2016年09月05日号

(2016年08月29日~2016年09月02日)

先週の為替相場

雇用統計弱めも、ドル高基調継続

 29日からの週は、ドル高円安が一気に進行する展開となった。8月26日に米ワイオミング州ジャクソンホールで行われたカンザスシティ連銀主催の金融政策シンポジウム(ジャクソンホール会合)で行われたイエレン議長講演において、早期利上げに前向きな姿勢が示されたこと。講演後にフィッシャー副議長が議長講演は9月の利上げの可能性に整合性と発言したことなどを受けて、ドル買いが進む流れが継続した。

 年内の利上げ期待が広がり、金利市場での織り込み度合いから見た利上げの確率的には、12月の利上げが本線となっている。ブレグジット後は年内の利上げ期待が大きく低下していただけに、ここにきての状況の変化に、ドル買いが強まっている。9月の利上げについても3割程度の織り込みまで見通しが強まっており、短期的なドル買いを支える結果に。

 また、クロス円ではやや円安が優勢に。FOMCと同じ日に行われる日銀金融政策決定会合(用語説明1)での追加緩和見通しなどが、円売りを誘う結果に。

 注目された2日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想の前月比18.1万人増に対して15.1万人増にとどまった。また失業率、平均時給なども予想より弱く、全体に鈍い結果に。これを受けて発表直後はドル売りも、すぐに切り返して、ドル円が高値を更新するなど、ドル買いの基調が継続した。

 雇用統計を受けても年内の利上げ見通しが本線という状況が変わらず、ドル買いの勢いが続いた。9月の利上げについてはさすがにいったん期待値が下がったが、これが米株や欧州株の上昇を誘い、円売りが入ったことも、ドル円にとっては買い材料に。

 その他目立ったのはポンドの上昇。1日発表の8月の英製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想(49.0)や前回値(48.3)をはるかに上回り、好悪判断の境目である50も超える53.3の好結果となるなど、ここにきて英指標が強めに出ており、ブレグジットの悪影響への警戒感が後退していることが、ポンドの買いを誘っている。

 ポンド円は先月半ばからの上昇基調が継続し、138円台後半までとここ3週間で10円近い上昇を記録。利上げ期待でドルがほぼ全面高になる中、ポンドだけは対ドルでも1.30台から1.33台まで上昇と、堅調地合いを見せている。

 

今週の見通し

 

 当面のドル高円安基調継続が期待されている。

 米国の利上げ期待が広がっており、ドル買いの流れが止まらない。週末から株高の動きが広がっていることも、円安を誘い、ドル円にとっては買い材料に。

 米雇用統計が期待外れに終わったものの、ここ3か月の平均でならすと、決して弱い数字ではなく、9月の利上げも十分に可能という思惑が、ドルを支えている。

 今週はそれほど目立った米国の指標発表や講演などのイベントがなく、流れが一転する材料に欠けていることも、現状のドル買い基調継続の期待につながっている。

 ドル円に関しては105円手前に売りが残っているが、地合いが強い分、もみ合いから上値を試す可能性は十分にありそう。105円超えも意識に入れておきたい。

 ユーロ円や豪ドル円などクロス円も基本的には上値を意識。リスク警戒感の後退が、円安につながっている。ユーロ円は7月に上昇を止めた118円台前半が大きなポイント。同水準を超えると、かなり大きな上昇トレンドが意識される。いったん手前で止められる可能性が高いが、超えてくるようだと今月中の120円超えも意識したい。豪ドル円は80円がターゲット。

 このところ上昇が目立つポンドは、高値警戒感がさすがに出ているが、こちらも流れは上方向で継続。140円が目先の目標。ここを超えると、ブレグジット後の大幅安以降の大きなポイントである145円が見えてくる。

 市場の次の注目は9月20日、21日に開催される米連邦公開市場委員会と日銀金融政策決定会合。現状で米国の9月の利上げ確率は約30%程度とみられている。今週はそれほど目立った材料がないが、株式市場動向や、地区連銀総裁発言などで、この見通しに変化が出てくるようだと、ドル円も大きく動く可能性。

 なお、流れは上方向とみているが、調整の動きには注意したい。ドル円の105円は心理的にもかなり意識されている水準で、手前から売り注文がかなり入っていると予想されている。上値を抑えられる展開が続き、短期筋が調整に回る可能性は十分にある。

用語の解説

日銀金融政策決定会合 日本銀行が金融政策の方針を決定する会合。総裁、2名の副総裁、6名の審議委員からなる9名の政策委員の多数決で金融政策が決定される。昨年までは年14回のペースで実施されていたが、今年から、米、英などと同じく年8回、2日間の集中審議を行っている。
 今月20日、21日の会合については前回の会合において、現状のマイナス金利付き量的・質的緩和の総括的検証を行うと予告されており、注目が集まっている。検証方針発表後、一時的に現状の緩和策の見直しがあるのではとの思惑が広がったが、黒田総裁をはじめ関係者は緩和継続の方針に変更はないと否定。追加緩和については、可能性が意識されている。
ローゼングレン・ボストン連銀総裁 エリック・ローゼングレン・ボストン連銀総裁。ウィスコンシン大学で博士号をとった翌年からボストン連銀にエコノミストとして勤めるボストン連銀のプロパー。2007年より総裁職にある。FRB内部では比較的ハト派もしくは中間派と認識されている。もっとも、今年に入ってからは早期の利上げに比較的前向きな姿勢を示している。

今週の注目指標

米ISM非製造業景気指数(8月)
9月6日23:00
☆☆☆
 1日に発表されたISM製造業景気指数は、予想の52.0、前回7月分の52.6を大きく下回る49.4の弱い結果に。内訳の中でも、新規受注や生産、雇用など重要視されている数字が弱く、今後の米景気回復への警戒感が一部で広がった。ドル高や原油のさえない状況などが、製造業の景況感に影響したとみられている。今週発表される非製造業は予想が55.0と前回の55.5よりは鈍化も、かなりの高水準。予想前後の数字が出てくると9月の利上げに向けてのハードルが後退という見方が広がり、ドル買いにつながる可能性も。ドル円が105円を超えていくきっかけになる可能性も。
ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁・ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演
9月6日・9月9日
☆☆
 今週は6日にウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁、9日にローゼングレン・ボストン連銀総裁(用語説明2)の講演が予定されている。今月20日21日のFOMCを前に、追加利上げの実施についての思惑が広がる中、FRB要人の発言に対する注目度が高まっている。サンフランシスコ連銀は、イエレン議長が前に総裁を務めていたところであり、ウィリアムズ現総裁とイエレン議長の関係も深いとみられているだけに、同総裁がどこまで利上げに前向きな姿勢を示すのかが注目される。ローゼングレン・ボストン連銀総裁は、FRBの中でも比較的中立色が強いとみられているだけに、同総裁が利上げに積極的な姿勢を示すと、FRB全体のタカ派姿勢が意識される。両地区連銀総裁の発言により、米国の利上げ期待が強まると、ドル買いの動き。ドル円は105円を超えて上昇する流れが期待されるところ。
ECB金融政策発表
9月8日20:45
☆☆
 ECB(欧州中央銀行)の金融政策発表。市場は現状維持見込みで基本的に一致しており、波乱要素は少なそう。発表後、日本時間21時半ごろから行われるドラギ総裁会見において、今後の追加緩和の見込みなどについて、どこまで言及があるのかなどが注目ポイントに。また、ブレグジット問題などについてのコメントなども注目されるところ。会見の結果、追加緩和期待が強まるようだと、ユーロ売り。利上げ期待の強い米国との対照的な状況が警戒される可能性も。ユーロ円のターゲットは115円。

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