2016年05月23日号

(2016年05月16日~2016年05月20日)

先週の為替相場

米利上げ期待強まりドル買い

18日に発表された4月のFOMC議事録では、大半の委員が雇用の回復や2%目標に向けての物価の動きが今後の経済指標で確認されれば、6月会合での利上げが適当という見解が示された。このときのFOMCでは声明で今後の利上げの示唆などがなく、早期利上げ期待が後退していただけにサプライズとなった。

109円台半ばまで回復していたドル円は上昇が加速。輸出筋などからの売り注文をこなし110円の大台を超えて上値を試す展開が見られた。

年内2回以上の利上げの可能性も現実味を帯びる形となり、ドルは全面高の流れに。NY地区連銀(用語説明1)のダドリー総裁やボストン連銀のローゼングレン総裁(用語説明2)など、これまで比較的利上げに慎重な姿勢が目立ったFOMC参加者からも早期利上げの可能性が報じられており、期待感を誘っている。

週末のG7及び日米財務相会議では、通貨安競争の回避などが再確認されたが、新しい中身はなく、影響は限定的に。

ドルはほぼ全面高となる中で、ポンドは対ドルでも買いが優勢に。6月23日の英国のEU離脱をめぐる国民投票を前に、残留派の勢いが強まり、電話調査などではかなりのリードを広げたことなどが、ポンドの買いにつながった。

イランの国営石油公社が増産凍結に否定的な発言をしたこともあり、原油が軟調。豪ドルなどの重石となった面も。米国の利上げ期待が強まったことで金利差縮小懸念も資源国通貨の売りにつながっている。

今週の見通し

基本的にはドル買いの基調。もっとも金曜日にイエレン議長の講演会を控えており、高値を買い上げにくい面も。3月に利上げ期待が広がった際は、同月末のイエレン議長講演において慎重姿勢が強調され、期待が一気に後退したという経緯があるだけに、今回も議長の姿勢を確認したいという動きに。

FOMCは合議制で最終的に多数決とはいえ、議長提案が否決されたことはこれまでのFOMCの歴史では存在せず、イエレン議長の意向がかなり重要な鍵を握っている。ダドリーNY連銀総裁などと同様に、6月利上げに前向きな姿勢が示されると、ドル買いの動きが加速する可能性も。直近高値を超えて112円台を意識する展開も。

もっとも先週後半に上げ過ぎたこと、もっとも大きな材料が金曜日に予定されているため、一旦は調整が入りやすい展開に。109円50銭をしっかり割り込むとストップが大きく出る可能性があるだけに、要注意。

伊勢志摩サミットの為替相場への影響は限定的か。

用語の解説

NY地区連銀全米に12ある連邦準備銀行(地区連銀)のひとつ。金融政策の実務を担当する。このため、他の地区連銀とは違う扱いを受けている。残りの11地区の連銀は4つのグループに分けられ、持ち回りでFOMCの投票権を有するが、NY地区連銀に関しては全てのFOMCで投票権を有している。なお、NY連銀の総裁はFOMCでの副議長職を兼ねている(FRBの副議長とは別)。また、副総裁もFOMCにオブザーバーとして参加する。現在の総裁はウィリアム・ダドリー氏。
ローゼングレン総裁エリック・ローゼングレン氏はボストン連銀の総裁。エコノミストとして1985年からボストン連銀に勤めるプロパー。同氏は利上げなどに慎重なハト派の代表格として知られている。ただし本人はハト派ではなく、データ重視派を自認している。

今週の注目指標

G7伊勢志摩サミット
5月26日・27日
☆☆
主要7カ国首脳会合(伊勢志摩サミット)が26日、27日に開催される。新興国経済の減速、原油価格の下落など、世界経済の成長とリスクが議題としてあげられている。金融・財政・構造改革などを組み合わせた政策協調が呼びかけられる中で、為替についても言及があるのかどうかが注目されている。もっとも先週末のG7財務相・中銀総裁会議において目新しい材料が出ておらず、サプライズな内容が出てくる可能性はそれほど高くない。
米耐久財受注(4月)
5月26日21:30
☆☆
6月の米利上げ期待が強まる中、米製造業動向を見極める重要な材料となる米耐久財受注への注目度が高まっている。変動の激しい輸送部門を除くコア部分は前回の-0.2%から+0.3%へ回復の見込み。コンピュータ部門などの落ち込みが前回の数字を押し下げていたが、全般的な景況感の改善もあり、プラス圏へ戻されると予想されている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、利上げ期待をサポートし、ドル買いにつながりそう。
イエレン米FRB議長講演会
5月27日
☆☆☆
6月のFOMCでの利上げ期待が強まる中、これまで利上げに慎重な姿勢を示してきたイエレン議長が姿勢を変化させてくるかどうかに注目が集まっている。イエレン議長の姿勢を確認する機会として、6月のFOMCまでに2回予定されている講演会が重要なイベントとなっている。そのうちの一回目の講演会が27日にハーバード大学で行われる。同じくハト派のダドリーNY連銀総裁などが6月利上げの可能性に言及しており、議長も姿勢を変化させている可能性は十分にある。議長が利上げに前向きな姿勢を打ち出した場合、利上げはほぼ確定的となり、ドル買いの動きに弾みがつくと見られる。ドル円はこのところの高値を超えて大きく上値を試す可能性。

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