2016年03月07日号

(2016年02月29日~2016年03月04日)

先週の為替相場

リスク警戒感の後退によるドル買い円売りが目立つ週となったが、ドル円の115円手前では売り注文が並んでおり、上値は抑えられた。米週間原油在庫統計(用語解説1)においてガソリン在庫の減少などから原油の需給バランスに関する警戒感が後退。NY原油が大きく値を戻す中で、米ドルや資源国通貨などに買いが入る展開に。4日発表の米雇用統計や、5日から開幕の中国全人代(全国人民代表大会)などへの期待感が週初から目立ったことも、ドル円などを支える材料となった。全人代への期待感は株式市場にも影響を与え、上海総合株価指数が週の半ばから大きな上昇、日本株も同調する流れとなった。欧州、米国の株式も堅調地合いを見せるなど、世界的に株高が広がっており、リスク選好での円売りに繋がった。

1日に発表された米ISM製造業景気指数は、先月発表されたISMと同系統の指標であるマークイット製造業PMIが弱かった分、警戒感が広がっていたが、結果は予想以上の強い数字となり、米景気の回復期待を支える形でドル買い円売りが入った。

最大の注目材料であった2月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想以上の好結果となり、瞬間的にドル買いが入る展開に。しかし、利上げとの関係で注目度が高い平均時給が予想に反して約1年ぶりの前月比マイナスとなったこともあり、発表直後の買いが落ち着いた後は一転してドル売りと、動きが続かなかった。

その他、2月29日に発表されたユーロ圏消費者物価指数が予想外に前年比マイナスとなり、今月10日のECB理事会での追加緩和期待が強まったとして、ユーロ売りが入る場面なども見られた。

今週の見通し

今週最大の注目材料は10日のECB(欧州中央銀行)理事会。ドラギ総裁は前回の理事会後の会見において、ユーロ圏経済の下振れリスクが強まったと発言。今回の理事会において金融政策スタンスを見直すとともにおそらく再検討する必要があるとしており、おそらく追加緩和が実施されると考えられている。先月末に発表された2月のユーロ圏消費者物価指数概算速報値が予想外の前年比マイナスに落ち込んだことも、緩和期待を強める結果に。ECBの政策金利は3種類あるが、そのうち現在-0.3%とマイナス金利になっている預金ファシリティ金利(用語解説2)を0.1%引き下げて-0.4%にするという見方が大勢。一気に-0.5%まで持っていく可能性や、量的緩和を絡めてくるのではという、より大胆な緩和政策への期待感も出ており、発表まではユーロ売りが出やすい展開。今月に入って買いが目立つユーロ円であるが、理事会までは調整の動きが主体か。125円を中心にしたレンジ取引が意識される。

理事会で期待ほどの緩和策が出てこず、その後の会見も前回までとそれほどの変化がなければ再びの上昇も。この場合は128円がターゲット。

ドル円単体でもやや動きにくさがある。先週末の米雇用統計は非農業部門雇用者数が強かったものの、利上げに向けて重視される賃金の上昇に関しては平均時給が予想外に低下と残念な結果を示しており、好悪入り交じって反応が難しい。期待された中国の全人代にしても、2016年から20年までの年平均成長率を6.5%以上にするという表明は好感を持たれたものの、具体的な内容には乏しく、市場を動かすだけの材料とはなっていない。もっとも、一気に売り込むだけの材料にも欠けており、直近レンジの中での動きが予想されるところ。112円~115円にかけてのレンジ内での取引が中心となりそう。

用語の解説

週間原油在庫統計米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が毎週水曜日に前週金曜日時点での米国内の原油などの在庫を集計し、発表するもの。種別などによりいろいろな在庫が発表される。注目度が高いのは、原油在庫、ガソリン在庫、留出油在庫(ディーゼルオイルなどの在庫)及びNY原油先物(WTI)の受け渡しに利用されるオクラホマ州クッシング地区の在庫。一般的に在庫が拡大すればNY原油の売り材料、縮小すれば買い材料となる。
預金ファシリティ金利ユーロ圏の銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の翌日物の金利のこと。現行で-0.3%とマイナス金利になっている。日本における日銀当座預金の超過準備に対する付利にあたる金利。ECBにはこの預金ファシリティ金利に加え、主要リファイナンス金利、限界貸付ファシリティ金利があり、マイナスとなっているのは預金ファシリティ金利のみ。

今週の注目指標

ユーロ圏財務相会合
3月7日
ユーログループと呼ばれるユーロ圏の財務相による非公式会合。翌日8日に行われるEU財務相会合に先立って実施される。先月の会合で、これまで非公開であった討議事項などについての公表が決定されたこともありやや注目度が高い。また、ダイセルブルーム・ユーログループ議長が先月のG20後の会見で「通貨安に繋がる政策決定に際しては事前に関係国に通知を」と発言したと報じられたことも意識されている。その後の報道で、報じられた内容に不備があると、とりあえず否定された形となった発言ではあるが、議長が各国の緩和合戦に警戒感を抱いているという見方が一部であるだけに、今回の会合でどのような発言が出てくるのかが注目されている。ECBの緩和姿勢を牽制するような発言が出てくると、ユーロ買いが入る可能性も。10日のECB理事会を前に値幅は限定的と思われるが、理事会でもユーロ買いの材料が出た場合、動きを加速させる材料とはなりそう。
カナダ中銀理事会
3月10日00:00
☆☆
カナダ中銀の金融政策理事会が9日に行われる。原油安の影響もあり、前回1月の会合では事前見通し時点で利下げと据え置きの見通しが拮抗するなど、利下げへの期待感が広がっていた。しかし、結果は据え置きに。声明では比較的前向きな内容が目立ったこともあり、こうした利下げ期待はその後後退。今回の会合に関しては、据え置きがほぼ確実視されるような状況となっている。大きく値を落としていた原油先物市場に買い戻しが入り、懸念が後退したことも大きく、今回の理事会で慌てて利下げに踏み切る理由はあまり無いように見える。事前見通し通り金利を据え置き、波乱なくイベントを通過すると、現行の資源国通貨買いの流れが継続し、カナダ円は85円台をしっかり維持して上を窺う展開となりそう。
NZ中銀理事会
3月10日05:00
☆☆
NZ中銀の金融政策理事会が10日開かれる。大勢の見方は政策金利の据え置きとなっているが、一部で利下げの期待が出ている。先月発表されたNZ中銀による四半期調査では、今後1年間のインフレ率見通しが3ヶ月前の1.51%から1.09%まで大幅に低下。同水準は調査開始以来の低水準であり、市場では中銀が緩和に踏み切るハードルが下がってきているという見方が広がっている。イングリッシュNZ財務相も先月低インフレに対応する余地があると発言する場面が見られた。もっとも、昨年12月の利下げに際して、NZ中銀は追加利下げの打ち止めを示唆している。都市部の住宅価格上昇など、低金利の弊害への警戒感も見られることから、今回の理事会では利下げを見送るという見方が一般的なようだ。こうした見方は、今月に入っての上昇を支える影響を与えており、予想通り据え置きとなった場合は、現行のNZドル買い円売りの流れが継続するとみられる。ただ、もし利下げに踏み切った場合はかなりのNZドル売りに。今月に入っての4円近い上昇分をすべて吐き出すような大きな動きになる可能性も。
ECB理事会
3月10日21:45
☆☆☆
政策金利の一つである預金ファシリティ金利(現行-0.3%)の引き下げが予想されている。前回会合で景気の下振れ懸念による政策の見直しに言及しており、その後のインフレ指標の低迷などからも、ほぼ確実視されている。0.1%の小刻みな引き下げを行い-0.4%にするという見方が大勢となっているが、一部で期待されている0.2%の引き下げで-0.5%まで一気に持って行った場合、ユーロ売りの動きが入りそう。また、引き下げ幅自体は0.1%にとどめた場合でも、理事会後の総裁会見でさらなる追加緩和を示唆してくるような、積極的な姿勢が見られた場合は、こちらもユーロ売り。対米ドルでの目先のポイントである1.08を割り込み、中長期的に1.05を目指す可能性も。ここまで下がると、対円でも直近安値122円近辺を割り込む可能性もある。

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