2016年07月19日号

(2016年07月11日~2016年07月15日)

先週の為替相場

リスク選好の動きへ

 11日からの週は、英国のEU離脱をめぐる市場の懸念が一服し、一転してリスク選好の動きが広がる展開となった。8日の米雇用統計の好結果が、米国の景気回復への信頼感を回復させたことも、世界的なリスク警戒の動きへのけん制となった。円に関しては10日の参議院選挙で与党勢力が勝利し、今後の経済対策への期待感が広がったことも、円安材料となった。

 ポンドに関しては、警戒感が残りながらも買いが続く展開に。週末ソフトバンクの英ARMの買収が発表され、このM&Aに絡んだポンドの手当て分だったのはないかとの観測が流れていた。メイ新首相の決定で、不透明感が後退し、ポンド買いが強まった面も。

 また、ポンドに関しては14日の英中銀金融政策会合(MPC)で予想外に据え置きを発表したこともポンド買いに作用した。本来は8月の本線といわれていた英国の利下げについては、英不動産市場の混乱などを背景に、先週のMPCに前倒しされるとの見方が大勢となっていた。しかし、英中銀が8対1の大差で据え置きを決めたことで、当局は比較的冷静に状況を見ているとの市場の認識に繋がった。

 週末前に、いきなりの円高局面が生じた。金曜日NY市場午後というぎりぎりのタイミングでトルコでのクーデターが報じられた。トルコ軍が国を掌握との報道が一部で流れるなど、情報が交錯する中で一気にリスク警戒の動きが広がり、ドル円が104円台に落とされて週の取引を終える動きに。 

 もっとも、週末のうちにトルコ政府が事態を掌握し、混乱は最小限のものにとどまったことで、市場のリスク警戒の動きも収まった。

今週の見通し

 ドル円、クロス円の買いが期待される展開となっている。8日の米雇用統計、15日の米小売売上高と重要な指標が軒並み予想を大きく上回るかなりの好結果となったことで、米景気への期待感が広がっている。また、英国のEU離脱リスクについては、メイ新首相のもとで、落ち着いてじっくりとした交渉が続くと見られることから、市場のパニック的な動きが収まっていることも大きい。

 ポケモンGO(用語説明1)の世界的ブームを受けて急騰する任天堂株にも支えられ、東京株式市場が力強く上昇しており、リスク警戒の動きが弱まっていることも、ドル円、クロス円には買い材料に。

 ドル円は先週末のトルコのクーデータ騒ぎで、超短期的な円売りポジションが整理されており、買い直しの意欲が強まっていることも、サポート材料となっている。

 ドル円は105円台をしっかりと支えられながら、上値を試す展開が期待されるところ。今週予定されているECB理事会での据え置き期待もあり、ユーロなどもしっかりか。

 資源国通貨には先週の中国指標の堅調な数字を好感する動きも見られている。先週金曜日に発表された中国の4―6月期GDPは、1―3月期から伸びが鈍るとの予想に反し、前年比+6.7%と、1-3月期と同水準を維持。同時に発表された6月の鉱工業生産、小売売上高ともに予想を上回り、中国経済の底堅さが再認識された。

 こうした中国指標の強さは、豪ドルを初めとする資源国通貨(用語説明2)の買い材料となっている。豪ドルやNZドルがリーマンショック時に急落したように、こうした通貨は世界的なリスク警戒感に弱い面がある。しかし、英国のEU離脱がらみの警戒感が後退している現状は、直近の資源国通貨売りに対する調整の動きを誘っている。豪ドル円やNZドル円は上値を意識する展開に。豪ドル円はもう一度81円を試せると、上抜けへの期待が強まる。

用語の解説

ポケモンGO任天堂が発売するスマートフォン向けの位置ゲーム(GPSを利用して現在地を登録することで遊ぶゲーム)。Ingressという位置ゲームをヒットさせたナイアンティック社と任天堂が組んで開発した。先行して公開された米国など英語圏の国で爆発的なブームを巻き起こし、米国ではサービス1週間でツイッターのアクティブユーザー数を超えるという普及率を記録した。任天堂の株価もこのヒットを受けて急騰。発売1日で6000億円も時価総額が上昇するなどの状況を呼んだ。今後サービスが開始される日本などでも注目を集めると期待されている。
資源国通貨天然資源などを算出し、それを主要な輸出品としている国の通貨のこと。豪ドルや南アランドなどが代表的。天然資源には恵まれておらず、酪農製品、木材など農産物輸出がメインのNZドルも、豪ドルとの関係もあり、資源国通貨として扱われる。その他、世界有数の産油国であるカナダドルなど。(カナダの場合自動車輸出も盛んで工業国でもある)これらの国は一般的にインフレに弱いことなどから、金利が高めに設定されることが多い。

今週の注目指標

英消費者物価指数(6月)
7月19日17:30
☆☆☆
先週の英中銀金融政策会合(MPC)では、市場の利下げ予想に反して金利を据え置いた英国。ただ、四半期インフレ報告が同時に発表される次回8月のMPCでは利下げに踏み切る可能性が高い。MPCメンバーも大半が来月の利下げを見越しており、市場は利下げに向けた織り込みを徐々に進めている状況。こうした中、注目されるのが19日の消費者物価指数(CPI)。インフレターゲットを採用する英国であるが、対象となるCPI前年比は長期間にわたってターゲット(2%±1%)の下限を下回る状況が続いている。今回の予想は+0.4%と、前回の+0.3%からは上昇も、ターゲットにはまるで届かない状況。予想通りもしくはそれ以下の数字が出てくると、来月の利下げのハードルが下がることとなり、ポンド売りを誘いそう。ポンド円は139円割れを意識。
南ア中銀政策金利発表
7月21日時刻未定
☆☆
今週は、トルコ、ブラジル、南アといった新興国で政策金利の発表が予定されている。ブラジルと南アは据え置き、トルコも主要金利は据え置きで、上限金利である中銀貸出金利だけ0.25%の利下げ見込みとなっている。トルコが上限金利を引き下げると5会合連続となる。ただし下げ幅はこれまでの0.5%から0.25%に縮まる見込み。英国のEU離脱ショックが落ち着き、新興国への資金流入が回復するという期待もある中、これらの国の金利状況への注目度が高まりつつあるだけに要注意。
ECB政策金利発表
7月21日20:45
☆☆☆
ECB理事会が21日に行われる。政策金利は基本的に現状維持が見込まれている。英国のEU離脱リスクを受けて、早期の利下げ期待が広がっているが、先週の英中銀が据え置きを選択するなど、当局の動きは比較的落ち着いており、ECBも今回慌てて下げてくる可能性は高くないと見られている。もっとも金利市場での織り込みを見ると、年内の利下げ期待が6割を超えるなど、早期の利下げ期待が継続している。そのため、理事会後21時半頃から行われるドラギ総裁の会見及び質疑応答において、どこまで今後の緩和を示唆してくるのかなどが注目されている。

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