2016年07月11日号

(2016年07月04日~2016年07月08日)

先週の為替相場

雇用統計強めも反応限定的

英国のEU離脱の影響が、英国の不動産市場に現れ、警戒感が広がる展開となった。英不動産ファンド(用語説明1)への解約希望が拡大したことで、複数の英不動産ファンドが解約停止措置を行い、市場のリスク警戒感が一気に広がった。

ポンドが対ドルでの最安値を大きく更新。1.30の大台をしっかり割り込んで、一時1.28割れまで試す展開に。投資資金の安全志向が強まり、米国債利回りが過去最低を更新する動きに、ドル円も頭を抑えられた。

その後は買戻しの動きなども入ったが、原油が週間石油在庫統計を受けて急落したことなども売り材料となり、ドル円は100円台での推移が続くなど、頭の重い展開に。

注目された8日の米雇用統計(6月)は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想をはるかに超える好結果に。5月の前月比1.1万人増(速報時点では3.8万人増)から、一気に28.7万人増にV字回復。ドル円が100円台半ばから101円台に乗せるなど、一時は買戻しが入る展開となったが、その後100円近辺をつけるなどドル買いが続かず。

平均時給の弱さからインフレ懸念が広がったなどの理由がその場ではつけられていたが、材料としてはやや弱い。ただ、ドル買いに慎重姿勢が継続する中、週末を前にした短期投機筋が一旦ポジション調整に回った格好か。

今週の見通し

金曜日の米雇用統計を受けてのドル買いは限定的なものにとどまったが、中長期的には効いてくると期待される。今週発表される米小売売上高などの数字次第では、米景気への信頼感が強まり、年内利上げ期待の再燃も期待されるところ。

11日の米非鉄金属大手アルコア(用語説明2)の決算から始まる米企業の4-6月期決算発表への期待も強く、ドル円は比較的しっかりの期待感。

ただ、欧州への警戒感は継続。14日の英中銀金融政策会合(MPC)での利下げ期待が広がっている。実際に利下げを実施し、さらに声明などで8月の追加利下げの可能性まで示唆してくるとポンドは一段安に。金利市場では連続利下げを見込む動きが徐々に広がっているだけに注意事項となっている。

ユーロも、対英輸出が大きいドイツなどへの悪影響を警戒する動きが続いており、頭は重い展開が広がりそう。

ドル円は週末の参院選での与党の勝利なども材料に序盤はしっかり、その後米小売売上高が強く出ると、さらにしっかりという流れが期待されるが、欧州関連での一時的な円高進行もリスクとしては意識という展開か。103円台半ばがターゲット。100円をしっかり割り込むと一気に下値リスクという流れ。

用語の解説

英不動産ファンド英国の不動産市場は海外からの資金流入に支えられてきた経緯があるため、先月23日の英国のEU離脱決定を受けて、投資家の警戒感が広がり、一部で解約を求める動きが広がった。この流れを受けて複数の不動産ファンドが解約停止を決定した。パニック的な解約の動きを回避し、投資家に再検討の時間を与えることが目的。英金融行動監視機構(FCA)は不動産ファンドに対して、解約に応じるために資産の売却を行う際には、残る投資家が不利にならないように公正な対応を求める要請を行うなど、事態の沈静化に務めている。
アルコアアルミニウム、同製品及びアルミナの世界的なメーカー。創業はペンシルバニア州ピッツバーグ、現在本社があるのはNY市。NY証券取引所に上場しており、2013年9月までダウ平均の構成銘柄のひとつであった。主要企業の中で決算発表が最も早いことが特徴で、同社の決算から米企業の本格決算シーズンが始まる。

今週の注目指標

カナダ中銀政策金利発表
7月13日23:00
☆☆
英国のEU離脱の世界的な影響が懸念されているが、カナダに関しては一時の原油安の流れが落ち着いたこともあり、今回の会合では据え置きに回るという見方が大勢。もう一方のカナダ経済の柱、自動車産業(対米向け輸出が中心)が好調となっていることもあり、目先の警戒感は欧州などに比べてかなり薄い。もっとも先週の米在庫統計以降原油安が進んでいるだけに、今後に向けてはやや警戒感。
カナダ中銀が声明などで今後への警戒を強めるような示唆を行うとカナダ売りも。この場合1.3500が大きなターゲットとなる。
英中銀政策金利発表
7月14日20:00
☆☆☆
英国のEU離脱の影響を限定的に抑えるため、英中銀が早期利下げに動くという見方が広がっている。当初は8月の利下げが期待されていたが、ここに来て今回下げて、状況次第で8月に追加利下げという見方が強まりつつある。金利市場での織り込みは75%程度と、利下げ見通しが相当高い状況に。ただ、もともと8月の利下げ期待が強かった分、ポンド市場の織り込みは十分には進んでおらず、利下げした場合ポンド売りの動きも。その後の会見などで8月の追加利下げの示唆が行われた場合、動きは加速すると見られ、ポンドドルは史上最安値を割り込んで売りが進む可能性も。
米小売売上高(6月)
7月15日21:30
☆☆☆
米国のGDPの約7割を占める個人消費動向をまともに表すということもあり、注目度が高い指標。前回は前月比+0.5%と好水準を記録していたが、自動車部門の落ち込みが予想されていることもあり、今回は+0.1%の予想となっている。自動車を除くコア部分は前月と同水準の+0.4%が予想されている。自動車に関しても6月としては約10年ぶりの好数字を記録しており、前月比で弱いというだけで、米国の消費動向は依然旺盛という見方が強い。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、先週末の米雇用統計の好結果とあわせ、米景気への期待感につながり、ドル買いが加速する可能性も。103円台半ばを超えてくるような動きも期待される。

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