2016年10月24日号

(2016年10月17日~2016年10月21日)

先週の為替相場

ユーロ売り主導

 17日からの週は、ユーロ売りの動きが目立つ展開となった。

 19日に行われた第3回米大統領候補者テレビ討論会が大きな波乱なく終了し、これまで優勢に選挙戦を進めているクリントン候補がこのまま逃げ切る可能性が強まったことで、ドル買いの動きが若干優勢になった。トランプリスク(用語説明1)の後退を意識した動き。もっとも、ドル円は104円台からの売り意欲が強く、大台を維持しきれず、もみ合いに。

 ユーロドルは、ドル高の影響で下を試すと、週の後半にかけてユーロ売りの動きが加速した。20日のECB理事会後の記者会見においてドラギ総裁が「QEを縮小することなく唐突に停止することは恐らくない」と発言し、3月までとなっている現状の資産購入プログラム(APP)について、延長を示唆したことで、ユーロ売りの動きが広がった。

 ユーロドルは6月の英国民投票直後の安値を割り込み、3月以来となる1.08台まで値を落とした。ユーロ円やユーロポンドなどでもユーロ売りが入り、ユーロはほぼ全面安の展開に。

 トランプリスク後退による世界の投資資金のリスク選好の動きや、NY原油の上昇による資源国通貨買いの動きなどにより、週の前半は買いが目立った豪ドルは、20日の豪雇用統計(9月)において、雇用者数が予想外に減少する弱い結果が出たことを受けて、一気に売りが優勢に。80円をトライしていた豪ドル円は78円台まで値を落としている。

今週の見通し

 ユーロ売りの動きは基本的に継続すると予想される。

 ドラギ総裁発言を受けて、来年3月末までのQE延長が期待される流れとなっているが、こうした金融政策見通しの変化は相場に中長期的な影響を与えるケースが多い。ユーロドルに関しては心理的にも大きな節目であった1.09をしっかり割り込んでおり、次の大きなターゲットは1.05。まだ十分に下げ余地があるだけに、投機的にも売りやすい展開。今年の安値である1.07をとりあえずのターゲットとして、下を試す展開か。

 ドル円に関しては、基調はまだ上とみている。ドルの年内利上げ期待が強く、ドル円にしても、調整が入る局面ではしっかりとドル買いが出てくる流れが続いている。

 本邦輸出勢など実需がらみのドル売りや、オプション取引に絡んだドル売りが104円台半ばから入っているといわれており、目先の上値を抑える展開となっているが、どこかのタイミングで上値を試す可能性は大きい。

 104円を挟んだレンジ取引を基本に、上値を意識する展開に。105円をしっかり超えると、状況が大きく変わる可能性も。 

 今週はダドリーNY連銀総裁(用語説明2)やパウエルFRB理事など米要人発言が多数予定されているほか、米国の7-9月期GDPの速報値の発表も予定されている。こうした材料が上値トライのきっかけとなるか。

 豪ドルの調整はもう少し続きそう。豪ドル円はターゲットであった80円をつけたものの、定着しきれずにいったん値を落としたことで、上値に一服感が出ている。26日に発表される豪消費者物価指数(第3四半期)が予想を下回った場合、売りが加速する可能性も。77円台半ばがターゲット。76円を割り込んだ場合、動きが大きく加速する可能性も。

用語の解説

トランプリスク 共和党の大統領候補であるトランプ氏は、米国にとって貿易相手先の第3位となるメキシコとの国境に壁を作ることを提唱するなど、外交的に過激な発言が多く、大統領に選ばれた場合は政治経済的に不透明感が強まるとして、投資資金の米国からの流出によるドル安や株安が起きる可能性がある。こうしたリスクをトランプリスクと呼ぶ。
NY連銀総裁 米国に12ある地区連銀の総裁は、NY連銀を除いて、4つのブロックに分けられ、1年毎に持ち回りでFOMCでの議決権が与えられる。NY連銀に関しては、米国の金融政策の実務を担うこともあり、定席で議決権を有するほか、FOMCにおいて副議長職(FRB副議長とは別役)を与えられるなど、別格の扱いを受けている。なお、万が一欠席する場合の代理メンバーとして副総裁が指名されている(他の地区連銀総裁が欠席する場合の代理メンバーは別の地区連銀総裁で、副総裁がFOMCに参加する資格を有するのはNY連銀のみ)。
                                                  

今週の注目指標

豪7-9月期消費者物価指数(CPI)
10月18日01:15
☆☆
 豪中銀(RBA)は10月に行われた金融政策理事会の議事要旨において、11月の会合では、今回発表されるCPIと直近のRBAによる経済見通しが利下げの決定における重要なファクターとなると言及している。刈込平均の前期比が予想の+0.4%を下回るようだと、市場の利下げ期待が強まり、豪ドル売りが強まる可能性が高い。豪ドル円は76円を割り込むと一気に下げる可能性があるため要注意。
日消費者物価指数(CPI)
10月28日08:30
☆☆
 総務省が発表する日本の9月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除くコアの予想が-0.5%と、7月、8月と同水準の下落が予想されている。予想通りとなった場合、7か月連続の下落となる。総合も-0.5%の下落見込み。食品とエネルギーを除くいわゆるコアコアは+0.1%の見込み。前回の日銀金融政策会合で長短金利操作付き量的・質的緩和に踏み切った黒田総裁であるが、厳しい状況が続いていることが見受けられる。日銀の追加緩和への期待感につながるようだと円売りも。105円超えのきっかけとなるか。
米7-9月期GDP速報値
10月28日21:30
☆☆☆
 4-6月期のGDPは前期比年率+1.4%。個人消費の回復などもあり、1-3月期の+0.8%からは伸びたものの、事前見通しの+2.5%にはまるで届かない弱めの結果となった。在庫投資の思わぬ大きな減少となり、全体の足を引っ張った格好に。ただ、4-6月期で在庫調整が一段落したとの期待感もあり、今回は+2.5%と大きな伸びが期待されている。
 もっとも、前期に+4.3%と高い伸びを記録し全体の数字を押し上げた個人消費について、+2.6%まで伸びが鈍ると見込まれており、若干の警戒感も。在庫の回復が期待ほど進まず、予想を下回る全体の伸びにとどまった場合、12月の利上げ期待が後退し、ドル売りが進む可能性も。ドル円は102円台下落などの大きなドル安となる可能性も。

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