2016年09月12日号

(2016年09月05日~2016年09月09日)

先週の為替相場

一時ドル安進行も持ち直す

 5日からの週は、ドル円が一時101円を割り込むなど、大きくドル安円高が進む場面が見られたが、その後値を戻す展開となった。

 注目された5日の黒田日銀総裁の会見では、現状のマイナス金利付きの質的量的緩和について、質・量・金利面での拡大は可能との発言があったものの、9月の緩和に向けた具体的な示唆がなく、市場は円買いで反応した。

 さらに、6日の米ISM非製造業景気指数が51.4と予想(54.9)を大きく下回り、2010年2月以来の低水準に落ち込んだことで、9月の利上げ期待が一時大きく後退し、ドルが全面安の展開となった。

 しかし週の後半にかけては、一転してドル安に対する調整が目立つ展開となった。米週間石油在庫統計が予想以上に在庫の減少を記録し、原油が大きく買い戻される展開に。原油高による物価上昇圧力から、利上げへのハードルが下がるとの思惑もあり、ドルは買い戻しが進んだ。

 ドル円に関しては9日に一部報道が今月の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利付き質的・量的緩和の総括的検証に関して、マイナス金利の政策効果が金融機関の収益悪化などの副作用より大きいとの結果をまとめる方向で調整に入ったと伝え、円売りが一気に広がった面も。ドル円は103円台を一時回復する動きがみられた。

 もっとも週末にかけてはNY原油が一転して値を崩し、ドル円も高値から値を落とすというあわただしい展開に。

 ユーロやポンドなど欧州通貨は、ドル円の101円割れに対円で値を落とした後、少し値を戻してもみ合った。

 NY原油が一時大きく上昇も週末の大きく値を崩したことで、豪ドル円などは週末にかけて値を崩した。豪ドル円はドル円の上昇につれて79円台まで上昇していたが、ISM後の大きな円高に77円台前半に。その後いったん78円台後半まで値を戻したものの、原油安からの資源国通貨売りの動きに、ISM非製造業景気指数後の安値を割り込み、77円近くまで値を落とした。

 NY原油に関しては、在庫減が買い材料となったものの、北米の鉱山での稼働リグ増加に、供給回復期待強まり、一気に値を落とす展開となった。

 

今週の見通し

 方向感がつかみにくい展開となっている。

 米国の利上げ期待が根強く、ドルには底堅さ。直近の経済指標は弱いものの、米FRB要人は利上げに前向きな発言に終始しており、市場の9月利上げ期待も、ISM直後の15%前後から25%前後にまで戻すなど、期待感が継続。ドル買いにつながっている。

 先週一時101円割れまで円高が進行したことで、円買いに対する一服感も出ており、ドル買い円売りが進みやすい面も。

 もっとも週明けはややドル安円高で始まっている。9月11日に米国で行われた911の追悼式典において、民主党大統領候補クリントン氏が体調を崩して搬送されたとの方向に、いったんは円高が進行したが、その後容体が落ち着いたとの報道もあり、値を戻す展開に。もっとも、市場はトランプ・リスク(用語説明1)を再認識した格好となっている。

 体調不安が強まるようだと、ドルは大きな売り圧力を浴びることになる。今後の状況を確認したいところ。

 米国の利上げ期待については、13日以降FOMC前のブラックアウトルール(用語説明2)に入るため、12日のロックハート・アトランタ連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ブレイナードFRB理事の講演を最後に、要人からの発言が出てこない。期待感が残りつつも、12月本線は変わらずという状況が続きそう。

 上値、下値ともに状況次第ではあるが、大きな流れとしてはドル買い円売りがやや優勢か。利上げ期待の継続が最終的には相場にかなり効いてくると予想される。103円台には売りが並んでいるが、しっかり大台に乗せてくると、流れが変わり、大きなターゲットである105円を意識する展開も。

用語の解説

トランプ・リスク 11月に行われる米国の大統領選挙は共和党候補であるトランプ氏と民主党候補であるクリントン氏の事実上の一騎打ち(少数政党などから他にも立候補者はいる)となる。著名な実業家であるトランプ氏であるが、メキシコとの国境にメキシコの負担で壁を作ると主張するなど、周辺国を含めた他国への攻撃的な発言が目立っており、もし大統領になった場合、米国の政治経済への不透明感が強まると予想されている。対イスラム圏への厳しい発言も目立つことから、オイルマネーの米国からの流出なども警戒されており、大統領になる可能性が強まるとドル売りが広がるという状況が生じている。
ブラックアウトルール 中央銀行の金融政策を決定する会合のメンバー(米国ならばFOMC参加メンバー、日本ならば日銀金融政策決定会合参加メンバー)が、政策会合前後の一定期間金融政策に関する発言を禁じられるというルールのこと。
 米国の場合、FOMCが開催される前週の火曜日からFOMC終了までがブラックアウトルールに基づいた期間となる。日本の場合、金融政策決定会合開始の2営業日前から会合終了当日の総裁会見終了時までが相当する。

今週の注目指標

ロックハート・カシュカリ・ブレイナード講演
9月12日
☆☆☆
 現地時間13日からFOMC(9月20日・21日開催)前のブラックアウトルールに相当する期間に入るため、12日がFRB要人による発言が確認できるFOMC前最後の機会となる。日本時間12日21時05分にロックハート・アトランタ連銀総裁、13日2時にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、同2時にブレイナードFRB理事が講演を予定している。直近の米主要指標は軒並み弱めとなっているが、FRB要人は今のところ早期利上げに前向きな姿勢を崩していない。ブラックアウト前まで同姿勢が貫かれるようだと、9月の利上げ期待が拡大し、ドル買いが入る可能性。103円台に並ぶ売りを崩し、FOMC前に大きなターゲットである105円をトライにいくきっかけとなる可能性。
米小売売上高(8月)
9月15日21:30
☆☆☆
 雇用統計、ISM製造業/非製造業景気指数と、米国の重要指標が軒並み弱く出たことにより、市場は米国の早期利上げへの慎重な見方を一時強めた。今週は米国のGDPの約7割を占める個人消費の動向を表す小売売上高が発表される。
 予想は全体が-0.1%と、弱かった前月の0.0%からさらに悪化の見込み。ただ、これは自動車部門の不振の影響が大きいとみられている。米国の新車販売は直近の力強さの反動もあって、8月は日米主要6社がすべて前年同月比割れとなるなど、厳しい状況であった。小売売上高の自動車及び同部品の項目もかなりマイナスになると予想されている。ただ、自動車販売は月ごとのブレが大きいため、単月の状況への反応は鈍い。自動車を除くコア部分は+0.2%と、前回の-0.3%から改善の見込み。コア部分が予想通りもしくはそれ以上の好結果が出てくると、FOMC前の主要指標の好結果として、市場は大きく反応してくる可能性がある。ドル円は103円台にしっかり乗せて、104円から105円にかけての上値抵抗水準を試すチャンスも出てくる可能性。
米消費者物価指数(CPI・8月)
9月16日21:30
☆☆
 米国の早期利上げ期待が強まる中、物価情勢が重要な材料として意識されている。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであるが、同指標はCPIとの相関が高く、CPIのほうが発表が早いこともあり、今週発表のCPIへの注目が集まっている。予想は総合が前年比+1.0%と前回の+0.8%から上昇。食品・エネルギーを除くコアが前年比+2.2%と前回と同水準という状況。予想前後の数字が出てくると、9月利上げ実施へのハードルとはならないと見られ、ドル買いの材料となる。FOMC前にドル円が103円台をしっかりつけて上昇していくきっかけとなる可能性も。

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