2016年10月17日号

(2016年10月10日~2016年10月14日)

先週の為替相場

ドル買い優勢

 10日からの週は、ドル買いの動きが優勢となった。

 7日の米雇用統計が弱めに出たことで、それまで進んでいたドル買いに対していったんポジション調整の動きが広がったが、週が明けた10日以降はそうした調整の動きが収まり、再びドル買いが優勢に。

 雇用統計の弱さを受けても、年内の米国の利上げ期待がそれほど後退せず、金利先物市場での12月までの利上げの織り込みが70%を超える状況となっている。日本や欧州が緩和姿勢を継続する中で、早期利上げ期待が強い米国へ資金が流入する流れが継続している。

 現地時間9日夜(日本時間10日)に行われた第二回大統領候補者TV討論会において、クリントン氏が優勢を維持し、トランプ候補の逆転が難しくなったことなども、ドルの買い材料として意識された。

 ドル円は13日朝に104円64銭をつけるなど、ドル高円安の動きが広がっていたが、同日の中国貿易収支が輸出入ともに事前予想を大きく下回るかなり厳しい結果になったことなどがきっかけで、いったん調整が入る場面も。

 もっとも翌日には104円台をあっさり回復し、104円台半ばを目指すなど基調はしっかり。

 注目された14日金曜日の米小売売上高は、全体の数字こそ予想通りの好結果を記録したものの、GDPの算出に使用される食品、エネルギー、自動車、建材を除く売上高が+0.1%と予想より弱めの伸びに留まっており、年内利上げ期待の押し上げには至らず。ただ、同日行われたダドリーNY連銀総裁の講演で年内利上げの可能性について言及されたことなどから、ドル買いムードが継続して週の取引を終えている。

 ユーロは心理的にも大きな節目であった1.10を先週末に割り込むなど、対ドルでの売りが優勢に。基本的にはドル全面高に対応した動きであるが、20日のECB理事会を前に、一時広がっていたテーパリング(用語説明1)の期待が後退、逆にキャピタルキー(用語説明2)の変更など緩和継続に向けた何らかの政策変更が決まるのではとの期待感がユーロ売りを誘っている。もっとも、円安の動きもありユーロ円での反応は限定的。

今週の見通し

 基本的にはドル高傾向が継続するとみられる。ドル円は104円台半ばからの売り意欲が継続しており、上値を抑える展開が続いているが、押し目も鈍く、振幅の中で安値が切り上がる傾向が見られるなど、基調は相当しっかり。105円超えを意識する展開に。

 日欧で金融緩和姿勢維持が見られる中、年内利上げ期待が高まる米国の状況を好感する動きが続いている。

 市場の注目は20日のECB理事会か。政策金利の水準や量的緩和(資産購入プログラム)の規模などは現状維持見込み。

 来年3月に一応の期限を迎える資産購入プログラム(APP)については、主な購入対象となるドイツ国債の品薄懸念などから、一時テーパリング期待が広がったが、要人・報道官などが否定したことで期待感が後退。逆に、キャピタルキーの変更や33%ルールの緩和など、パラメータの調整を進める可能性が指摘されている。

 こうしたパラメータの調整は、購入対象債券の拡大を意味し、ECBの緩和姿勢継続を市場に印象付けるだけに、ユーロ売りにつながる可能性。ただし、市場の主な見方は、量的緩和の期限延長、パラメータの調整などについて、今回の理事会での議論を経て、12月以降に対応というもの。今回会合は現状維持見込みが強い。

 ただ、ユーロドルは心理的な節目であった1.10をしっかり割り込んでおり、もう一段の下げ余地が見られるだけに、ECBが今回パラメータ調整に踏み切った場合の反応には要注意。2015年に二度下値進行を止めた1.05近辺が大きなターゲットとなっている。

 資源国通貨はしっかりの動きが期待される。中国貿易収支の弱さを受けて原油高の動きがいったん抑えられたが、先週金曜日に発表された中国・米国のインフレ指標が強めに出たことで、原油に対する上昇期待が再び強まっている。原油に関しては供給過剰懸念も後退しており、この後もしっかりの動きが期待される。豪ドルやカナダドルはこうした原油高の動きに支えられ、堅調地合いを維持してくると期待される。豪ドル円は80円を超えてくる動きを期待している。

用語の解説

テーパリング テーパリング(Tapering)は、本来、先細りを意味する英語。金融市場では、金融政策における量的緩和の縮小を意味する言葉として利用されている。米FRBは2012年9月から実施した量的緩和第3弾(QE3)について、2013年5月にテーパリングを行うことを示唆、実際に2014年1月から10月にかけてテーパリングが実施され、量的緩和政策が終了した。日本銀行やECBは現行の緩和策の維持を示唆しているが、ECBの量的緩和(資産購入プログラム:APP)については、主たる購入対象であるドイツ国債に関して、品薄懸念が広がっていることから、テーパリングを余儀なくされるのではとの懸念が広がっていた。
キャピタルキー キャピタルキーとはユーロ加盟国によるECBへの出資比率のこと。現状のECBの資産購入プログラムでは、このキャピタルキーに応じて、購入する資産額が決定する。そのため、出資率の一番高いドイツが約四分の一程度の買い入れを実施。フランス、イタリアと続く。この規定により緩和をより必要とする南欧諸国は、購入額が限定され、緩和効果が十分に行き渡らないという批判がある。
                                                   

今週の注目指標

米フィッシャーFRB副議長講演
10月18日01:15
☆☆
 FRBのフィッシャー副議長が17日NY市場(日本時間18日午前1時15分)に講演を実施する。フィッシャー副議長は年内の利上げについて、自身が前向きな姿勢を示すだけでなく、大方の参加者が年内利上げを見込んでいると、かなり踏み込んだ発言を以前に行っている。直近の雇用統計が弱いなど、一部で懸念材料が出ているが、今回の講演でも同様の姿勢が示されるようだと、ドル円が105円に向かうきっかけとなる可能性。
米大統領候補者第3回テレビ討論会
10月20日10:00
☆☆☆
 11月の大統領選挙に向けて、3回目のテレビ討論会がネバダ州ラスベガスで行われる。この討論会が大統領選前の最後のテレビ討論会となる。これまで2回の討論会ではクリントン候補が比較的優位に議論を進めてきた。支持率などで遅れをとるトランプ候補としては、今回の討論会を逆転のきっかけとしたいところ。もっとも、これまで大きな失点がないクリントン候補の優位は動かないとみられる。事前見込み通りクリントン候補優位のまま討論会が終了した場合、トランプリスク後退の安心感からドル買いが入る可能性。105円をしっかり超えてくる期待も。
ECB理事会
10月20日20:45
☆☆☆
 20日20時45分にECB理事会、21時半に理事会後のドラギ総裁による記者会見が予定されている。政策金利、量的緩和の規模・期限などは基本的に現状維持が期待されている。ただ、現行の量的緩和(資産購入プログラム:APP)を現行規模の下で来年3月の期限まで継続すると、主たる購入対象であるドイツ国債にひっ迫感が生じる懸念がある。そのため、対象資産の拡大などを目的とした調整が入る可能性がある。キャピタルキーの変更、33%ルールの緩和、購入対象債券の下限金利(現行は中銀預金金利である-0.4%)の引き下げなどが予想される対応。ただし、いずれの対応もドイツなどからの強い反対が予想されるだけに、今回の理事会では議論にとどめ、次回の理事会での決定という見方が強い。もし、今回の理事会でパラメータの調整実施に至った場合、ECBの緩和姿勢維持への強いアピールとなり、ユーロ安が進むと予想される。ユーロドルでの影響が大きいとみられ、中期的に1.05を目指すきっかけになる可能性も。

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