2016年08月22日号

(2016年08月15日~2016年08月19日)

先週の為替相場

ドル円一時99円台半ばへ

 15日からの週は、ドル円が一時99円台半ばを付けるなど、ドル安円高が進行する展開となった。

 12日に発表された米小売売上高が予想外に弱く、年内の利上げ期待が後退する形でドルが売られた流れが継続した格好。英ポンドが英生産者物価指数(PPI)や小売売上高の好結果で対ドルで買い上げられたことも、ドル全面安の流れに寄与した。

 ダドリーNY連銀総裁(用語説明1)が16日、利上げに時期がじわじわと近づいている。9月の利上げはありうると発言。地区連銀総裁からの強気な発言は珍しくないが、NY連銀総裁は金融政策の実務を担当することもあり、持ち回りで投票権を持つ他の地区連銀総裁とは違い、常任で投票権を持ち、FOMC副議長も兼ねる重職。またダドリー総裁自身が慎重な姿勢で知られているだけに、意外な強気(タカ派)発言となった。

 同発言で少し戻される場面がみられたが、週の後半にかけて再び100円を割り込むなど、流れは変わらず。17日のFOMC議事要旨において、追加利上げに向けて、物価がターゲットである2.0%に戻るもう少し明確な状況を確認したいなど、慎重な意見がみられたことで、利上げ期待が盛り上がらず、ドル売りが広がった格好に。

 その他目立ったのが原油の上昇。サウジアラビアの石油相が9月のOPEC非公式会合(増産凍結協議)(用語説明2)への出席を前向きに検討と発表したことで、原油の買戻しが優勢に。石油掘削設備の稼働リグ数が下げ止まるなど、ここにきて石油市場環境は改善がみられており、原油安の動きが収まると期待されている中で、サウジアラビアの姿勢が大きなサポートとなった。

 カナダドルは対米ドルを中心に上昇。対円でも下げ止まるなど、買いが優勢に。

 

今週の見通し

 

 25日から27日にかけて米ワイオミング州ジャクソンホールで行われる経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会議に市場の注目が集まっている。昨年は同会議を欠席したイエレン議長も、今回は出席予定となっており、26日に講演を行う。金融政策動向が主テーマとなる予定で(正式な議題、その他スケジュールは慣例通り25日に発表)、今後の利上げ時期を見越す最大のイベントとなっている。

 先週100円を一時割り込んだドル円は、週末のジャクソンホールまでは様子見ムードが広がりそう。戻りが相当鈍くなっているが、99円台に入ると売りがやや鈍るなど、突っ込んだ動きにも慎重な姿勢がみられる。浅川財務官などからも為替への警戒感が示されており、円安、円高ともにやや動きにくい。100円を挟んだ水準でのもみあいが広がりそう。

 ジャクソンホールでは、イエレン議長が利上げにどこまで明確なメッセージを示すことができるのかがポイントに。先週はダドリーNY連銀総裁が9月の利上げの可能性について言及した。もっとも議事録では利上げに慎重なメンバーの存在も示されており、議長がどこまで踏み込んで発言してくるのかが注目に。

 講演によって現状ではぎりぎり少数派となっている年内の利上げ期待が大勢を占めるような状況となると、ドルには大きな買い材料に。直近頭を抑える102円-103円の水準を超えていくきっかけになりそう。

 原油高の動きは継続を期待している。短期的な調整意欲が強いだけでなく、先週のサウジアラビア石油相の姿勢を受けて、中期的にも原油高の動きが広がる可能性。50ドルの大台をしっかり超えて、55ドルの大台を付けるようだと、カナダ円、豪ドル円などに上昇期待。カナダ円は中期的に80円を目指す期待も。

用語の解説

NY連銀総裁 NY連銀は米国の金融政策の実務を担う機関ということもあり、他の11地区連銀が持ち回りで年によって投票権の有無が決まるのに対して、常任で投票権を有するなど、特別な立場にある。副総裁もFOMCにオブザーバー参加するほか、総裁はFOMCの副議長職を兼ねる(FRB副議長とは別職)。ダドリー総裁はそうした立場もあって、比較的慎重な発言を行うことが多くみられる。
OPEC非公式会合 OPEC(石油輸出国機構)のサダ議長(カタール産業相)は、8月に入って、9月下旬にOPEC非公式会合をアルジェリアで実施することを発表した。6月の定例総会では増産凍結の合意に至らなかったOPECであるが、同会合では合意もしくは合意に向けた前進があるのではと期待されている。ロシアは現水準での増産凍結協議再開の必要はないとの認識を示しているが、アルジェリアで加盟国の一部と協議する可能性については否定しなかった。増産凍結に反対してきたイランも、経済制裁以前の生産が戻ってきており、現行水準での凍結であれば前向きな姿勢を示すとみられる。9月26日から28日までアルジェリアで国際エネルギーフォーラム(IEF)が開催されるため、非公式会合も同フォーラムに合わせて行われるとみられる。

今週の注目指標

ユーロ圏PMI
8月23日17:00
☆☆
 23日に8月のユーロ圏主要国および全体のPMI(購買担当者景気指数)速報値が発表される。注目は16時半のドイツおよび17時のユーロ圏全体のPMI。英ブレグジットの影響で落ち込みが警戒された前回のPMIは、速報時点ではやや弱かったものの、改定値ベースで速報値からやや改善し底堅さを見せた印象。今回も前回とほぼ同水準が期待されている。予想を下回り、前回からはっきりと悪化すると、欧州通貨売りにつながる可能性も。ユーロ円は112円が大きなポイント。割り込むともう一段大きな下げも。
米第2四半期GDP(改定値)
8月26日21:30
☆☆☆
 先月発表された速報値は、事前見込みを大きく下回る弱いものとなり、米国の年内利上げ期待を一気に後退させる結果となった。その後発表された6月の貿易収支が予想以上の赤字拡大となるなど、今回発表される改定値はさらに厳しい数字が出てくると予想されており、予想は前期比年率+1.1%と速報値の+1.2%から下方修正と見込まれている。もっとも、今回予想外に弱い数字となった背景には在庫の減少が寄与した面が大きい。在庫統計は予想が難しく、ブレが大きいこともあり、予想外に改善している可能性はある。この場合、年内利上げ期待の回復を誘ってドル買いになる可能性。ドル円は102円超えを期待したい。
イエレンFRB議長ジャクソンホール講演
8月26日
☆☆☆
 カンザスシティ連銀が毎年主催してこの時期行われる金融経済フォーラム、いわゆるジャクソンホール会合では金融政策の今後について語ることが歴代のFRB議長の慣例となっており、注目を集めている。もっとも、基本的にハト派で慎重な姿勢が目立つイエレン議長だけに、利上げ時期などについては言及しない可能性が高い。市場は発言により利上げ期待を押し上げるような効果を期待している分、慎重姿勢を堅持すると、ドル売りが入る可能性も。99円台半ばを割り込んで売り込まれるきっかけとなりそう。

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