2016年06月06日号
先週の為替相場
驚愕の米雇用統計に
注目された3日の米雇用統計(5月)は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想の前月比+16.0万人に対して、わずか+3.8万人にとどまる衝撃的な数字を記録した。対象元である前月の数字も速報時点での+16.0万人から+12.3万人に大きく下方修正されており、そこからのさらに低水準の伸びということで、インパクトが強まった。失業率は予想外に4.7%まで低下したものの、労働参加率の低下もあって、NFPのネガティブなインパクトがはるかに勝り、ドルは急落を見せた。
先々週の週末にイエレン議長が追加利上げに前向きな姿勢を示したことで、週の前半はドル円が111円台をつけるなどしっかりの展開。その後は日本の消費増税再延期の正式表明を受けた材料終了での利益確定売り(事前に織り込みが済んで、確定で売る、いわゆるやれやれ売り)や、英国のEU離脱懸念を受けてのポンド円の売りなどに押され108円台半ばあたりまで調整が入っていた。
米雇用統計を109円近辺で迎えた後、107円台へ急落、雇用統計の一時間半後に出たISM非製造業景気指数(用語説明1)も弱い数字となり、動きが加速し、106円台への下げ幅を広げる展開に。
もうひとつ動きが目立ったのがポンド。31日に報じられたEU離脱をめぐる最新世論調査の結果で、これまで一貫してEU残留派がリードを保っていた電話による調査でも離脱派がリード。ネット調査ももちろん離脱派がリードし、一気に離脱ムードが強まった。ポンドドルは1.47台から一気に1.44台へ。その後1.45台回復も、対円での売りに1.43台へ。ポンド円は163円台から10円以上値を落とし153円割れまで。
今週の見通し
今回の米雇用統計を受けて、米国の早期利上げ期待が一気に弱まった。6月のFOMCでの利上げについては、英国の国民投票直前ということで、回避する可能性もあるが、7月までにはという期待が雇用統計前までの主流であった。しかし、雇用統計を受けて一気に流れが変化。金利面での織り込みを示すCMEFedWatch(用語説明2)での6月の利上げ見込みは発表直後に6%、その後4%まで落ちており、利上げ見送りがほぼ織り込まれている。7月の利上げも30%台、9月でも48%と、過半数に届いておらず、市場の大勢の見方は11月もしくは12月の利上げまで先送りされている。
少なくとも9月までに利上げが行われない場合、現状で織り込んでいる年内2回の利上げはほぼ無理となる。金利面での先行き見通しの変化は為替市場に大きな影響を与えるだけに、金曜日の急激なドル安は致し方ないといったところ。
大きくドル安円高が進んだ後だけに、調整を交えながらとなるが、当面はドル安基調が続きそうな状況となっている。
今週最大の注目材料は6日夜のイエレン議長による講演。直近のハーバード大学で行われたパネルディスカッションでは追加利上げに前向きな姿勢を示し、市場が期待してドル高が進んだ。しかし、今回の雇用統計を受けて姿勢を従来の慎重姿勢に戻してくることが予想される。この場合、ドル売りの動きが加速する可能性が高い。
その他注目は豪州、NZの金融政策会合。豪州は据え置き、NZは利下げが見込まれているが、見方は一致していないため結果への反応が見られそう。特に第一四半期GDPの好結果で急速に利下げ見通しが後退した豪州で、利下げが強行された場合、豪ドル売りのインパクトが大きくなりそう。
23日の国民投票を前にして神経質な英国の状況も注目。29日・30日に行われたICMの世論調査では、電話、インターネットともに離脱派が優勢に。しかし31日に行われたYouGovの調査では残留派が優勢と、まだまだ予断を許さない状況。離脱が決まった場合、一気に売り込まれるだけに、注意が必要。(ICM,YouGovはいずれも調査会社の名前)
用語の解説
ISM非製造業景気指数 | 米供給管理協会(ISM)が購買担当役員へのインタビューをもとに行っている景況感に関する調査。毎月第1営業日に製造業部門が、第3営業日に非製造業部門が発表される。一般的には発表が早く、波及効果も大きい製造業への注目度が高い。ただ、米国のGDPの約8割、雇用にいたってはさらに多くが非製造業であり、非製造業の実際的な影響は大きい。そのため、今回のようにタイミングが合えば相場に大きなインパクトを与える。 |
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CMEFedwatch | 世界最大の金融・商品デリバティブ取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所グループが、米国の金融政策目標の対象であるFF金利の先物市場動向をもとに、金利市場が米国の金融政策変化の確率を、どのタイミングでどの程度織り込んでいるのかを示したもの。 |
今週の注目指標
イエレン議長講演 6月7日01:30 ☆☆☆ | フィラデルフィアでの全米国際問題評議会においてイエレンFRB議長が講演を行う。今月のFOMC前に予定されている最後の講演会ということもあり、市場の注目を集めている。先々週末に行われたハーバード大学でのパネルディスカッションでは、早期の利上げについて容認する姿勢を示していた議長であるが、最重要視している雇用市場が明らかに減速したこともあり、これまでのような慎重姿勢に戻るのではとの見方が強い。この場合ドル売りが強まり、ドル円は105円を意識する展開になる可能性も。 |
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豪中銀金融政策理事会 6月7日13:30 ☆☆☆ | 早期の利下げ期待の強い豪中銀であるが、6月1日に発表された豪州の1-3月期GDPが前年同期比+3.1%と、予想に反して第4四半期から伸びが加速したことを受けて、今回は見送るとの見通しが大勢となっている。もっとも8月までには利下げするとの見通しが約半数に上るなど、早期の利下げ期待は依然健在。豪中銀が早めに利下げに向かう可能性もあるだけに、要注意。利下げした場合豪ドル円は直近の重要なサポートである77円50銭から78円にかけての水準をしっかり割り込み、2012年につけた75円割れ意を意識する動きになる可能性も。 |
NZ中銀金融政策理事会 6月9日06:00 ☆☆☆ | 据え置きが大勢となった豪中銀とは対照的に、NZ中銀は利下げ期待がここにきて強まっており、0.25%の利下げ見通しが大勢となっている。利下げ期待が強まった背景にあるのが、NZにある乳業の世界的大手フォンテラが5月25日に発表した2016年/17年の牛乳価格見通しが予想を大きく下回ったこと。商品輸出の約3割が乳製品という酪農大国NZにとって、この状況はかなり深刻。ただ、すでに同国にとって政策金利が過去最低水準にあることや、オークランドを中心に住宅投資の過熱状況が激しいことなどから、据え置き見通しもあり、見通しが分かれている分、どちらに決まっても動きが出やすい。利下げが実施された場合NZドル円は73円を試す可能性も。 |
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