2016年06月27日号

(2016年06月20日~2016年06月24日)

先週の為替相場

英EU離脱を受けて市場は混乱の極みに

注目された英国のEU離脱の是非を問う国民投票は、まさかの離脱派勝利となった。事前の調査会社による世論調査が残留派リードを伝え、投票が締め切られた直後に発表された調査でも残留派優勢と報じられたこともあり、市場は当初残留を織り込む動きを見せていた。しかし、開票が進むにつれ離脱支持票がリード。残留派の追い上げがまるで届かず、結果51.9%対48.1%とかなりの僅差ながら離脱支持票が多数を占め、英国のEU離脱方針が決定した。キャメロン首相はこの結果を受けて辞意を表明するなど、英国の混乱はかなり続きそうな状況となっている。

今回の離脱を受けて、市場は一気にポンド安ユーロ安円高が進行した。投票が締め切られた時点ではドル円は106円近辺。ポンド円は157円50銭近辺での推移であった。投票後に残留派の優勢が報じられたこともあり、その後はいったんポンド高円安の動きとなり、ドル円は106円台後半、ポンド円に至っては160円の大台近辺まで買い進まれる展開に。しかし、じりじりと離脱派が優勢となるにつれポンド売り円買いの動きが広がり、大勢が判明した日本時間午後には大きなポンド安円高に。ドル円は一時100円の大台すら割り込み99円近くまでと7円超の下落。ポンド円に至っては133円台と、わずか6時間で27円というリーマンショック時でも見られなかったような一気のポンド安円高の進行を見せた。

東証一部の全銘柄が一時マイナス圏となるなど、世界的な株価が大きく値を崩す中、リスク回避の円買いも加わり、円は全面高。ポンドはもちろんのこと、地政学的な結びつきがかなり強いユーロも対ポンドを除いて大きく売り込まれた。

ドル円が99円近くから102円台に、ポンド円が133円台から140円近辺に戻されるなど、週末を前に金曜日の海外市場で、安値からかなり戻しているが、あくまでやりすぎた分の調整であり、リスク警戒感が強く荒っぽい展開が最後まで続いた。

今週の見通し

EUは24日緊急会合を開き共同声明を発表。英国に対して「離脱手続きは困難を伴うが、英国民の決定を速やかに実現へ」と、英国に対して速やかに離脱するようはっきりと求めた。EUが恐れているのは、今回の事態が他の国、地域に波及し、欧州全体の混乱とEUの崩壊を招くことと思われ、この後の交渉の中で残留の可能性を示して有利に条件を引き出そうというような姿勢を拒否する構えを見せた。

離脱決定直後から、英国内のスコットランド国民党・北アイルランドのシン・フェイン党などの地域政党(用語説明1)が英国から独立してEUに独自加盟する方針を示したほか、オランダやフランスの極右政党(用語説明2)が自国での国民投票実施を呼びかけるなど、欧州の政治的な混乱は深刻。移民問題を受けて欧州各国で極右政党の党勢拡大が懸念されているところだけに、警戒感が広がる状況に。こうした事態は投資資金の流出を誘い、欧州通貨売り円買いになりやすい。

ドル円に関してはドル安の動きも意識される。早ければ7月にも、との期待感が強まっていた米国の追加利上げであるが、今回の事態により世界的に不安定な状況が続くと見越されることから、利上げ時期は後ろにずれるという見方が広がっている。国民投票前時点での大勢の見通しである9月の利上げ実施期待が後退し、下手をすると年内の利上げが見送られるのではとの見方が広がりつつある。こうした状況はドル売りを誘いやすい。

ドル円、ポンド円ともに一度大きく値を崩しただけに、短期的には調整の動きが出てくる可能性があるが、基調としてはポンド安、ドル安、円高。ドル円は100円をしっかり割り込む可能性が十分あるだけに、下値リスクを十分に意識した取引を行いたいところ。

用語の解説

英国地域政党イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの連合王国(UK,UnitedKingdom)である英国。UK全体にかかわる政党も多いが、各地域のみに特化した政党も多数存在する。中でもスコットランド国民党は2014年のスコットランド独立にかかわる住民投票先導するなど、スコットランドの独立への動きの先頭に立っている。その他、北アイルランドのシンフェイン党、ウェールズのプライドカムリなども、所属する地域の独立を主張している。スコットランド国民党が2015年の選挙で英国全体の第3党に躍進するなど、近年勢力の拡大が目立っている。
欧州極右政党フランスの国民戦線(FN)、オランダの自由党、ドイツの国家民主党などが代表的な、思想的に極右な性質を持つ党のこと。仏FNが2014年の欧州議会議員選挙でフランス国内の約25%の票を獲得、いわゆるネオナチとの見方が強いドイツ国家民主党が欧州議会選挙で議席を獲得するなど、近年勢力を拡大している。移民排斥を訴え、反EU色が強いことがこれら政党の特徴の一つとなっている。

今週の注目指標

ダボス会議
6月27日・28日
☆☆☆
世界経済フォーラムによる夏季ダボス会議が中国天津で開かれる。先週末の英国のEU離脱を受けて、ダボス会議に集まった世界各国の政府関係者・企業経営者などがどのような発言をしてくるのかが注目されるところ。市場の警戒感が広がるようだと、ポンド売りが強まる可能性も。137円台半ばを再び割り込むと下値警戒感が強まる。
EU首脳会議
6月28日
☆☆☆
英国のEU離脱を受けて、先週すでに臨時会合を開いたEU。今週も火曜日に会合を予定している。欧州全体の混乱が懸念される中だけに、発言内容などにかなりの注目が集まっている。極右政党が自国での国民投票を呼び掛けているフランスやオランダなどのからの発言は特に注目度が高い。市場が神経質になっているだけに、発言内容次第では欧州売りが広がる可能性も。
日銀短観(6月調査)         7月1日08:50
☆☆☆
注目される大企業製造業の景気判断は前回3月調査の+6から悪化し、+4程度にとどまるとみられる。先週の英国のEU離脱という事態が起こる前に調査されたデータではあるが、すでにある程度円高が進行していたことなどから、企業収益への悪影響が懸念され、数字を押し下げているとみられる。さらに、英国のEU離脱をめぐる混乱と円高の進行で実質的な景況感はさらに悪化していると予想されることから、予想程度もしくはそれ以上に弱めの数字が出ると、円買いが強まる可能性も。もう一つの注目は想定為替レート。現状の円高進行を織り込んでいることは考えにくく、現状からのかい離が印象付けられると、警戒感を誘って、ドル売り円買いの動きを加速させる可能性も。ドル円が100円を再び割り込み、売りが強まるきっかけとなることも。
米ISM製造業景気指数
7月1日23:00
☆☆☆
米企業の景況感を表す同調査。先週末の英国のEU離脱を受けて、市場では米国の追加利上げの時期が、従来期待されていた9月(早ければ7月)から相当遅れるとの見通しが広がっている。今回の調査は英国民投票前の状況での結果となるが、、その中ですでに景況感の悪化が見られているようだと、利上げ期待後退からのドル売りの流れに拍車がかかる可能性も。ドル円の再度の100円割れが警戒される中だけに、注意が必要。

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