2016年10月31日号

(2016年10月24日~2016年10月28日)

先週の為替相場

ドル円105円台示現

 24日からの週は、ドル高の動きが強まり、ドル円は心理的な節目でもあった105円台を一時付ける動きを見せた。

 米国の年内利上げ期待を背景にした米国債利回りの上昇や、英国の追加利下げ期待後退による英国債利回りの上昇、さらにはその影響を受けた欧州債全体の利回り上昇が、外貨買い円売りの動きを誘った。

 経済指標で相場に影響を大きく与えたのが英・米の7-9月期GDP。

 27日に発表された英GDP(用語説明1)は予想の前期比+0.3%に対して+0.5%の好結果。6月の国民投票によるEU離脱決定の影響が思った以上に軽微との結果に、英国の追加緩和見通しが後退した。

 28日の米GDPに関しては、26日に発表された米前渡商品貿易の好結果などにより、直前になって予想の上振れ期待が広がったことが、ドル買いにつながった。実際の結果も、輸出の拡大による押上げが見られ、事前見通しの前期比年率+2.5%に対して、+2.9%とかなりの好結果に。

 市場はこの上振れ見込みを背景に、発表前からドル買いが進み、105円の大台を超えるきっかけとなった。

 金曜日NY市場まで105円台での推移が続き、GDPが実際に好結果となり、発表後に再び上昇も、直前の織り込み通りでサプライズが無いということもあり、その後、利益確定の売りに押される格好に。さらに、ヒラリー・クリントン大統領候補の国務長官時代の私的メール問題(用語説明2)に絡んでFBIが捜査再開を発表し、一気にドル売りが進む場面も見られた。

 

今週の見通し

 イベント待ちも、基本はドル買いとみられる。

 米国の年内利上げ期待が継続する中、基調としてはドル買いが継続。ただ、金曜日の米雇用統計発表をにらみ、いったん様子見ムードが広がる可能性もあり、その点には注意が必要。ドル円は104円台から105円台前半でのレンジ取引が基本となりそう。

 米国・欧州の国債利回りが上昇する中で、長短金利操作付き質的量的緩和を実施する日本の国債利回りの停滞が材料視されており、中長期的な外貨買い円売りの流れは継続か。

 FOMCは現状維持見込みで一致しており、サプライズ要素は少ない。声明で年内利上げにどこまで前向きな姿勢を示すことができるのかがポイントに。前回もそれなりに前向きな姿勢が見られており、基本的にはドルを支える材料に。104円台前半では買いの動きが出てきそう。

 雇用統計は前回から改善の期待。予想前後の数字が出てくると、年内利上げに向けたポイントをクリアという印象が強まり、ドル買いの動きにつながりそう。1日のISM製造業景況感指数、2日のADP雇用者数、3日のISM非製造業景況感指数など、関連指標も併せて注意したいところ。

 事前の期待感が強まるようだと、発表前からドル買いが広がる可能性も。105円台半ばを超えてくると動きに勢いが出る可能性も。

 リスクは先週末に報じられたヒラリー・クリントン大統領候補の私的メール問題。大統領選直前の捜査再開に、クリントン氏楽勝ムードが吹っ飛び、リードしていたフロリダ州での世論調査で、トランプ氏が逆転する結果が出るなど、混戦ムードとなっている。後退していたトランプリスク再開となると、ドル安の影響が大きいだけに、今後の情勢が気になるところ。続報次第では104円割れも。この場合いったん調整が加速する可能性がある。

用語の解説

英GDP 英国の国内で生産された財・サービスの付加価値の合計。英国家統計局が四半期毎に発表を行う。四半期が終わった後の翌月の後半に速報値が発表される。主要国の中ではタイミングがもっとも早い。サービス業の割合が多いことや、中でも金融業の割合が多いことが特徴。その他、薬品関連、エネルギー関連などの割合が他の先進国と比べて大きい。
私的メール問題 民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントン前国務長官が、公務において私的な電子メールアカウントを利用していたという問題。公務におけるメールは政府の文書という意味を持ち、所有権は米国民にあって、将来的に公開されるものという前提がある。それに反した私的なアカウントの利用ということになるが、クリントン氏が国務長官時代にはメールに関する明確な規定がなかったことから、いったんは不起訴という形で収まった。しかし、民主党の元議員であるウェイナー氏が児童ポルノがらみの容疑で捜査される中で、同氏保有のPCからクリントン氏の国務長官時代の補佐官であった同氏の妻とのメールが見つかり、捜査が再開されることとなったもの。
                                                  

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
11月1日
☆☆
 前回、長短金利操作付き量的質的緩和を打ち出した日銀。今回の会合では目立った政策変更はないと思われるが、目標としている上昇率2%の期間内での達成が厳しくなる中で、物価見通しの下方修正と目標の先送りを発表する可能性がある。ある程度予想通りの行動となっており、大きな波乱要素ではないが、基本的には円安材料。105円台半ばをトライするきっかけになる可能性も。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
11月3日03:00
☆☆☆
 早期利上げ期待の強い米国であるが、今回のFOMCでは現状維持が見込まれている。FOMCメンバーによる金利見通し(ドットチャート)などが発表される回ではないこと(年8回開催されるFOMCにおいて、半分の4回で見通しが発表される。次回は12月)。大統領選挙の直前であることなどが、利上げ見送り見通しの背景にある。専門家の予想は現状維持でほぼ一致しており、波乱要素は少ない。声明でこれまでの早期利上げ示唆ではなく、次回の利上げ示唆にまで踏み込むようだと、ドル買いが強まる可能性も。この場合、直近高値を超えて105円台後半を付ける可能性。
米雇用統計(10月)/非農業部門雇用者数(NFP)(前月比)
11月4日21:30
☆☆☆
 米FRBの二大命題の一つが雇用の最大化ということもあり、元々注目度の高い同指標。今回及び12月2日に出る次回の結果が、12月の利上げ決定に大きな影響を与えるとみられることから、いつも以上の注目を集めている。NFPの予想は前月比+17.5万人と、前回の+15.6万人から伸びが強まると期待されている。予想前後の数字が出てくると、利上げへのハードルをクリアという印象が強まり、ドル買いにつながると期待される。106円を超えて大きく上昇するきっかけとなる可能性も十分にある。

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