2016年05月30日号

(2016年05月23日~2016年05月27日)

先週の為替相場

振幅も堅調

ドル円は109円台を中心にした振幅が続いた後、110円台に乗せて週の取引を終えている。先々週のドル高の流れが一服。利益確定の売りなどが入る展開に、週の前半は109円ちょうど近くまで売り込まれる場面も見られた。23日に発表された日本の貿易収支において黒字が予想を上回ったことが為替監視国リスト入りした後だけに懸念材料としてドル売り円買いのきっかけになった面も。NY原油が一時50ドルを上回り、リスク選好の動きが広がったこともドル買い円売りの動きを誘った。

G7サミットの影響は限定的に。積極的な財政出動への期待や、消費増税延期の期待などがドル円を支えたものの、上値から買い上げるだけの材料とはならなかった。

週末前にドル買いの動きが広がった。市場が注目したイエレン議長のハーバード大学での講演(パネルディスカッション)において、早期の利上げの妥当性に言及。これまで地区連銀総裁らが利上げ見込みに言及しても、慎重姿勢を崩してこなかった議長だけに、今回の発言で市場は6月もしくは7月の利上げ期待を織り込む動きを強め、ドルは金曜日NY市場午後に全面高となった。

その他目立ったのはポンドの動き。24日に行われた英中銀金融政策(MPC)委員(用語説明1)の議会証言において、EU離脱をめぐるリスクが強調されたことで、EU離脱回避への期待感が広がった。直近の世論調査でもEU残留派の勢いが出ており、ポンド買いの材料に。ポンドドルは一時1.4720台、ポンド円は162円台に乗せる動きを見せた。もっとも週の後半にかけては対ポンドでもドル買いが広がったことや英第1四半期GDPの改定値が速報から下方修正されたことなどが重石となり、少し調整が入る展開に。

今週の見通し

週末の雇用統計をにらむ展開も、基調はドル買いか。これまで慎重姿勢を崩してこなかったイエレン議長や、ダドリーNY連銀総裁(FOMC副議長)らから、利上げの可能性に言及する発言が相次いでおり、市場は6月もしくは7月の利上げを急速に織り込みにまわっている。

もっとも雇用統計までは慎重な姿勢も予想される。前回4月のFOMC議事録で、利上げは今後のデータ次第とされた。5月初めに発表された4月の雇用統計は、1-3月に比べると非農業部門雇用者数(用語説明2)の数字が弱めに出るなど、少し減速感もあるだけに注意が必要。また、週の前半は月末を控えた外貨売りの動きなども出やすい。110円台を維持できず、少し調整する場面もありそう。

ただ、先週前半の調整局面でも109円台を維持したように、下値しっかり感は相当強い。調整の動きなどをこなして高値圏でもみあいが続くと、雇用統計前に上値抵抗水準である110.50円-111円を超えて、大きく上昇を見せる可能性も。

資源国通貨はやや神経質となりそう。NY原油が先週一旦50ドルの大台を示現したことで、動きに達成感が出ている。また、OPEC総会などを控えて、原油は調整が入りやすい面もある。こうした動きが広がるとカナダ円や豪ドル円には重石に。

用語の解説

英中銀金融政策委員英国の中央銀行(Bank of England)において、金融政策の決定機関である金融政策会合(MPC)に出席し、投票を行うメンバーのこと。英中銀総裁、副総裁を含む5名の内部委員と4名の外部委員の計9名によって構成されている。各国の中央銀行は表向きは多数決となっているが、実際には議長・総裁などトップの意見が相当に強い。しかし英MPCに関しては総裁の意見が少数派になることが普通にあり、9名の自由な投票による決定が行われることが特徴となっている。
非農業部門雇用者数Non Farm Payroll (NFP)
米労働省が公表する米国の非農業部門の雇用者数。一般的には季節調整をかけて前月比で表した数字が注目される。同時に失業率、平均需給、労働参加率など、労働市場の主要な数字が同時に発表される。
米FRBの二大命題のひとつである「雇用の最大化」の動向を直接示すこともあり、注目度が相当高く、全世界の経済指標の中でもっとも注目を集める指標のひとつとなっている。

今週の注目指標

ISM製造業景気指数(5月)
6月1日23:00
☆☆
米供給管理協会(ISM)が全米350社の製造業の購買担当役員へのインタビューを下に行い、毎月第1営業部に発表する景況感調査。景気への先行性があり注目度が高い。また、調査する5項目のうち雇用部門は第1金曜日に発表される米雇用統計の前哨戦としても意識されている。予想は50.4と前回の50.8からやや弱め。予想をさらに下回り節目の50も割り込むと、109円を試すようなドル円の大きな調整も。
ECB理事会
6月2日20:45
☆☆
将来的な追加緩和期待が強いが、来月の英国のEU離脱をめぐる国民投票が迫る中で、今回の理事会での緩和期待は薄く、据え置きが見込まれている。注目は理事会後のドラギ総裁による会見。会見による今後の追加緩和への期待感が広がるようだと、ユーロ売り。週末の米雇用統計次第であるが、ユーロドルで1.10を試すような動きも。
OPEC総会
6月4日
☆☆
市場が注目する増産凍結協議については、イランの反対姿勢が強く、合意への期待は薄い。もし合意した場合は大きなドル買い円売り材料に。合意しなかったもしくは議題に上らなかった場合は、NY原油が先週一時50ドル台に乗せたように原油安の動きは一服しており、影響は限定的か。
米雇用統計(非農業部門雇用者数・5月)6月3日21:30
☆☆☆
6月もしくは7月の利上げ期待が強まる中、最大の鍵となることもあり、注目度が相当強まっている。非農業部門雇用者数は前回4月分の数字が予想を下回り、やや警戒感を誘った。今回も電話大手ベライゾンのストライキの影響などで雇用者数が下振れしており、前回並みの水準が予想されている。

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