2016年10月11日号

(2016年10月03日~2016年10月07日)

先週の為替相場

ポンド一時大暴落

 3日からの週は、ポンド安の動きで始まった。

 2日に英国のメイ首相がEUからの離脱について、リスボン条約第50条に基づく通告を来年3月までに行うことを表明。移民問題での対立が続く中、EU離脱の動きが正式に始まる見込みとなったことで、英国が欧州単一市場(用語説明1)へのアクセスを拒否される、いわゆるハードブレグジットの可能性が高まったとして、ポンド売りが広がった。

 この動きを受けてのリスク回避もあり、ドル円は101円台前半と円高圏での推移で始まったが、3日のNY市場で発表されたISM製造業景気指数が好結果となり、利上げ期待が拡大。一転してドル買い円安の動きが優勢となった。

 その後もポンド安の動きは続いたが、ドル円、ポンド円以外のクロス円に関しては円安が進行。5日のISM非製造業景気指数が予想を大きく超える好結果になったことなどが、米国の利上げ期待につながる形で、ドル買いが進行。米景気の回復期待から株式市場もしっかりとなり、リスク選好での円売りも広がり、ドル円は104円台を回復するところまで買い戻された。

 そうして迎えた米雇用統計発表日である7日。東京朝にポンドがフラッシュクラッシュ(用語説明2)を起こした。それまでのポンド安進行において、対ドルでの下値を何とか支えていた1.26を割り込んだことをきっかけに、数分で1.20を割り込む動きに。

 銀行間市場でもほとんど出合いがないままに値を崩したこともあり、報道によって安値が大きく違う状況となったが、銀行間取引の仲介を行うロイター社によるとポンドドルは1.1491までと、数分で約10%の下落を見せた格好。

 その後かなり値を戻したものの、1.25を付けきれないなど、ポンド安の動きは継続した。

 ドル円はポンドの暴落を受けてリスク警戒感が強まったこともあり、少し値を落とし、103円台後半で米雇用統計を迎えた。

 注目された米雇用統計は、非農業部門雇用者数の数字が予想を下回り、失業率も予想外に悪化するなど、かなり弱めの結果に。ドル円が102円台まで値を落とすなど、ドル高の調整が入って週の取引を終えている。

今週の見通し

 ポンドはかなり神経質な展開。対ドルでのフラッシュクラッシュで値を崩した後の戻りが、クラッシュ前の1.26どころか、1.25にすら届いておらず、頭の重さが印象的な展開に。ハードブレグジットへの警戒感が根強いだけに、今後しっかりと1.20を割り込んでいくような動きが十分に考えられる。対円でも頭の重い展開が続きそうだ。

 ドル円は上値トライの勢いを先週金曜日の米雇用統計の弱い結果で削がれた格好となった。雇用統計が二か月連続で弱めの結果となったことで、年内の利上げについて懐疑的な見方も増えてきた。今月に入りISM製造業・非製造業景気指数の好結果を受けて盛り上がりを見せていたドル買いの流れに、いったんはっきりと調整が入っている。

 もっとも、この調整がどこまで続くのかは微妙なところ。金利市場での動向をみると、12月FOMCまでの利上げを6割以上織り込んでおり、雇用統計前からの変化は限定的なものにとどまっている。ドル円がポイントとなる102円をこのまま割り込まずにもみ合いとなった場合、どこかのタイミングで再び上昇基調が強まる可能性が高い。

 目先のターゲットは104円ちょうどの節目。同水準をしっかり超えてくると、直近高値である104円台前半を超える場面も期待される。

 なお、今週は9月の米小売売上高の発表が予定されている。前回は予想以上に弱い数字となった同指標であるが、今回は回復が期待されている。先週末の雇用統計は冴えなかったものの、雇用統計を除いた直近の米指標は強い数字が比較的目立つだけに、小売売上高にも期待が集まる。期待通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル買いに対する安心感につながり、中期的なターゲットである105円を意識した展開が期待される。

用語の解説

欧州単一市場 EU加盟国の間で、人・物・サービス及び資本が国境などに妨げられることなく自由に移動できる制度。1985年6月に提出された「域内統一白書」によって方針が整備され、1992年末までに定められた目標をおおむね達成した。
 同白書によると、商品の移動にかかわる制限の撤廃、人・サービス・資本の自由移動に対する障壁の撤廃、域内での競争を歪曲しないように保証する制度の創設、市場統合に必要な各国の法制の調和、各国間接税の接近が達成された市場(外務省HPより)が、単一市場の定義として定められている。
フラッシュクラッシュ 株式市場や外国為替市場で、数分などわずかな時間で相場が通常ではあり得ない幅で暴落することをいう。瞬間暴落とも呼ぶ。最初にこの言葉が使われたのは、2010年5月6日。この日はニューヨーク株式市場でダウ平均株価がわずか数分のうちに1000ドル近く(約9%)下落した。この時は高速取引を利用した相場操縦があったとして、後に英国人男性が逮捕されている。フラッシュクラッシュ自体は高速・高頻度取引を含むアルゴリズム取引や誤発注などいくつかの複合的な要因によって生じると考えられている。
                                                   

今週の注目指標

米FOMC議事録
10月13日03:00
☆☆
 9月20日・21日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が公表される。年内利上げを見込む動きが広がる中で、FOMCでどのような議論が行われたのかが注目ポイント。ブレイナードFRB理事を始めとして、一部で年内の利上げに慎重な参加者も出てきており、イエレン議長が早期の利上げに向けてFOMC内でどのような姿勢を示しているのかにも注目したいところ。結果的に年内利上げ期待が強まるようだとドル買いに。104円台前半が目先のターゲット。
米小売売上高(9月)
10月14日21:30
☆☆☆
 米国のGDPの約7割を占める個人消費の動向を示すこともあり、もともと注目度が高い同指標。前回は予想以上に弱めに出たことで、早期利上げへの慎重論につながった。今回は回復が期待されており、期待通りもしくはそれ以上の数字が出てくるとドルの買い戻しが強まると期待される。数字次第では直近高値である104円台前半を超えていくきっかけになる可能性も。一方で、予想を下回り、個人消費が冴えないとの印象を与えると、先週末の米雇用統計でやや神経質になっているだけに、ドルが一気に値を落とす可能性もある。この場合100円を意識する展開になる可能性もあり。
イエレン米FRB議長講演
10月14日25:30
☆☆
 今週は多くの米要人発言が予定されている。11日のエバンス・シカゴ連銀総裁、12日のダドリ―NY連銀総裁、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁。13日のカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁。そして14日にはローゼングレン・ボストン連銀総裁とイエレン米FRB議長が講演などを予定している。
 特に注目はイエレン議長。先週末の米雇用統計が弱めに出て、米国の年内利上げ期待が若干後退した中、労働市場がもともとの専門で、比較的慎重派の議長が、これまで同様に早期利上げに前向きな姿勢を示すのかが注目ポイント。
 利上げにやや慎重な姿勢を示した場合、一気のドル売りも。目先のポイントである102円割れの可能性も。

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