2016年04月04日号
先週の為替相場
ドル安懸念広がる
注目された29日のイエレン議長講演(NYエコノミッククラブ)では、利上げについて「慎重な姿勢が正当化される」と早期の利上げに否定的な発言がみられた。このところ地区連銀総裁から早ければ4月にも利上げと、早期利上げを示唆する発言が相次いでいただけに、この議長発言がサプライズとなり、市場の利上げ期待が後退。ドル売りが広がる展開が見られた。ドル円は同発言を受けて113円台から112円台に。
もう一つの注目材料である1日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)及び平均時給が予想を上回った。失業率及びイエレン議長が重視していると言われるU-6失業率(用語説明1)が0.1%悪化したものの、全般的には強めという印象を与える結果に。更に、同指標の1時間半後に発表されたISM製造業景気指数(用語説明2)も予想を上回るなど、1日の米指標は総じて強めの数字となり一旦はドル買いを誘った。しかし、指標後のドル買いが一服するとすぐに反転してドル安が進行。ドル円において下値支持水準と見られた112円を割り込み、111円台まで値を落として週の取引を終えるなど、ドルの重さが目立つ展開となった。イエレン議長の慎重姿勢を受けた利上げ期待の後退がかなり大きく響く展開になっている。
ユーロドルが1.11台から1.14台まで上昇するなど、ドルは全面高。ユーロ円がユーロ高と円高に挟まれてレンジ内での取引になるなど、対円ではなく、対ドルでの動きが目立つ展開となっている。
今週の見通し
ドル安への警戒感が相当強い展開になっている。本来大きな材料である米雇用統計の好結果を受けてもドル買いが流れが継続できず、ドル円は110円の大台が意識される展開に。円高ではなく、ドル全面安の流れが広がっているだけに、110円の大台手前の買いでは動きを止め切れない可能性が高い。
4月のFOMCでの利上げ期待はかなり後退。記者会見やメンバーによる金利見通しの発表が無い回にあたる今月のFOMCは、元々利上げ期待がそれほどなかったが、ここに来ての地区連銀総裁たちの発言でにわかにクローズアップされた面がある。今回のイエレン議長の発言で4月の利上げどころか、発言前まで本命と見越されていた6月の利上げ期待までかなり後退しており、金利先物動向から計算されたCMEのFEDWATCHでの利上げ確率は26%まで落ちてきている。
金利動向の見通しの大きな変化は中期的な相場の流れを呼びやすい。また、ドル安が進行することによる日本株への負の影響は、リスク回避の円高を誘い、ドル円はドル安と円高の両面から値を落としそう。110円をしっかり割り込むと、実需筋などからもある程度投げが出ると見られ、108円程度までの下げが意識されるところに。
ユーロ円などはクロス円は基本的にやりにくい。対ドル中心の相場で目立った方向感が生じにくい展開に。
豪ドルは豪中銀金融政策理事会待ち。金利は基本的に据え置きとみられ、注目は声明内容に。このところの中銀総裁発言などから豪ドル高牽制の動きがやや弱まっており、声明でも同様な姿勢が見られると、豪ドル買いに。豪州に関しては10月に予定されていた総選挙が7月2日に前倒しになるとの見方も広がっている。この場合、選挙戦の中での6月の理事会、選挙直後の7月の理事会での利下げが難しくなり、当面の金利据え置き期待が広がることも、豪ドルのサポートに。ドル円が崩れなければ86円台の定着も。
用語の解説
U-6失業率 | 通常の失業率(U-3失業率)に加えて、労働環境などにより職につく事自体を諦めた人や、正社員労働を望みながらパートタイム労働に従事している人などを加えた広義の失業率のこと。イエレン議長が通常の失業率に加えて注視していることで知られている。 |
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ISM製造業景気指数 | 全米購買部協会(ISM)による景況感のアンケート調査に基づく景気指数。毎月の第1営業日に製造業、第3営業日に非製造業の指数が発表される。50が好悪判断の境目となっており、50より大きいと景気拡大、50を下回ると景気の鈍化が懸念される。日銀短観や各国で発表される購買担当者景気指数(PMI)と同系統の指標。速報性が高いことに加え、今後の景気動向を探ることが出来るという点から重要視される。なお、同指数における雇用部門の数字は、雇用統計との相関が高く、前哨戦として意識されることが多いが、1日の雇用統計の発表がある場合のみISM製造業景気指数のほうが後に出ることになる。 |
今週の注目指標
豪中銀(RBA)金融政策理事会 4月5日13:30 ☆☆ | 豪中銀金融政策理事会では現行政策の維持が予想されている。年初時点では比較的早い段階での利下げを見込む動きも見られたが、ここに来て商品市場の価格が持ち直していることや鉱業以外のセクターの成長が見られることなどから、利下げ期待が後退している。市場の注目は声明での条件付き緩和バイアスや豪ドル高牽制に対する変化か。特に豪ドル高への牽制に関しては、このところの要人発言での姿勢がやや弱まっているという見方もあるだけに注目が集まる。これまでの強い豪ドル高牽制の姿勢が弱まるようだと豪ドル高に。 |
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米貿易収支(2月) 4月5日21:30 ☆ | 90年台までは為替相場を動かす大きな材料であった米貿易収支であるが、このところは材料としての注目度は後退している。ただ、現在行われている大統領候補者指名争いにおいて、共和党候補であるトランプ氏が日本や中国は為替相場を動かすことで輸出を拡大していると強く非難している。同党の最有力候補となっている同氏の動向が今後も注目される中で、同指標も注目度が増してくる可能性。赤字が予想以上に大きいようだとドル安の動きも。 |
米ISM非製造業景気指数(3月) 4月5日23:00 ☆☆ | 1日に発表されたISM製造業景気指数は昨年9月以来となる50超えを果たした上に、事前予想の50.7を大きく上回る51.8を記録。米国の景況感の改善を印象づけた。非製造業はすでに改善が見られており前回2月の数字も53.4を記録。今回はさらに54.0と一段の改善見通しとなっている。予想通りもしくはそれ以上の改善が見られると、米景気の底堅さが意識され、ドル安に歯止めも。 |
歴代FRB議長討論会 4月7日 ☆☆☆ | イエレン現FRB議長に加え、ボルカー氏、グリーンスパン氏、バーナンキ氏と歴代の4議長が一度に介して討論会が行われる。主催者によると歴代4議長が一度に討論会に参加するのは初めてのこと。タカ派で知られる豪腕ボルカー氏などの発言を受けて、イエレン議長が従来の慎重な姿勢に変化を見せるのかなどが注目材料。 |
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