2016年08月08日号
先週の為替相場
サプライズとなった英中銀会合と米雇用統計
1日からの週、最大のサプライズとなったのは4日の英中銀金融政策会合。
2009年3月以来となる0.25%の利下げ決定自体は予想通りであったが、同時に600億ポンドの国債買い入れ増額、100億ポンドの適格社債買い入れの新設を実施。さらに年内にゼロよりも少しプラスの水準まで過半のメンバーが緩和を予想と、追加緩和まで示唆する動きに、ポンドはほぼ全通貨に対して急落を見せた。もっとも、マイナス金利までの踏み込みには慎重な姿勢がみられており、発表後に下げた後はいったんもみ合いに。
もう一つの注目材料。5日発表の7月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが事前予想の前月比+18.0万人予想に対して、+25.5万人と相当な好結果に。6月分の数字も0.5万人上方修正されて+29.2万人となっており、米雇用市場の堅調さが際立つ結果となった。
先月29日に発表された米国の第2四半期GDPの弱さから大きく後退していた年内の追加利上げ期待は、この結果を受けて回復を見せ、金利面での織り込み度から計算された利上げ確率は、発表前の32%から46%に上昇。ドルはこの動きを受けて買いが優勢となり、ドル円は一時102円台を回復している。
もっとも、雇用統計と同じ時間に発表された6月の米貿易収支が予想以上の赤字を計上。米国の第2四半期GDPが速報値からさらに落ちる可能性が強まったこともあり、高値圏からのドルの買いには慎重な姿勢も見られた。
豪中銀は2日に結果が発表された理事会で利下げを決定。今年5月に続いて2回目の利下げで、政策金利は史上最低水準を更新し1.50%となった。事前見込み通りということで、下げは限定的で、一服するとイベントクリアで買い戻しが目立つ動きに。もっとも、5日に発表された豪中銀四半期金融政策報告において、基調インフレ率が2017年から2018年にかけてターゲット以下の水準で推移するとの見通しを発表。状況によっては追加利下げがありうることが示されたことで、やや頭の重い展開となっている。
今週の見通し
ドル円は買い戻しの動きが期待されている。先週一時は100円台まで値を落としたドル円であるが、米雇用統計の好結果で年内の利上げ期待が回復傾向となったことは、中期的に影響を与えるドル買い材料。また、29日の日銀金融政策決定会合後の会見で示された次回9月の会合での検証について、緩和縮小を示すものではないと、日銀要人から繰り返し発表されており、円安が出やすい展開に。目先の重石となっている103円手前の売りを崩しに行く展開も期待される。
供給過剰懸念からこのところ売りが目立っていたNY原油先物については、週末にかけて調整の買い戻しが入っており、一時の懸念は和らいだ。こちらは資源国通貨を中心に対円での買い材料となる。原油市場の影響が大きいカナダ円は78円台をしっかりつけると、買い戻しに勢いが出る可能性。
ドル円は心理的にも先週の流れで100円台が維持されたことは大きく、短期筋は買い戻しに回りそうな状況。100円台の堅調さが市場に印象付けられると、買い戻しが入りやすい。逆に同水準にあっさり戻されてもみ合うようだと、大台割れも。
今週発表される指標の中で、期待されているのが12日に発表される7月の米小売売上高。6月がかなり好調となったことで、反動での低水準での伸びが予想されているが、個人消費と密接に関係する雇用統計の結果が強かっただけに、こちらも事前見込みを上回る可能性。
弱かった第2四半期GDPについても、個人消費は堅調で、投資関連が相当厳しい状況となったGDPをなんとか踏みとどまらせた原因となっていた。今後も個人消費は何とか堅調を維持との見通しが広がると、ドルの年内利上げ期待に一役買い、ドル買いにつながりそう。結果次第では中期的に105円台もという流れに。
11日のNZ中銀理事会(用語説明1)は、利下げが確定的。市場の注目は年内追加利下げに向けて、声明などでどこまで示唆してくるのかがポイントに。追加利下げをしっかり示してくると、NZドル売り。70円が大きなターゲット。
用語の解説
NZ中銀理事会 | NZの中央銀行であるNZ準備銀行(RBNZ)がNZの金融政策を決定するために開く会合。クリスマスから1月にかけては同国の夏休みシーズン(南半球のため、日本とは季節が逆)となるため、理事会は行われず、他の先進国より1回少ない年7回の会合となっている。なお、現在のNZ中銀総裁のウィーラー氏は世界銀行で専務理事を務めていたことがあるなど、グローバルなキャリアを経ており、国際情勢に精通している。 |
---|---|
米小売売上高 | 米国商務省経済分析局(BEA)が米国の小売店での売上について、サンプル調査を行い発表する統計。米国はGDPの中で個人消費が占める割合が他の国に比べて大きく、7割程度に達する(日本は6割程度)。その個人消費動向をまともに反映することもあり、注目度が高い指標となっている。全体の数字だけでなく、販売される商品の種類によって項目ごとに発表される。全体の数字にもっとも寄与する自動車及び同部品に関しては、個人消費動向以降にその月のキャンペーン動向などに影響を受けるため、同項目を除いたコア部分にも注目があつまる。 |
今週の注目指標
NZ中銀理事会 8月11日06:00 ☆☆☆ | 今回の利下げ実施はほぼ織り込み済み。サプライズがあるとすると、0.25%ではなく、0.50%の利下げに踏み切った場合。また、金利面での織り込み度合いを見ると約7割の参加者が年内追加緩和を期待している。 今回大幅利下げに踏み切った場合や、年内の追加緩和期待が拡大するような状況になると、NZドル円は71円のサポート割れが視野に。 |
---|---|
米小売売上高(7月) 8月12日21:30 ☆☆☆ | 米国のGDPの約7割を占める個人消費動向を示した指標。5日に発表された7月の米雇用統計に続いてこの指標も強くなると、米個人消費への期待感が広がり、ドル買いにつながるとみられる。変動の激しい自動車を除いたコア部分が、前回並みの数字を示してくると、かなりのドル買い材料で、中期的に105円台に戻す動きへのきっかけとなる可能性も。 |
米ミシガン大学消費者信頼感指数(8月・速報値) 8月12日23:00 ☆☆ | ミシガン大学のサーベイ調査センターによる消費者の消費動向(センチメント)を調査したもの。毎月10日前後にその月の速報値が出るという非常に発表の早い指標。今回は堅調な雇用情勢などを意識し、前回を若干上回るという期待になっている。期待通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドルの買い支え材料に。指標結果のみで大きく相場を変動させるほどではあまりないが、市場がやや神経質になっているだけに要注意。前回の反動もあって大きく崩れるようだと、100円を試すきっかけに。 |
免責事項
本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。
Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.
auじぶん銀行からのご注意
- 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。
以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。