2016年09月20日号

(2016年09月12日~2016年09月16日)

先週の為替相場

ビッグイベント控え、方向感出にくい

 12日からの週は、ともに20日、21日の日程で開催される日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にして、方向感が出にくい展開となった。今後の相場展開を大きく左右してくる可能性が高い両イベントについては、見通しが分かれる状況となっており、発表前の段階で突っ込んだ売り買いがやりにくい面も。

 13日からのブラックアウトルール適用期間(FOMC前週火曜日から、FRB関係者が金融政策に関する発言を禁止される期間)を前に、ブレイナードFRB理事が早期利上げに慎重な姿勢を示したことや、15日の米小売売上高(8月)が予想外の弱さを示したことで、9月の利上げ期待は一時ほぼ払しょくされるところまで後退。ドル売りが広がる場面が見られた。もっとも、週末を前に8月の米消費者物価指数の強さに利上げ期待がやや回復。ドルの買い戻しが入るという展開に。

 もう一つの注目材料、日銀金融政策決定会合については、週初はマイナス金利の深堀り期待が強まり、円売りが入る場面が見られたが、追加緩和期待の実効性に対する懸念が海外勢を中心に広がり、円売りの動きは抑えられた。また、9月の緩和は見送られるのではとの思惑も根強く、円売りを抑える格好に。

 15日に結果発表されたスイス中銀と英中銀の金融政策会合は、ともに事前見込み通り金融政策の現状維持となった。8月の会合で示された英国の追加利下げについては、今会合でも可能性が指摘された。直近の英指標の強さから声明でのトーンがもう少し強気になるのではとの期待が一部で見られ、ポンド売りの場面も影響は限定的。

 

 

今週の見通し

 直近最大のイベントである、日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果次第といったところ。

 FOMCに関しては、次期財務相の有力候補でもあるブレイナードFRB理事(用語説明1)がかなり慎重な姿勢を示したことや、小売売上高のコア部分の弱さを受けて7-9月期のGDP成長率への警戒感が広がったことなどが大きな重石となり、利上げ見送りで市場の見通しがほぼ一致する場面も見られた。

 

 もっとも、16日の米消費者物価指数(CPI)の堅調な数字は、利上げへのハードルを大きく下げた。米国のインフレターゲット(年率2.0%)の対象は、PCEデフレータ(用語説明2)でありCPIの数字が直接関係するものではないが、CPIコアの前年比が2.3%と、節目の2.0%を大きく超えてきている状況は、当局の対応を正当化するものとなりうる。金利面での織り込みを見ると、15%程度の利上げ見通しにとどまるなど、直近での利上げ期待はそれほど高いものではないが、完全に否定されているわけではないことに注意が必要。

  一方、日銀に関しては、据え置き、緩和の見通しがかなり分かれている。予想される緩和手段であるマイナス金利の深堀りに関しては、金融機関の収益悪化などのデメリットがかなり大きい。今回の会合で行われる総括的検証において、マイナス金利のメリットがデメリットを上回ることを確認し、今後、必要であれば深堀りを躊躇しない姿勢を改めて示したうえで、今回は深堀りを見送りといった展開を予想している。

 上記予想通り、米国、日本ともに金融政策を据え置いた場合、ドル安円高の方向が意識されるところ。日本は今後の追加緩和、米国は今後の追加利上げの期待が残る分、影響は抑えられるが、ドル円は100円を意識する開が予想される。

 上記見通し以外のケースも想定しておきたい。

 米国が利上げに踏み切ったケース。こちらはかなりのサプライズとなる。金利面での折り込みからの利上げ確率は現状で15%程度。据え置きを大勢が織り込んでいる分、ドルは大きく上昇すると想定される。日銀が据え置いた場合でも103円超えの動きが期待される。日銀が追加緩和に踏み切った場合は105円超えまで上昇の可能性も。

 米国が据え置き、日銀が追加緩和というケース。会合後の黒田日銀総裁会見で緩和に前向きな評価が示され、今後も緩和姿勢を強調してくるようだと、円売りがやや優勢に。ただ、実際にはさらなる深掘は難しいという見通しが市場で広がる可能性も高い。影響はある程度抑えられると予想される。103円トライ程度までは十分あると思われるが、更に上値を試すには、それ以外の材料が欲しいところ。

用語の解説

ブレイナードFRB理事 ラエル・ブレイナードFRB理事。イエレン議長などを含めても現在5名しかいない常勤のFRB理事の一人(理事の定員は7名だが、2名欠員)。クリントン政権で大統領副補佐官、オバマ政権で13年まで財務次官を務めるなど、民主党との関係が深く、ヒラリー・クリントン候補が現状の見込み通り大統領になった場合、財務相の最有力候補の一人とみられている。夫はキャンベル前国務次官補。
PCEデフレータ 個人消費支出のデフレータ(名目と実質の差)。消費者物価指数と同系統の指標であるが、データソース、対象品目、算出方法、消費行動の変化の調整などに違いがある。PCEの方がより包括的な数値となっているが、算出がCPIよりも複雑で困難なため、発表はCPIよりも遅くなる。また、一般的にPCEの方がCPIよりも低くなる。
 米国が2012年に定めたインフレターゲットの対象はPCEデフレータ。また、変動の激しい食品やエネルギーを除いたコアデフレータも注目されている。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
9月20日・21日
☆☆☆
 日銀の金融政策決定会合が9月20日・21日に開催される。結果発表はお昼前後の見込み。今回の会合では現行の質的・量的・金利的緩和に関して、総括的検証が行われる。現状で当初の2年間での目標達成が難しくなっていることもあり、検証の結果、追加緩和に踏み切る可能性が意識されている。緩和となった場合、最有力候補となっているのがマイナス金利の深掘り。欧州の一部で日本以上のマイナス金利が採用されているが、預金金利のマイナス化が実施されていない日本でどこまで深掘りが可能化は微妙。金融機関等に考慮して深掘りを見送れば円買い。100円台トライへと向かいそう。緩和を実施した場合は円売りとなるが、同日開催とは言え時差の関係で発表が半日以上遅い米FOMCを前に、突っ込んだドル買いはやりにくく、短期的には103円近辺をターゲットに上値が限定的なものとなりそう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月20日・21日
☆☆☆
 先月のジャクソンホールでのシンポジウムを経て一時は9月の利上げ期待が強まる場面が見られたが、今月に入り、月初の雇用統計、ISM景況感指数、先週の小売売上高など、主要な米指標が軒並み予想を下回り、期待感が後退。今回は据え置き、12月の利上げ(11月は大統領選直前ということもあり、可能性が低いと見られている)に向けて、今後の状況を確認という流れが予想されている。据え置きの決定は売り材料であるが、ほぼ織り込みが済んでおり、影響は限定的。この結果だけで100円を割り込んで走るのは難しいか。
NZ中銀金融政策会合
9月22日06:00
☆☆
 主力生産・輸出品である乳製品価格に回復傾向が見られるなど、一時に比べてNZ経済への信頼感が強まっているが、同国としては低インフレの状況が続いていることもあり、今後の追加緩和期待は強い。今回に関しては専門家の味方は据え置きでほぼ一致しているが、金利市場の動向からはごく少数ながら利下げを見込む向きも。次回の会合での利下げに関しては、ほぼ五分五分となっており、今回の会合での声明などの結果次第で大勢が決まるとみられる。利下げ見通しが強まるようだと、NZドルは対ドル、対円で売りが強まる可能性が高い。この場合ターゲットは73円近辺が意識されている。

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