2016年06月20日号

(2016年06月13日~2016年06月17日)

先週の為替相場

目前に迫る英国民投票を受け、神経質に

14日、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、15日、16日の日銀金融政策決定会合はともに金融政策の現状維持を決めた。ともに大方の予想通りであったが、一部で追加緩和の期待が見られた日銀会合後にドル円は大きく値を崩した。105円台で会合結果を迎えたドル円は発表後にすぐに104円台に。日経平均が500円超の下げを記録したこともあり104円ちょうど近くまで値を落とすと、会合後の黒田総裁会見で今後の会話に対する示唆がなく従来姿勢を踏襲したことも嫌気して103円台半ばまで大きく値を落とした。

その後は週末にかけてさすがに値を戻す展開となった。麻生財務相が円高の動きについて「極めて憂慮している」と発言し、介入を意識させたことも、買い戻し要因に。日銀、財務省など当局者による臨時の会議が開かれたことなども、買い戻し要因となった。もっとも、105円手前が重くなるなど、戻りは限定的なものにとどまり、円高傾向が優勢に。

その他目立ったのはポンドの動き。23日の英国のEU離脱をめぐる国民投票を前に、16日まではポンド売りが優勢な展開に。週前半に発表された世論調査結果において、離脱派のリードが広がったことなども、ポンド売りの要因となった。

ポンドの流れが変わったのが16日。残留派の女性英下院議員が離脱派の男性に襲われ、死亡する事件が発生。痛ましい事件を受けて、残留派への同情票が集まるとの思惑がポンドの買い戻しを誘った。1.40の大台を試していたポンドドルは1.43台まで回復。145円台前半まで値を落としていたポンド円は150円近くまでの大きな買戻しに。

今週の見通し

23日の英国民投票をにらむ展開。離脱派が一時かなりリードしていたが、16日に英国で起こった痛ましい事件を受けて見通しが混沌としており、不安定な展開が続きそう。

ポンド円は国民投票が決まった2月から見ても約30円も値を落としているが、離脱が決まった場合さらなるポンド売りが意識されている。ただ、前代未聞の事態だけにどこまで反応するのかの判断が難しい。一部では130円程度までの下げを予想する向きもあるが、根拠のある数字ではなさそう。

一方、すでに大きく値を落としているだけに、残留が決まった場合の反動も相当大きい。先週後半に5円近く戻したとはいえ、離脱派の優勢が伝えられた先月末からだけでも一時19円超、現水準と比べても約15円のポンド安円高が進んでおり、その分を戻すだけでも大荒れの相場となる。

ドル円もポンド円に振られる形で大荒れの展開が予想される。また、今回のイベントを前に株安債券高(利回り低下)など世界的にリスクオフ(用語説明1)の動きが強まっている。残留となった場合、こうした市場でのポジションの巻き戻しも入り、円安を誘う可能性も。ドル円は110円を超えるような大きな円安が進む可能性も意識したいところ。

一方、離脱の場合は二ケタが現実味を帯びてくる。離脱・残留がほぼ互角の支持を受ける中で見通しが難しい展開に。

なお、今週に関しては米国でも重要なイベントが控えている。21日、22日に行われるイエレン議長の半期議会証言(用語説明2)である。21日に上院銀行委員会、22日に下院金融サービス委員会で行われる同証言では、追加利上げなどについて厳しい質問が飛ぶと予想されている。今後の金融政策の正常化に向けて、従来は慎重姿勢が目立つイエレン議長がどこまで突っ込んだ発言をしてくるのかが注目される。早期利上げへの姿勢をしっかり示すようだとドル買いの動きも。それ以外にも20日月曜日に黒田日銀総裁の講演、ドラギECB総裁の欧州議会での証言をはじめ、要人発言予定が目白押し。

用語の解説

リスクオフ世界的な景気の減速や政治経済的な大きなイベントを控えて、金融市場の混乱が懸念される状況において、変動の激しい株式や商品などから投資資金が流出し、より安全性が高いとみられる債券などに資金がシフトすること。外国為替市場(FX)では、新興国通貨や高金利通貨から資金が逃避し、円やドル、スイスフランなどに資金がシフトする。
半期議会証言インフレの抑制などを目的とした旧ハンフリー・ホーキンズ法に基づいてFRB議長が年に二回上院/下院両院で行う証言のこと。法律自体は2000年に失効しているが、慣習としてその後も継続している。一般的には2月と7月に行われることが多いが、今回は6月中と例年よりも早い実施となった。基本的に同じテキストによる証言となるため、先に行われる証言により注目が集まる。ただし、質疑応答内容などにより二日目のほうが相場が大きく動くケースもある。

今週の注目指標

黒田日銀総裁講演会
6月20日
☆☆
据え置きを決めた今月の日銀金融政策決定会合を受けて円高が進行。一時103円台まで大きく値を落とす動きを見せた後だけに、会合後初の講演会となる今週の講演会に対する注目度が比較的高い。ただ、基本的な姿勢は会合後の記者会見と同じとみられ、波乱要素は少ないとみられる。サプライズがない場合、今週はこの後のイベントが相当大きいこともあり、市場の反応は限定的なものにとどまりそう。
GDPの約7割を占める個人消費の状況を表すということで注目度が高い小売売上高。注目された雇用統計がかなり弱めの数字となったことで個人消費動向にも注目が集まっている。予想は全体の数字が前月の+1.3%から+0.3%、変動の激しい自動車を除いた数字が前月の+0.8%から+0.4%へと鈍化懸念。予想通りもしくはより弱めの数字が出てくると、早期利上げ期待を後退させドル売りにつながりそう。
米イエレンFRB議長議会証言
6月21日・22日
☆☆☆
米イエレン議長が21日に上院銀行委員会、22日に下院金融サービス委員会で議会証言を行う。現状の経済分析、将来的な見通しなどについて証言する中で、追加利上げの時期についての言及なども期待されるところ。早期の利上げを強く印象付けてくるといったんドル買いが広がる可能性も。ドル円は大きく下げた後だけに、回復が始まると大きいとみられ、105円台を回復して戻りを試すような動きとなる可能性も。
英国民投票
6月23日
☆☆☆
英国のEU離脱をめぐる国民投票。6月に入って離脱派がリードを広げていたが、先週残留派の議員が襲われ死亡した事件を受けて、同情票などが集まり、直近の世論調査では残留派が逆転する動きを見せている。ただ、差は僅差であり、実際の投票結果が離脱・残留どちらになるかは非常に不透明。基本的には0.1%でも多数をとった方針で今後の英国の政策が実行される。離脱となった場合、英国の経済的なデメリットは相当大きいとみられており、ポンド売りの要因となる。離脱は優勢が伝えられた5月末以降、すでに相当なポンド安となっているが、実際に決まるとさらに大きく値を崩す可能性が大きい。10%以上下がるのではという見方もある。一方残留となった場合は少なくとも5月末からの下げ分は解消するとみられており、それだけでも10円以上の戻しとなる。また、安心感からリスク先行の動きが広がるようだと、中期的にも円安材料となる。

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