2016年05月09日号

(2016年05月02日~2016年05月06日)

先週の為替相場

一時105円台半ばをつけるも、週後半にかけて円高収まる

先週序盤は円高が優勢な展開となった。先々週末に発表された米為替報告書において日本が独、中国等とともに為替政策監視対象国リストに入ったことが報じられ、円高に対して安易な介入が難しくなるとの思惑から円買いが強まった。GWの3連休中は介入が難しいとの思惑も加わって、日本勢が不在の3日に105円55銭近辺まで売り込まれる展開に。しかし、その後はドル安円買いの動きが一服し、ドルの買い戻しが優勢な展開に。安倍首相、麻生財務相、黒田日銀総裁などが円高に対して必要であれば対応する姿勢を表明し、口先介入となったことが、投機筋の円買いを躊躇する効果に繋がった。その後は週の後半にかけてドルは対円だけでなく対ユーロなどでもしっかりの展開が続いた。

注目された6日の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る16万人という弱めの結果に。これを受けて6月の追加利上げ期待は後退したものの、影響は限定的。週後半のドルの買い戻し基調は継続した。ドル円は107円台から106円台半ば割れまで値を落とす場面が見られたが、すぐに107円台を回復する動きに。

その他目立ったのは豪ドルの動き。3日の豪中銀金融政策理事会では予想外の利下げを発表(2.00%→1.75%)。先週末の豪第一四半期消費者物価指数(CPI)が弱めで、一部で利下げの可能性が指摘されていたが、大勢は金利据え置きを見込んでいただけに、かなりのサプライズとなった。さらに6日になって豪中銀四半期金融政策報告(用語説明1)において、2016年のインフレ見通しが前回(2月発表)時点での2-3%から1-2%へ引き下げられ、豪ドル売りに拍車がかかる展開に。利下げで82円手前から80円近辺に値を落としていた豪ドル円は78円台前半まで下値を広げている。

今週の見通し

先週の米雇用統計後のドル売りが限定的なものにとどまったことで、ドルの買い戻し期待が広がっている。雇用統計自体はかなり弱い結果で、6月の追加利上げ期待は相当後退。もっとも、6月のFOMCはその直後に世界的に注目材料である英国のEU離脱をめぐる国民投票(用語説明2)を控えている。英国のEU離脱が決まると世界的な大きな不透明感が広がると予想されることから、その直前の段階で米国が利上げに踏み切るのは難しいという見方が元々強かった。それだけに今回の数字の影響は限定的なものにとどまっている。ドル円は106円台での買い意欲が広がっており、3日の安値105円台が少し遠くなった印象。心理的にも大きな節目と言われた105円ちょうどをつけずに値を戻していることも、ドル買いが入りやすい地合い形成に寄与している。

3日の豪中銀による利下げを受けて、主要通貨を含めて世界的な緩和傾向が印象的に。そうした中、ゆっくりとではあるが引き締めに向かっている米ドルへの需要が回復している。また、世界的に緩和に向かわざるを得ない経済状況が目立つ中で、引き締めに向かうことの出来る米経済の堅調さへの好感もドル買いに。

依然として110円手前の売りは残っており、頭の重さもあるが、レンジを切り上げながら上を試す展開が予想される。ユーロ円などクロス円も基本的には堅調地合いか。

注目は13日の米小売売上高。先月末のFOMCで評価が下方修正された米国の個人消費。その個人消費動向をまともに表す小売売上高の回復が顕著に見られると、雇用統計で後退した利上げへの期待感が回復する期待も。この場合、ドル円の上値を試すきっかけとなりそう。

用語の解説

豪中銀四半期金融政策報告豪州の中央銀行である豪準備銀行(豪中銀・RBA)が四半期毎(2月・5月・8月・11月)の第一金曜日に発表する金融政策に関する報告。豪州の景気動向などについての評価に加え、経済成長見通し、インフレ見通し、雇用状況(失業率推移)見通しなどが公表される。また、豪州との貿易パートナーの評価という位置づけで、世界経済見通しについても評価が行われる。
英国国民投票6月23日に行われる英国のEU離脱の是非を問う国民投票。英国がEUのメンバーとしてとどまるか、離脱するかの二者択一。キャメロン首相は前回の選挙において国民投票の実施を公約としてきた。2月18日・19日の欧州首脳会議で同問題について英国提案によるEU改革案について合意した上で国民投票を決めたことで、残留派がやや有利と当初は考えられていた。しかし、国民的な人気の高いボリス・ジョンソン前ロンドン市長などが離脱支持を表明したこともあり、状勢は拮抗している。

今週の注目指標

英中銀金融政策発表
5月12日20:00
☆☆
英国の金融政策自体は現状維持で見通しが一致しており、波乱要素は少ない。ただ、今回は会合結果発表・議事録要旨発表に加え、四半期インフレ報告が発表されるいわゆるビッグサーズデーに当たる分、市場の注目度は高い。6月の英国民投票を前に、英中銀のリスク警戒などが四半期報告などでどこまで示されるかが注目。警戒感が強いようだとポンド売りも。
黒田日銀総裁講演
5月13日
☆☆☆
黒田日銀総裁が内外情勢調査会における講演を行う。先月の会合で市場の期待を裏切って金融政策の据え置きに回った黒田日銀。その後円高が進行したことも含め、総裁の現状の評価と今後の見通しが注目される。もっとも基本的にはこれまでの姿勢を維持してくると見られている。今後の追加緩和の示唆などが強く見られるようだと円売りも。
米小売売上高(4月)
5月13日21:30
☆☆☆
前回は全体の数字が予想外のマイナスとなり市場を驚かせた同指標。とはいえ、前回の数字は変動の激しい自動車部門のマイナスが大きく、コア部分は堅調を維持していた。4月としてはかなり強い新車販売を記録するなど、自動車部門も売上が回復していることもあり、今回はしっかりの数字が期待されている。予想は全体の数字が前月比+0.9%(前回-0.3%)自動車を除くコアが+0.6%(前回+0.2%)。予想通りの数字が出てくると、6月の利上げはともかく、9月の利上げを期待する動きは強まりそうで、ドル買いの大きなきっかけとなりそう。

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