2016年05月02日号

(2016年04月25日~2016年04月29日)

先週の為替相場

日銀会合受け一気の円高

注目された27日28日の日銀金融政策決定会合は、市場の期待を裏切る現状維持となった。1月にマイナス金利を決定し、2月16日から導入されて間がないこともあり、3月ごろまでは今会合での現状維持は大勢の見方であった。しかしその後円高株安が急速に進んだことで、日銀としても追加緩和という形で手を打たざるを得ないという見方が広がっており、直近の相場もそうした見方を織り込む形で円安株高で推移していた。しかし結局日銀は現状維持を決めたことで、反動もあって一気に円高株安に。ドル円は111円台から発表直後に一気に108円台に。その後も下げが止まらず、祝日で東京勢が不在となる29日にも円高が進み、金曜日のNY市場でドル円は約1年半ぶりの円高水準となる106円台前半まで値を落とす展開となった。

また、週末に米国財務省は議会に対して半期為替報告書(用語説明1)を提出、その中で日本をはじめとする5カ国(日、独、中国、韓国、台湾)を為替政策監視国に指定。不公正な通貨安政策を取っていないかの判定を行うとしており、安易な介入などがやりにくい状況に。

26日27日の米FOMC(連邦公開市場委員会)も現状維持を決定。こちらは事前予想通り。注目された声明では原油安や海外経済に対するリスクに言及した部分がなくなった。これにより早期利上げへの道が開いた形となったが、一方で景気や個人消費に対する見方は下方修正されており、緩和策維持を示唆する形に。市場は若干ドル高で反応したものの、影響は限定的に。

27日の豪消費者物価指数(第一四半期)が予想を大きく下回り、前期比はまさかのマイナス圏(-0.2%)。これを受けて5月3日の豪中銀理事会での利下げ見通しが一気に強まり、豪ドルが急落する場面が見られた。豪ドル円は86円台から85円割れへ急落。さらに日銀の現状維持を受けた円高で、週末には80円台まで値を落としている。

今週の見通し

今週はゴールデンウィークで日本からの参加者が極端に減る中で、円高圧力が意識される展開に。麻生財務相は週末に「投機的な動きが出ており、憂慮している。必要に応じて対応する」と介入を示唆する発言を行っており、一時的には下押しに対する警戒が出ると見られるが、祝日の間に本格的な介入を行えるかどうかは微妙なところ。戻り売りの意欲が強い展開が強まりそう。

ドル円は105円がターゲットとなる。大台を割り込むと100円が現実に見えてくるだけに大台を維持できるかどうかがかなり大きなポイントに。107円台をつけてから111円台後半まで一時値を戻し、積みあがったドル売り円買いポジションが一旦整理された後に、再び下を試している分、まだ売り余力が残っている。

ただ、一方で介入への警戒感も強い。短期的に一気に売り込まれた格好だけに、過剰な値動きを落ち着かせるための、いわゆるスムージングオペ(用語説明2)であれば世界的な理解も得やすい可能性も。

今週末の米雇用統計をはじめとして、重要指標の発表も控えている。特に米国は先週のFOMC声明において、対外要因によるリスク文言を外し、国内状況を強調しただけに米国の景気動向を示す重要な指標への注目度が高まっている。今回の雇用統計がかなり強めに出た場合、6月の利上げ期待が一気に強まり、ドル買いが広がる可能性があるだけに要注意。

用語の解説

半期為替報告書米国財務省が議会に対して年に2回提出する「国際経済と為替政策に関する報告書」の通称。報告書自体は以前からあるものだが、今年2月に成立した(大統領署名が2月24日)「2015年貿易円滑化及び権利行使に関する法律」において、不公正な為替取引に取り組むための規定が定められた。この法律に基づき、対米貿易黒字が大きい国、経常黒字の対GDP比が大きい国、為替介入による外貨買いが対GDPで大きい国などに対して、為替政策監視リスト入りすることが定められ、今回の報告書で日本をはじめとする5カ国が初めて指定された。
スムージングオペスムージングオペレーション(Smoothing Operation)の略。中央銀行など通貨当局が行う為替の市場介入のうち、水準の変化を主目的にするのではなく、短期的に大きな値動きが起こった際に、その動きを落ち着かせることを目的として行うもの。一時的な相場の行き過ぎの緩和を主目的とするため、通貨安競争などの批判が起こりにくいとされる。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数
5月2日23:00
☆☆
ISM(米供給管理協会)が企業へのアンケートをもとに発表する指標。PMI(購買担当者景気指数)や日銀短観など、他のアンケート系の指標と同様に、景気動向への先行性があるといわれており、注目度が高い。50が好悪判断の境目となる。前々回は50を下回る弱めの数字であったが、前回は予想を大きく上回り、50も超える51.8の好結果を記録した。今回も前回とほぼ同水準の51.5が見込まれている。なお、前回やや弱めの数字となった雇用部門(48.1)が回復してくるかどうかも注目されている。
豪中銀(RBA)政策金利発表
5月3日13:30
☆☆☆
豪州最大の輸出品目である鉄鉱石は今年に入って一時大きく値を崩していたが、原油安の一服など商品市場全体の買い戻し基調もあり、値を戻す展開となっている。こうした状況もあって、今回のRBA理事会では金利の据え置きが見込まれていた。しかし、先週発表された第1四半期の消費者物価指数が予想を大きく下回る弱めのものとなったことで、一気に利下げ期待が拡大。今のところはまだ据え置き見通しの方が強いが、見方は相当分かれており、据え置き、利下げどちらに決まっても相場はかなり大きく動きと見られる。利下げとなった場合、80円の大台を大きく割り込む可能性も。
米ADP雇用者数(4月)
5月4日21:15
☆☆
米給与計算代行の大手ADPによる雇用統計。労働省による雇用統計、非農業部門雇用者数(NFP)の民間部門の数字と相関関係が高いことで知られており、米雇用統計の先行指標として利用されている。今回の予想は+19.5万人と前回の+20.0万人から伸びが鈍化する見込み。予想通りの数字が出てくると水準は少し違うが傾向としてはNFPと同様になる。予想を大きく上回り20万人の大台をしっかり超えてくるようだと、早期利上げ期待につながり、ドル買いが入る可能性も。
米雇用統計(非農業部門雇用者数・NFP)(4月)
5月6日21:30
☆☆☆
雇用増は米FRBに与えられた二大命題のうちのひとつ(もうひとつは物価の安定)ということもあり、金融政策動向に大きな影響を与えることから注目度の高い指標。世界中の経済指標の中で最も注目度が高いといっても過言ではない注目度を誇っている。前回3月分のNFPは予想を上回る前月比+21.5万人となり、米国の早期利上げ期待を支えてきた。2月に一旦落ち込んで警戒された平均時給も回復を見せるなど総じて強めの数字に。今回は前回に比べるとNFPの伸びが鈍る見込みも、予想は+20.0万人と何とか節目の大台を維持の見込み。予想と同水準もしくは強めの数字が出て、平均時給や失業率などその他指標もしっかりとなると、6月の利上げ期待が広がる可能性も。発表時の水準にもよるが大きなドルの買い戻しになる可能性も。

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