2016年04月11日号

(2016年04月04日~2016年04月08日)

先週の為替相場

ドル安円高加速

ドル円が7日NY市場で一時107円台まで値を落とす展開となった。その後109円台まで回復する場面が見られたが、金曜日NY午後に再び108円ちょうど近くまで売り込まれるなど、地合いは相当に弱い。先月29日のイエレン議長による利上げに慎重な発言を受けて、市場では米国の早期利上げ期待が一気に後退。議長発言までは6月のFOMCでの追加利上げが本線で、早ければ4月のFOMCにでも実施、さらに年内にもう一度利上げという見方が広がっていた。しかし、金利市場での織り込み度合いなどから計算されたCME Fed Watch(用語説明1)の直近の動きをみると、12月のFOMC時点での利上げ確率が51%まで低下しており、年内に利上げがあるかどうかまで見通しが後退している。こうした利上げ期待の急速な後退がドル安の大きな材料となっている。

また、安倍首相が5日に米紙とのインタビューで「通貨安競争は絶対に避けるべき」と発言したことが、ドル安に加えて円高の傾向を加速させた。円高がこれ以上進行しても、介入などの実施は難しいという認識が市場で広がり、ドル安円高が加速した格好。安倍首相発言まではどちらかというとドル安主導で下げていたドル円は、その後円高主導での動きに。これを受けて、ユーロ円、ポンド円、豪ドル円などクロス円も総崩れとなった格好。

また、5月に日本がホスト国になってのサミット(伊勢志摩サミット)を控えていることから、介入などの強引な手段はこの時期取りにくいという見通しが広がっており、投機筋の円買いに安心感を与えている。

その他通貨ではポンドが軟調。直接のきっかけは英指標の弱さであるが、6月のEU離脱をめぐる国民投票において、離脱派と残留派がほぼ互角となっており、警戒感が広がっていることも材料となっている。また、パナマ文書にキャメロン英首相の亡くなった父親の投資ファンド絡みでの疑惑が報じられたことで、政治的な混乱を嫌う投資資金の流出を誘った面も。

今週の見通し

ドル安円高の継続が見込まれている。首相の発言、伊勢志摩サミット直前というタイミングの両面から介入の実施は難しいという見方が強く、ドル円は相当に重そう。今月末の日銀会合での追加緩和を期待する動きもあるが、こちらも強引に通貨安に持っていくような政策は取りにくい一方、中途半端な緩和策を出すと逆効果という面があり、相当舵取りが難しい。当面はリスク警戒からのドル売り円買いが広がりそう。

また、新年度入りしてすぐのタイミングで110円割れとなり、更に下を試したことで、実需筋などの売りが進んでいない。そのため、少しでも戻ると売りが出る展開となっており、頭が相当重くなっている。目先のポイントである105円に向けた動きが強まりそうな展開に。

ここに来て円高の動きが広がっており、クロス円も軒並みの下落に。麻生財務相をはじめとする日本の要人から行き過ぎた円高に対する警戒発言が出てきているが、いわゆる口先介入(用語説明2)の効果には限界があるだけに、相場を支える効果は限定的なものに留まりそう。

なお、今週はダドリーNY連銀総裁、パウエル理事を始めとして米国の要人による発言予定が目白押しとなっている。今回の動きのきっかけとなった米国の利上げ期待について、再び期待が広がるような発言が出てくると、ドルの買い戻しが広がる可能性も。地合いは相当弱いが、反転の可能性がある点には注意が必要。反転した場合、ポイントとなるのは110円。大台をしっかり回復すると市場の雰囲気が大きく変わると期待される。

用語の解説

 CMEFedWatch米国の政策金利であるFF金利について、シカゴマーカンタイル取引所(CME)が、FF金利先物市場の動向を元に、市場の見通しをFOMC毎の利上げの確率として提示するもの。http://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html
口先介入介入権限を持つ金融当局(一般的には中央銀行であるが、日本の場合財務省が介入権限を持つため、財務省要人)が、実際に市場の介入を行うのではなく、介入を示唆する発言などを行うことで為替相場を誘導しようとするもの。

今週の注目指標

米小売売上高(3月)
4月13日21:30
☆☆☆
米国のGDPの約7割を占める個人消費の動向を表すことで注目度の高い同指標。前回2月分の数字は総合、変動の大きい自動車を除いたコア部分がともに前月比-0.1%とマイナスを記録。1月の数字も速報時点から大きく下方修正されるなど、弱い数字となり、市場の警戒感を誘った。今回は総合が+0.1%、コアが+0.4%と回復期待を見せており、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると米国の利上げ期待をサポートしてくると期待される。地合い的に大きなドル買いに繋がることは難しいが、ドル売り円高の動きを抑制する働きが期待される。
米生産者物価指数(PPI・3月)
4月13日21:30
利上げに向けて雇用と並んで注目されるインフレ動向。エネルギー価格が低下したことで低下が目立つインフレ関連指標であるが、一時に比べ原油価格の低下が収まったこともあり、今回の数字はある程度の回復が期待されている。予想は前年比、前月比ともに+0.3%。予想通りの数字が出てくると、翌日のCPIへの期待感にもつながり、ドル買いに作用しそう。単体では材料として弱いが、同時に発表される上述の小売売上高とともに強めの数字が出てくると、ドル買いが入る期待も。
英中銀金融政策会合(MPC)
4月14日20:00
☆☆
一時は利上げ期待が強まっていた英国であるが、エネルギー価格低迷を受けたデフレ懸念や、6月のEU離脱をめぐる国民投票への警戒感などから、当面は現行政策が据え置かれるという見方が広がっており、一時に比べると注目度が落ちている。もっとも、声明などの姿勢の変化には要注意。このところ下落が目立つポンド相場への言及が見られると、大きく動く可能性も。ドル円次第の面もあるが150円割れまで意識されているだけに、相場を支えるような材料が出てくるかどうかが注目される。
米消費者物価指数(CPI・3月)
4月14日21:30
☆☆
米国のインフレターゲットの対象となるインフレ指標はPCEコアデフレーター(前年比)であるが、CPIの食品・エネルギーを除くコア(前年比)とほぼ同傾向の動きを示すため、より発表の早い同指標がインフレ関連指標としてはもっとも注目を集める指標となっている(直近の米国で比較的好調な住宅関連コストの占める比率がPCEよりも高いため、水準自体はCPIのほうがPCEよりも高めに出る)。予想は前年比+2.3%と2月と同水準。予想を上回り上昇傾向を示すようだと、利上げに対する自信に繋がりそう。要人発言や今週それまでに出た指標の結果にもよるが、ドルが反転する良いきっかけとなる可能性も。

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