2016年06月13日号
先週の為替相場
英国民投票への注目集まる
ドル円は3日に発表された米雇用統計の衝撃的な弱さの影響が残り、週明け6日月曜日早朝に106円38銭と5月4日以来となるドル安円高圏を付ける動きに。注目された6日のイエレン議長講演では雇用統計に対する失望感が明らかにされたものの、単月の数字で政策を決めることはないとしており、6月はともかく7月の利上げについては可能性を残した形となって、さらなるドル安トライは抑えられた。
その後は調整の動きも見られたが108円手前の売りが重く、戻りは限定的に。米国の早期利上げ期待が後退した影響が強く残っているうえ、英国の国民投票への警戒感からくるリスク回避の円買いなどが重石となっていた。ドル円は9日に月曜日の安値を割り込む動きも、その後107円台に値を戻すなど、頭は重いものの、下を売る動きにも慎重な姿勢がみられる展開に。
神経質ながら上下ともに動きに慎重なドル円に代わって、市場で動きが目立ったのがポンド。23日に予定されている英国のEU離脱の是非を問う国民投票に対する市場の注目が集まっている。週末の世論調査でEU離脱派が複数の調査会社で優勢となり、離脱懸念からのポンド売りが広がった。しかし、7日発表の調査では残留は優勢でポンドが買い戻されるなど、不安定な展開。統計誤差を考慮するとほぼ互角という状況が続いており、本番まで神経質な展開が続きそう。
7日の豪中銀、9日のNZ中銀はともに政策金利を据え置いた。豪中銀は据え置き自体は予想通りも、声明で今後の緩和を意識させてくるのではとの市場の思惑に対して、中立姿勢を貫いたことで豪ドル買いに。NZドルは国の主力生産品である牛乳の価格低下懸念から、据え置きと利下げで思惑が揺れていた分、据え置きを受けてこちらもNZドル買いに。
今週の見通し
3日の雇用統計までは追加利上げ実施の可能性まで含めて注目されていた14日、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、金利据え置き予想でほぼ一致する展開となった。もっとも、7月以降比較的早期での利上げ期待が残る中、今回のFOMCで示される参加メンバーによる金利予想(ドットチャート、用語説明1)が注目されている。前回ドットチャートが発表された3月のFOMC時点では年内2回の利上げが見込まれていた。そのためには遅くとも9月までの利上げが必要で、現状での市場の見通し(9月までに利上げが行われる可能性は約5割)よりもやや強め。前回同様の予想が出てくるとドル買い、下方修正してくるとドル売りに。
英国の国民投票の期日が迫っており、市場は相当神経質に。先週は一時ポンドが乱高下し、誤発注のうわさも出た。ただ、本来市場規模の大きい主要通貨では相当な注文が入ってもこうした動きは起こりにくい。市場が値動きに神経質になっていて、動きを支えるだけの余裕がなくなっている印象。最新世論調査結果などで相場が揺れる可能性があるだけに、注意が必要に。
英国の国民投票に関しては世論調査結果は二転三転している。とはいえ統計誤差がある程度あるのでその範疇。基本的にはほぼ互角だけに、相場の影響が読みにくい。若年層では圧倒的で残留派が多い一方、年配層は離脱派が多数。英国はOECDの調査で若年層とシニア層の投票率の差が主要国で最も大きい(若年層<シニア層)だけに、実際の投票行動まで考えるとやや離脱派有利という面も指摘されているが、通常の選挙とは違い、中身が中身だけに、投票率が相当上がるとの思惑もあり、このあたりも含めて不透明感が強い。
英国の離脱が決まればポンド売りだけでなく、リスク回避の投資資金流入で円買いが予想される。ドル円なども下を試す可能性が高まるだけに要注意。一時的に105円割れも意識される展開になる可能性も。
逆に残留となると安心感からの買い戻しが大きくなりそうで、上下ともに大きな波乱要因に。
用語の解説
ドットチャート | 年8回開催される米国の公開市場委員会(FOMC)のうち、半分の4回で公表されるFOMC参加メンバーによる政策金利の見通しのこと。各メンバーが予想する政策金利の水準をターム毎(現時点は2016年末、17年末、18年末、長期)に、金利水準表の上でドット(点)で表し、そのドットの分布で状況を示したもの。FOMCでの投票権のあるメンバーだけでなく、投票権のない地区連銀総裁の見通しも示されている。 |
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英国民投票 | 23日に行われる英国のEU離脱の是非を問う国民投票のこと。現地時間の23日午前7時から22時まで(日本時間23日15時から24日の6時まで)行われ、締め切り後、即開票される。ただし出口調査結果の公表は行われないため、結果が判明する時刻は未定。離脱・残留の支持率はほぼ互角。男女差もそれほど大きくない。年齢別の支持率は大きく違い、若年層は残留支持、シニア層は離脱支持が多い。 |
今週の注目指標
米小売売上高(5月) 6月14日21:30 ☆☆☆ | 米国のGDPの約7割を占める個人消費の状況を表すということで注目度が高い小売売上高。注目された雇用統計がかなり弱めの数字となったことで個人消費動向にも注目が集まっている。予想は全体の数字が前月の+1.3%から+0.3%、変動の激しい自動車を除いた数字が前月の+0.8%から+0.4%へと鈍化懸念。予想通りもしくはより弱めの数字が出てくると、早期利上げ期待を後退させドル売りにつながりそう。 |
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米連邦公開市場委員会(FOMC) 6月16日03:00 ☆☆☆ | 今回のFOMCは会合後の議長会見や参加メンバーによる金利・経済状況の見通し発表などが予定されている半数の買いにあたっており、当初は利上げ期待が強かった。ただ、来週の英国民投票直前ということもあり、若干慎重論が出ていたところに、3日の米雇用統計の大ブレーキがあり、利上げ期待はほぼ後退。今後の利上げについても慎重姿勢が継続するとドル売りを誘いそう。 |
日銀金融政策会合 6月16日 ☆☆ | 追加緩和の期待はかなり後退しており、変更なしが見込まれている。声明などでも従来姿勢の踏襲が見込まれている。予想以上に中立姿勢が目立つようだと円買いも、それほど大きな波乱は見込まれていない。 |
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