2016年08月15日号

(2016年08月08日~2016年08月12日)

先週の為替相場

米景気への警戒感続く

 8日からの週は、5日金曜日の米雇用統計が好結果となったことで、ドル売りの動きが収まって始まった。100円台をトライしていたドル円は、一時102円台半ばまで値を戻すなど、週の序盤はドルの買戻しが優勢な展開に。

 先月末に発表された米4-6月期GDPの想定外の弱さを受けて米国の早期利上げ期待が大きく後退していたが、雇用統計の好結果を受けて利上げ期待が少し回復した格好。もっとも年内利上げ期待がしっかりと優勢になるほどの勢いは見られず、ドル円も102円台からは売りが入ってもみ合いとなった。

 その後は米経済指標の弱さを受けてドル売りがやや優勢となる展開。

 9日に発表された4-6月期の米労働生産性が予想外のマイナスとなり、一気にドル売りが進行。堅調なNY原油先物市場動向などに支えられ、その後ドルが買い戻される場面が見られたものの、15日に発表された米小売売上高と米生産者物価指数が予想を大きく下回り、再びドル売りが強まるという流れに。

 もっとも、一時100円台をトライしていたドル円も、売りが続かず101円台に戻して週の取引を終えるなど、総じて動きが続かなかった。

 日本がお盆の週、海外も本格的なサマーバケーションシーズンということで、取引参加者が世界的に相当少なく、動きに勢いを欠いた格好。

 もっとも金利面から見た年内の利上げ期待がまだ半分を下回っており、米景気への警戒感が残ったままの流れ。若干ドルの頭の重さが印象的な展開となっている。

 

今週の見通し

 

 お盆明けとなる週の半ば以降からどこまで取引量が戻ってくるのかがポイントに。もっとも、日本以外もサマーバケーションシーズンであり、世界的に取引量が少ない期間はまだ続くだけに、積極的な取引は手控えられる可能性が高い。8月末のジャクソンホール会議(今年は25-27日)(用語説明1)あたりから本格化する秋相場へ向けて、準備段階の週となりそう。

 ドルは基本的に頭が重い。先月末の米4-6月期GDPの弱さ以降、早期の利上げ期待が後退しており、ドルの頭が抑えられている。5日の米雇用統計、非農業部門雇用者数の好結果を受けて、少し回復傾向がみられたが、9日に発表された4-6月期労働生産性(用語説明2)が予想に反して前期比年率-0.5%と3四半期連続でマイナス圏に落ち込んだことで頭が抑えられ、その後再び上値をトライも、小売売上高の弱さなどにドル売りが広がるという流れで、米景気への警戒感が継続している。

 お盆前後に100円割れを積極的に試す展開にはならなかったものの、頭の重さは印象的となっており、当面は戻り売りが出やすい状況に。

 自動車大手などが社内レートを引き下げた関係で、実需筋からの売りも比較的低い水準から入りやすくなっており、頭を抑える展開に。

 100円割れをトライする展開が予想される。もっとも、大台割れを大きく売り込むまでの勢いは見えず、頭の重いレンジ取引といったところか。

 クロス円も軒並みの軟調地合い。特にインフレ、雇用などの指標を控える英ポンドに対する円買いの動きが警戒されるところ。英国は年内追加利下げがかなり織り込まれつつあり、ポンド売りが入りやすい地合いになっている。130円割れが常態化すると、もう一段の下げまで入る可能性。中長期的なターゲットは120円近辺まで。

用語の解説

ジャクソンホール会議 カンザスシティー連銀が主催し、ワイオミング州ジャクソンホールで毎夏行われるシンポジウム。世界各国の中銀首脳や著名な経済学者などが集まり、経済・金融政策についての討議が行われる。FRB議長は同シンポジウムで来年にかけての金融政策の見通しなどについて発言することが一般的となっており、今後の金融政策動向の大きなヒントになるということで、世界中からの注目を集めている。昨年、イエレンFRB議長は同シンポジウムを欠席したが、今年は出席が発表されている。
米労働生産性 米国労働省労働統計局(BLS)が米国内企業の労働生産性を四半期ごとに調査し、指数化した指標。労働生産性とは、投入した労働一単位当たりの生産量のこと。景気拡大期に一般的に上昇するといわれている。もっとも、先週9日の発表は予想外のマイナスとなった。3四半期連続のマイナスは70年代以降初めて。先月末に発表された米4-6月期GDPでも示されたように設備投資が鈍いことなどが背景にあるとみられている。

今週の注目指標

日本4-6月期GDP(第一次速報値)
8月15日08:50
☆☆☆
 昨年10-12月期は前期比-0.4%、前期比年率で-1.7%と大きく落ち込んだ日本のGDPであるが、前回の1-3月期は前期比+0.5%、前期比年率+1.7%とかなりの高水準で2四半期ぶりにプラス圏を回復した。もっとも、前期のGDPはあまりにも弱かった10-12月期の反動や、うるう年効果などが押し上げ要因といわれており、4-6月期の結果に注目が集まっている。
 予想は前期比+0.2%、年率換算で+0.7%とまずまずな水準。今後のさらなる追加緩和期待を後退させるほどではないが、過剰な期待を抑える結果になる可能性も。予想を大きく超えて高水準を記録すると、緩和期待が後退し、ドル円が100円を試すきっかけになる可能性も。
英消費者物価指数(CPI・7月)
8月16日17:30
☆☆
 今月の英中銀金融政策会合(MPC)において、量的緩和の拡大にまで踏み込むかなり大胆な緩和策をとった英国。さらに年内の追加利下げの可能性を示唆しており、今後に向けて英国の重要指標への注目が高まっている。インフレファイターとして知られた英中銀にとって、もっとも重要な指標であるといわれていた英CPIについては、ブレグジット後の英経済の混乱や低迷回避が最大の命題となっている現状では、少し重要度を落としている。とはいえ、今回の指標はブレグジットの影響がまともに出た最初の結果だけに、状況変化への注目度は高い。予想を大きく下回った場合は、追加緩和へのハードルが大きく引き下がったとみなされ、ポンド円は130円の大台をしっかり割り込んで売りが強まる可能性。
米消費者物価指数(CPI・7月)
8月16日21:30
☆☆
 米FRBの二大命題は雇用の最大化と安定した物価。4-6月期GDPの弱さを受け早期の利上げ期待が大きく後退した状況となっているが、今月5日に発表された7月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく上回り6月に続いて高水準を記録。今週発表されるCPIも予想を上回る高水準を記録すると、年内の利上げ期待が再び回復してくることも期待される。この場合ドルにとって中期的に大きな材料となる。105円に向けた大きな流れのきっかけとなる可能性も。

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