2016年03月28日号

(2016年03月21日~2016年03月25日)

先週の為替相場

雇用統計への期待強まる 

ドル買いがやや目立つ展開となった。21日にサンフランシスコ連銀総裁やアトランタ連銀総裁が4月のFOMC(用語説明1)での利上げの可能性に言及したことに端を発したドル買い。その後、シカゴ連銀総裁、フィラデルフィア連銀総裁などが同様の言及を行う中で、流れが持続した。3月のFOMCでの声明内容や金利見通しがやや慎重で、早期の追加利上げ期待が後退しているタイミングだっただけに、効果が大きかった面も。

ベルギーで起こった大規模なテロの影響は短期的には限定的なものに。同日の欧州株価指数が直後の売りの反応からその日のうちに回復するなど、堅調さを見せたことが要因に。もっとも、今回の事態を受けて英国でのEU離脱論が強まるのではなどの観測もあり、中長期的な影響を指摘する動きも。

上昇が目立った原油価格には一旦調整の動きが入った。4月の原油増産凍結に関する石油生産国会議(ドバイ)に対する期待感が強く、大きく上昇する流れが広がっていたが、短期間に41ドル台まで戻したNY原油先物の動きに対して、警戒感が広がった。イースター休暇を前に、一旦ポジションを小さくしておきたいという投機筋の意向も調整を誘った。カナダドルなど原油価格動向に敏感な通貨が、原油の動きに同調して売り込まれる場面も見られたが、週末を前に安値からすこし切り返したこともあり、影響は限定的に。

週の後半にかけては動きが落ち着いた。25日金曜日がグッドフライデー、28日月曜日がイースターマンデーで世界中の多くの国で市場が休場。開いていた25日のNY市場でも、株式市場や商品市場などはおやすみということもあり、ほとんど参加者がいなかった。このため動きが膠着していた。本格的な再開はイースター明け29日火曜日からと期待されている。

今週の見通し

雇用統計への期待感が相当強まっている。ここに来て4月の追加利上げ期待が急浮上。鍵を握る1日金曜日の米雇用統計への注目度も相当強まっている。基本的に堅調とみられる米国の雇用情勢だけに、堅調な数字が出て4月の利上げ期待が後押しされるとの見方も強く、週の後半にむけてドル買いの流れが強まる可能性も。30日に発表される雇用統計の前哨戦であるADP雇用者数(用語説明2)などとも合わせて確認したいところ。

1日は米雇用統計以外にも、朝に日銀短観、雇用統計の1時間半後に米ISM製造業景気指数と、重要指標の発表が控えている。短観は弱めの予想、ISMは強めの予想が出ており、予想通りの結果が出ると、米雇用統計と合わせドル買い円売りが加速する可能性も。4月の利上げがもし行われた場合、ドルはもう一段上をトライしてもおかしくないだけに、今週末の指標がきっかけとなって、ドル買い円売りの中長期的なトレンドが生じる可能性も。4月末のFOMCにむけて中長期的に120円を試す可能性も十分にある。

ここに来て4月利上げの可能性についての発言が並ぶ地区連銀総裁たち。イエレンFRB議長の意向がそれなりに入っていると見られ、早期の利上げの可能性はかなり強まったとみられる。もっとも金利先物市場での織り込み具合などから計算される4月のFOMCでの利上げ確率は12%程度。相当高くなってきたが、まだまだ利上げ期待が拡大する余地がある。30日に予定されているイエレン議長講演や今週の経済指標結果などによって、利上げ期待がもう一段高まると、ドルはしっかり。週の後半にむけて113円台を維持し、上値をトライする展開が期待されるところ。

用語の解説

 4月のFOMC米国の金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)は年8回開催される。そのうちの半分、4回の会合で結果及び声明文の発表に加え、参加メンバー全員(投票券の有無に関わらず)による景気やインフレ、さらには金利の見通しについての発表があり、イエレン議長が会合後に会見を行う。利上げなど大きな政策の変更を実施する場合は、そうした回の方が市場への説明がしっかりできるということもあり、そうした予定のない4回よりも大きな決定が行われる可能性が高いと言われている。実際にゼロ金利政策からの解除となる利上げを決定した12月のFOMCは、会見や見通し発表の回となっていた。しかし、次回4月25日・26日のFOMCは残りの半分にあたる会合。市場は次に利上げがあるとすれば早くても6月と見られていた。しかし、ここに来て地区連銀総裁などから利上げの可能性についての言及があり、サプライズとなっている。なお、FOMC後の議長会見については必要とあればいつでも実施すると規定されており、もし4月のFOMCで利上げが決定された場合、会見が急遽開かれる可能性が高い。
ADP雇用者数給与計算代行の大手ADPによるデータを元にした雇用指数。米労働省による雇用統計のうち非農業部門雇用者数の民間部門(ADPのデータには民間部門のものしか無いため)のデータと相関が高いと言われている。実際の雇用統計発表の2営業日前に発表される(祝日などの影響で変更されるケースがある)。ISM景況感指数、週間新規失業保険申請件数とならんで雇用統計との相関が高いと言われている指標の一つ。

今週の注目指標

イエレン議長講演
3月30日0:30
☆☆
イエレンFRB議長が29日エコノミッククラブ(NY市)で講演を予定している。ここにきてウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁を始め、各地区連銀総裁から4月の利上げの可能性についての言及が一気に増えてきた。少なくとも議題には上るという発言もあるなど、ここに来て追加利上げへの機運が一気に強まってきた状況。そうした中、イエレンFRB議長がどのような発言を見せるのか、注目度がかなり高い講演となっている。議長が可能性に言及してくると、早期利上げ期待が一気に強まり、現状では9月が本線と言われる追加利上げについて、6月に前倒しし、年内に二回目という見方にシフトしそう。これは強いドル買い材料となり、ドル円は115円を意識する展開が予想される。
日銀短観(3月調査)
4月1日8:50
☆☆
もっとも注目度が高い大企業製造業業況判断は2四半期ぶりに悪化しそう。また同非製造業は6四半期ぶりの悪化が見込まれており、予想通りになると、日本経済の回復の鈍化が意識される結果に。予想通りもしくはそれ以下の数字が出てくると、日銀の追加緩和への期待感にも繋がり、円安を誘う可能性。ドル円の買い材料となりそう。同日夜に、より大きな材料である米雇用統計を控えているだけに、それだけで大きな円安進行は難しいが、雇用統計が好結果でドル円が115円を超えていくような動きになる場合、ドル高にプラスして円安を誘う材料として、市場にドル買い円売りの安心感を与えるかたちになりそう。なお、同時に発表される想定レートにも注目したいところ。想定レートが現状から大きくずれた場合、リスク要因として捉えられる可能性も。
米雇用統計
4月1日21:30
☆☆☆
地区連銀総裁が相次いで4月のFOMCでの利上げの可能性に言及する中、利上げの鍵を握る米雇用統計への注目度がかなり高まっている。前回の非農業部門雇用者数(NFP)は予想の+19.0万人に対して+24.2万人とかなりの好結果。失業率も8年ぶりの低水準である4.9%を維持し、こうした状況が早期利上げ期待を支える結果に。今回はNFPの予想が+20.8万人。強い前回からの比較ということで流石に少し鈍る見込みだが、節目である20万人超えの強めの予想。失業率も4.9%を維持の見込みで、予想通りもしくはそれ以上の結果が出てくると4月の利上げの可能性は十分に有りそう。また、4月は早すぎとしても、会合後の会見予定などがある6月が利上げ時期の本線に浮上(現時点では9月が最有力予想)してくると思われる。一方前回は平均時給が予想外に-0.1%と低下。今回この辺りも改善が見られると、利上げ期待に更に拍車がかかると思われ、結果次第では一気の115円超えへの期待も。
米ISM製造業景気指数
4月1日23:00
☆☆☆
全米購買部協会による景況感調査に基づく同指標。直近5ヶ月続いて好悪判断の境目となる50を割り込む数字となっているが、ここ二回は数字的には改善を示しており、景気回復への動きが見られる状況。今回は昨年9月以来となる50超えとなる50.7が見込まれており、事前予想通りの数字が出てくると、米国の追加利上げ期待を後押ししてくる可能性。発表1時間半前の雇用統計と共に強めになると動きが加速される可能性も。4月の利上げ期待が強まるようだと、115円を超えてくる可能性も十分にある。

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