2016年08月29日号

(2016年08月22日~2016年08月26日)

先週の為替相場

イエレン議長講演受けて一気にドル高へ

 22日からの週は、25日から27日にかけて米ワイオミング州ジャクソンホールで行われたカンザスシティ連銀主催の金融政策シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会合をにらんだ展開となった。

 26日の日本時間午後23時から行われた同会合でのイエレン議長講演「Opening Remarks」への市場の注目が集まり、それまでは動きにくい展開に。

 ジャクソンホール会合では慣例的にFRB議長が今後の金融政策動向について発言することとなっており、追加利上げ時期をめぐって市場の思惑が錯綜する中で、大きな材料になると期待されていた。

 主要通貨は同講演まで軒並み狭いレンジでの取引が続いた。ドル円は100円台前半から半ばにかけての水準を中心にした推移が続いた。

 注目されたイエレン議長の講演では、焦点となっている追加利上げに関して「この数ヵ月で追加利上げへの説得力が増した」と発言。具体的な9月への言及はなかったものの、早期利上げに真向きな発言となった。

 発言直後、市場はドル買いで反応も、すぐに利益確定の動きが入るなど、当初の動きは限定的。しかしそこに報じられたのがフィッシャーFRB副議長(用語説明1)の発言「8月雇用統計はFOMCの決定に影響。イエレン議長の発言は9月利上げの可能性と整合」。

 イエレン議長、フィッシャー副議長の発言が合わさったことで、市場の早期利上げ期待が一気に強まり、ドル買いが広がる展開となった。

 

 ドル円は101円台後半まで上昇して、週の取引を終える展開となっている。

 イエレン講演がらみを除いて、唯一目立ったのが南アランドの急落。

 23日の海外市場で南アゴーダン財務相(用語説明2)に対して出頭命令が出されたとの現地ニュースサイトの報道を受けて、ランドが値を崩した。ゴーダン財務相は国税庁長官時代にスパイ部門設立に関与した疑いが出ており、逮捕に直面しているとの噂が以前から出ていた。南アの財務省に関しては、昨年12月に当時のネネ財務相が更迭され、大統領に近しいパンルーエン議員が任命されたものの、市場の反発によるランド売りや南ア株売りが進み、わずか二日でゴーダン現財務相に交代するなど、混乱の記憶が新しいだけに、市場が神経質に反応した模様。

 

今週の見通し

 

 8月最大の注目材料であった先週金曜日の米ワイオミング州ジャクソンホールで行われた経済シンポジウムでのイエレン議長講演。この議長講演及びその後の副議長発言を受けて一気に進んだドル買いがどこまで継続するのかが今週の注目ポイントとなる。

 基本的にはこのドル高の流れは、今週も継続すると期待している。

 ドル円に関していうと、102円に大手自動車メーカーの社内レートが定められているなど、このあたりから本邦輸出勢を中心にした実需の売りが並ぶ水準となっている。そのため金曜日の上昇が102円手前で止められるなど、一気に上昇するには厳しい水準となっている。

 ただ、これまでの動きの中で100円割れのしっかりさが意識されており、短期的にも買いやすい局面となっていることもあり、上昇トレンドへの期待感が強まっている。

 ブレグジット後、金利市場から見た織り込み度合いの確率は一時はゼロ%に近づき、その後少し回復したとはいえごく少数派にとどまっていた。しかし今回の発言を受けて9月の利上げ見通しは33%程度まで大きく回復している。こうした金融政策の見通しの変化は、相場に対して中長期的に大きな影響を与えるだけに、金曜日及び週明けすぐの動きだけで、織り込みが済んだとみるにはまだ早いと考えられる。米雇用統計の発表までは振幅を繰り返しながら、102円台定着からさらに上を狙う展開が予想される。

 今週最大の注目は、金曜日の米雇用統計(8月)。フィッシャーFRB副議長発言でも言及された今週の数字が堅調なものとなると、9月の利上げ期待はもう一段強まる。

 非農業部門雇用者数の予想は前月比+18.0万人と、前回の+25.5万人、前々回の+29.2万人よりは鈍い。とはいえ、前回、前々回とも事前見通しは今回とほぼ同水準であった。今回も予想を超えて伸びる可能性は十分にある。

 直近2回の伸びには届かなくても、節目の20万人を超えてくるようだと、雇用市場の堅調さが印象付けられ、9月の利上げの可能性が一気に強まる。この場合ドル円は103円に向けた動きを見せると期待される。

 予想を上回り、前回並みの25万人超えとなるようだと、大きなターゲットである105円まで視野に入ってくる。

 逆に反動が出て弱い数字が出てくるようだと、失望感が一気に広がる。15万人を割り込むようだと、100円台に戻される可能性も。

用語の解説

フィッシャーFRB副議長 スタンレー・フィッシャーFRB副議長。72歳。マサチューセッツ工科大学教授を経て、世界銀行のチーフエコノミスト、IMFの筆頭副専務理事などを歴任。その後民間銀行を経てイスラエル中銀総裁を務め、2014年からFRBの副議長職にある。
 世界的な金融危機に際してイスラエル中銀総裁として危機を乗り越えた手腕などが評価されており、世界銀行、IMFなどでのキャリアもあって、世界の金融情勢を熟知したFRBの重鎮と市場は認識している。
南ア財務相 南アフリカのズマ大統領は昨年12月9日に当時のネネ財務相を更迭。財政再建を施行し歳出削減を進めてきたネネ氏と大統領との対立が噂された。大統領はネネ氏の後任として、ほぼ無名であったバンルーエン議員を任命。しかし、市場はこの決定に反発。投資資金が南アから一気に流出したこともあり、わずか二日で過去に財務相を経験していた(2009年-2014年)ゴーダン協調統治・伝統業務相(当時)を新財務相に任命した(バンルーエン氏はゴーダン氏の後の協調統治・伝統業務相に)。しかし、ゴーダン財務相には国税庁長官時代にスパイ部門設立に関与したという疑いが南アの検察より掲げられており、これまでも逮捕のうわさなどが出ていた。

今週の注目指標

中国製造業PMI(8月)
9月1日10:00
☆☆☆
 前回7月分の数字は中小企業などからの結果が厳しく、予想外に悪化。好悪判断の境目である50も割り込む49.9となった。同日発表された非製造業は53.9と6月から上昇したこともあり、中国経済の鈍化懸念にはそれほど繋がっていないが、50割れの状況が続くようだと、懸念材料となる。今のところ予想は50.0と節目の水準まで回復の見込み。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、対中輸出などへの期待感から豪ドル円などに買いが入る可能性。ターゲットは78円。
米ISM製造業景気指数(8月)
9月1日23:00
☆☆☆
 7月分の数字は、3か月ぶりに前回値を下回る結果となったが、好悪判断の境目である50は5か月連続で上回り、米景況感の堅調地合いを印象付けた。今回8月分の予想は52.2と、2か月連続での悪化見込みとなっているが、依然として50は上回るという見込み。予想前後の数字が出てくると、相場への影響は限定的か。予想および前回値を上回る高結果が出てくると、翌日の雇用統計に向けて明るい材料となり、ドル買いが入る可能性。また、前回は50を下回った雇用部門の数字が50を回復するなど、内容も強めに出てくると、雇用統計前にポイントとなっている102円を超えるような動きが入る可能性も。
米雇用統計・非農業部門雇用者数(8月)
9月2日21:30
☆☆☆
 数ある米国の経済指標の中でも、最も注目度が高い指標の一つである雇用統計。年内利上げに向けて重要なカギを握ることもあり、その注目度はいつも以上に高まっている。直近2回続けて予想値を大きく上回り高水準を記録した非農業部門雇用者数(NFP)は、反動もあって前月比18.0万人が予想値となっている。もっとも、6月分、7月分はともに同水準の事前予想に対して、25万人超の高水準を記録した。今回も予想を大きく上回るようだと、早期利上げ期待が一気に広がり、ドル円が105円のターゲットを目指していく大きなきっかけとなる可能性も。

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