2016年10月03日号

(2016年09月26日~2016年09月30日)

先週の為替相場

材料多く神経質な展開に

 26日からの週は、多くの材料が出て神経質な展開を見せる週となった。

 まず注目されたのは、日本時間で27日午前(現地時間で26日夜)に行われた第一回米大統領選挙候補者TV討論会。トランプ候補が優勢に進めるとドル安リスクが高まるという懸念から、週明けからドル売り円買いが広がり、ドル円は100円台前半を付ける展開となり、討論会前には一時100.09円と100円割れに迫る場面も見られた。

 実際の討論会では終始冷静に議論を進めたクリントン候補が優勢であったとの見方が強まり、討論会中からドル高が優勢になったものの、101円まで戻しきれず、28日のOPEC臨時会合への警戒感が戻りを抑えた格好。

 OPEC臨時会合では8年ぶりの減産合意となった。サウジアラビアが減産に消極的な姿勢を示していたことから、合意成立は難しいのではとの事前の思惑が広がっていたこともあり、減産合意後はドル高円安の動き。頭を押さえていた101円をしっかり超えると101円台後半まで上値を伸ばした。

 しかし、102円手前の売りに頭を抑えられると、今度は140億ドルという巨額の和解金を米司法省から要求されているドイツ銀行(用語説明1)への信用不安が円買いを誘う展開に。ドル円は再び100円台へ。

 週末を前に、一部報道機関がドイツ銀行の和解金が当初要求額よりも低い54億ドル程度で合意するとの観測を示したことで懸念が一服。一転してドル買い円売りが広がって週の取引を終えた。

今週の見通し

 ドイツ銀行への懸念は一服も、週末の和解金報道に関しては当局者からの正式なコメントがなく、不透明感も。同問題が落ち着けば、OPECの減産合意などでドルの買戻しを誘いやすい地合いが出来ているだけに、本格的な買戻しへの期待感がある。

 今週の注目は7日の米雇用統計。9月のFOMCでの利上げは見送られたが、年内利上げの見通しはまだまだ強い。11月のFOMCは同月8日の大統領選直前ということで、見送り見通しが強いが、12月FOMCでの利上げが期待されている。

 もっとも、実際に利上げに踏み切るには米雇用市場の堅調地合いなどが条件となる。今週の発表を含め、12月まであと3回ある雇用統計発表に対する注目度は高い。

 前回は予想を下回る弱めの結果が出た同指標であるが、今回は少し改善する見込みとなっており、期待通りもしくはそれ以上の数字が出てくるとドル買いの動きに。数字次第では105円を超える本格回復に向けたきっかけとなる可能性も。

 3日のISM製造業、5日のADP雇用者数、ISM非製造業など、雇用統計と関係性の深い指標動向にも要注目。

 英国のメイ首相はEU離脱プロセスについて、離脱に向けた手続きであるリスボン条約第50条(用語説明2)を来年3月までに発動すると発表した。これにより英国はEU離脱に向けて正式に動き出すこととなる。英国が希望する欧州単一市場へのアクセスについては、移民問題での対立が解決しなければEU側に拒否される可能性が高く、経済的な悪影響の大きいハードブレグジットに向かう可能性が意識されている。短期的な動きだけでなく、中長期的にもポンド売り圧力が強まる可能性。ポンドドルは1.29をしっかり割り込み、さらに売りが強まる可能性も。中長期的には1.25割れも視野に入ってくる。

用語の解説

ドイツ銀行の巨額和解金問題 フランクフルトに本店を置くドイツ最大級の民間銀行ドイツ銀行は、サブプライムを含む住宅ローン担保証券の販売を巡って不正があったとして、米司法省から140億ドル(約1兆4000億円)の巨額和解金を請求されている。同金額は同行の時価総額に近い数字であり、実際に同金額で和解金支払いが決まると、経営破綻するのではとの思惑が広がった。また、同問題についてドイツ政府へ救済を依頼したが、メルケル首相が拒否したとの観測が流れている。元々同行は昨年過去最大の赤字を記録するなど、経営状況に不安があり、財務状況が脆弱との指摘がある中で同問題が浮上したことで、市場の警戒感が広がっている。もっとも、先週末にAFP通信社が和解金について54億ドルで合意になるとの観測を示し、懸念は後退した。54億ドルという数字も巨額なものではあるが、ドイツ銀行がすでに引当金として用意している金額にほぼ等しく、支払い能力があるという見方が強まっている。
リスボン条約第50条 リスボン条約とは、マーストリヒト条約などEUの基本条約について、修正を行った条約のこと。2007年にEU首脳がリスボンのジェロニモス修道院で調印したことから、一般的にリスボン条約と呼ばれている。同条約第50条はEU加盟国の離脱に関する手続きを定めたもの。離脱にあたって当該国はまずEUに対して離脱の通告を行うと定められている。通告後2年間を目途に当該国とEUとの間で離脱に向けた交渉が行われる。同通告までは離脱交渉が正式に始まらないため、英国による通告時期について市場の注目が集まっている。
                                                   

今週の注目指標

豪中銀金融政策理事会
10月4日12:30
☆☆
 豪中銀の金融政策理事会が4日行われる。政策金利は現状の1.50%で据え置きの見込み。先月18日に就任したロウ新総裁(副総裁からの昇格)の下での初めての理事会となる。低インフレへの警戒感からさらなる追加緩和への期待感が残っているが、5月、8月と今年に入って2回の利下げを実施した効果を確認することが先との見通しが強く、今月後半の7-9月期消費者物価指数発表まで金利は現状維持との見通しが強い。新総裁が低インフレについてどこまで警戒感を示してくるのかが注目ポイント。年内の利下げ期待が強まるようだと豪ドル売り。豪ドル円はポイントとなる76円を試す可能性も。
G20財務相/中央銀行総裁会議
10月6日
☆☆
 20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)が、米国ワシントンで開催される。保護主義の台頭問題などに加え、先週市場でも注目材料となったドイツ銀行の信用不安問題やそれを受けての金融市場の動揺などが議題となるとみられる。黒田総裁は9月の日銀会合で新たに導入した長短金利操作付き量的・質的緩和について説明するとみられる。米国の利上げについて否定的な発言が出てくる可能性があるが、可能性はそれほど高くない。無事通過した場合、リスク警戒がある分、ややドル買いの反応が見られそう。ドル円の101円台をサポートしてくると期待される。
米雇用統計/非農業部門雇用者数(9月)
10月7日21:30
☆☆☆
 米国の年内利上げ見通しが広がる中、利上げ決定のカギを握る米国の雇用情勢への注目度は高い。前回8月分は予想を下回る前月比+15.1万人と弱めの数字を記録した非農業部門雇用者数(NFP)。今回は+17.0万人とやや改善の見込み。6月、7月と連続で27万人を超える増加を記録したことも併せて考えると、予想前後でも利上げには十分な数字と見える。ドル円での下押しリスクが後退し、ドル円は103円超えを狙いに行く流れを期待している。予想を大きく超え節目の20万人を上回るようだと、利上げ期待が加速し、ドル買いが広がる可能性も。この場合大きなターゲットである105円超えも十分にありそう。

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