、声明などへのサプライズ期待もそれほど高くない。据え置き決定及び今後の追加緩和示唆という前回同様の結果となれば、豪ドルの反応は限定的か。より強い追加緩和示唆があると、一旦は豪ドル売りも。79円50銭がその場合のターゲット。
米ISM製造業景気指数(2月)
3月2日00:30
☆☆
米供給管理協会(ISM)による景況感に関するアンケートを元に作成される同指標。調査会社マークイットの調査による同様の指標である2月の米製造業PMI(2月22日発表)は、1月から1.4ポイント落とし51.0と2009年9月以来の低水準を記録。また、その3日後に発表された非製造業PMIは政府機関の一部閉鎖の影響で数字を落とした2013年10月以来の50.0割れとなる49.8と、かなりの低水準を記録した。景気に対する速報性が高いこれらの指標が軒並み弱めに出てくると、今後の米景気の回復基調に暗雲が広がることもあり、警戒感が強まっている。もっとも予想は48.5と1月の48.2から改善の見込み。その2日後に出るISM非製造業景気指数も53.8と1月の53.5から改善の見込みとなっており、予想通りの数字が出てくると米ドル買いの安心感に繋がりそう。114円から115円にかけての上値抵抗水準をトライするきっかけとして期待される。
米雇用統計(2月)
3月4日22:30
☆☆☆
前回は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回る前月比15.1万人増の伸びにとどまったものの、失業率が予想外に低下、平均時給も予想以上に伸びて、全体としてみるとまずまずという評価になった。今回はNFPの伸びが19.5万人増まで回復する見込み。心理的な節目である20万人には届かない見込みも、まずまずの数字であり、予想近辺の数字が出てくるとドルはしっかりの期待。予想を少し上回り心理的な節目である20万人をしっかり超えてくると、年内の利上げ期待に繋がり、ドル買いが強まる期待も。失業率はすでに完全雇用水準に近いと言われている状況だけに更なる低下は難しいが、予想通り前回の水準を維持してくると、こちらもドル買い材料。平均時給に関しては前月比+0.2%と前回の+0.5%から伸びが鈍るとの見方。ただ、これは前回が強すぎただけで、予想通りの数字が出てくると、こちらも賃金上昇傾向継続という見方でドル買いに寄与しそう。全体として予想通りでもドルはしっかり、予想以上の好数字でドル円の115円超えなどドル買い傾向が加速という流れが期待される。NFPの伸びが前回並みになるなど予想を大きく下回った場合は、先週つけた111円近辺を試すような大きな円高にも繋がりかねないだけに、上下ともに要注意。

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