2016年11月07日号

(2016年10月31日~2016年11月04日)

先週の為替相場

大統領選をにらむ展開

 31日からの週は、11月8日の米大統領選挙(用語説明1)をにらむ展開となった。

 クリントン氏優勢で進んでいた大統領選挙であるが、10月28日に米連邦捜査局(FBI)が、新たにメールが見つかったとして再調査を実施する方針を発表。一気に支持率が低下し、トランプ氏との支持率の差が縮む結果となった。

 周辺国との関係も含め、不透明感の強いトランプ氏の大統領就任リスクを嫌気して、ドル売りの動きが広がり、ドル円は一時102円台まで値を落とす展開に。

 4日の米雇用統計は、10月分の非農業部門雇用者数の結果が事前見通しを下回ったものの、9月分が大幅に上方修正。直近3か月分の平均を見ると、利上げに十分との見方が広がったが、大統領選を直前に控え、市場の反応は限定的なものにとどまった。

 その他目立ったのはポンドの買い戻し。3日に英高等法院がEU離脱手続きの正式開始に際して、議会の承認を得る必要があるとの判断を示したことで、政府主導によるハードブレグジットの実行懸念が後退。ポンドの買い戻しにつながった。同日の英中銀金融政策委員会(MPC)は事前予想通り現状維持を決定。こちらは相場の材料とはならなかったが、同時に発表された四半期インフレ報告(用語説明2)において、インフレ見通しと経済成長見通しがともに引き上げられたことも、ポンドの買いを誘った。週初1.21台をつけていたポンドドルは1.25台まで上昇。ポンド円はドル円の売りに頭を抑えられたものの、126円台から129円台まで上昇。

 

今週の見通し

 大統領選の結果待ちの流れ。

 8日の大統領選の結果によって、米国だけでなく世界経済が大きな影響を受けることもあり、結果次第という流れになりそう。

 現状やや優勢に選挙戦を進めているクリントン候補がこのまま大統領となった場合、基本的にはドル買いの動きが期待される。現行のオバマ大統領路線が基本的に引き継がれることで、先行きの不透明感が後退。12月の利上げなども事前予想通り実施されるとの思惑が強まり、ドル買いの動きを誘いそう。世界的なリスク警戒感後退による円売りも期待される。ドル円は105円を超えて上値を試す展開が期待されるところ。最大の懸念材料となっていたメール問題が、6日のFBI長官による「訴追に相当しないとの見通し変わらず」との発表で、一服したこともあり、シナリオ的にはこちらの方が優勢。

 一方トランプ氏が大統領になった場合は、パニック的なドル売りが進む可能性がある。中国との関係悪化を含め、世界的な経済の混乱が予想され、ドル売りにつながりそう。

 対イスラム教への過激な発言が目立つことから、オイルマネーの米国離れも懸念される。

 米国から流出した資金は、ユーロと円に流れ込むと見られ、ドル円は100円割れも十分に視野に入る展開に。

 選挙結果が明らかになる日本時間9日は、状況次第で上下に大きく荒れる可能性。各州ごとに投票締め切り後すぐに開票にかかるが、土地が広いことなどもあり、接戦となった場合結果が出るまでに時間のかかる州もある。ぎりぎりの攻防でトランプ大統領の可能性が残る状況が見られると、一気にドル売りが進む場面もありそう。ただ、大勢が判明するまでは102円から106円のレンジを外れて進むのは難しそう。

用語の解説

米大統領選挙 4年毎の11月の第一月曜日の翌日(11月2日から8日の火曜日)に行われる米国の大統領を選出する選挙。大統領の任期は4年で、2期までと決められている。
 形式上は間接選挙で、有権者は各州ごとに割り当てられている選挙人団に投票する。メイン州とネブラスカ州を除いて、その州でもっとも投票数を得た党が、その州に割り当てられている選挙人議席をすべて獲得する勝者総取り方式(Winner takes all)となっている。選挙人議席を最も多く獲得した党の候補者が大統領として選出される。
英四半期インフレ報告 英中銀(BOE)が四半期毎(2月・5月・8月・11月)に発表する報告書。英国の経済成長(GDP)、インフレ、賃金、金利などの見通しが示される。カーニー総裁による制度改革により、2015年8月から英中銀金融政策委員会(MPC)の結果および議事録と同時に発表されることとなった。MPCの結果および議事録の発表と四半期インフレ報告が同時に発表される回を、スーパーサーズデーと呼ぶ。
                                                  

今週の注目指標

米大統領選
11月8日
☆☆☆
 4年に一度行われる米国の大統領選挙。民主党候補のクリントン氏と共和党候補のトランプ氏の実質上の一騎打ちとなっている。世論調査ではクリントン氏が一時大きくリードし、楽勝ムードも広がっていたが、先月28日に米連邦捜査局(FBI)が、同候補の国務長官時代の私的メール問題を再捜査すると発表したことで、雰囲気が一変。支持率の差がほとんどなくなっており、勝負は混戦模様となっている。ぎりぎり優位を保っているクリントン氏が勝利するとドル買い。トランプ氏が勝利するとドル売りが予想されるところ。かなり大きな影響を与えるとみられ、クリントン氏リードでは再び105円を試す可能性も。トランプ氏が勝利した場合、一気にドル売り円買いが進み、100円割れも視野に入ってくる。
NZ中銀金融政策理事会
11月10日05:00
☆☆☆
 8月に史上最低水準である2.00%まで政策金利を引き下げたニュージーランド。この時の声明で今年中最低一回の追加利下げが必要との見方を示しており、今回の理事会で利下げに踏み切るとの見方が広がっている。先月発表されたNZの4-6月期GDPは前期比+0.9%と、1-3月期の+0.7%から伸びが拡大するなど、足元のNZ経済は比較的好調。ただ、7-9月期の消費者物価指数(CPI)が前年同期比+0.2%と、中銀のインフレターゲットである1%~3%にまるで届いておらず、デフレ警戒感が強いことから、利下げが期待される状況に。ただ、予想通りといえ、現時点での利下げは、12月に利上げが見込まれる米国の状況との対照性が目立つだけに、NZドル売りに作用しそう。中期的に70円を目指すきっかけとなる可能性も。
ミシガン大学消費者信頼感指数(11月)(速報値)
11月12日00:00
☆☆
 ミシガン大学のサーベイリサーチセンターが調査・発表する、消費者のマインドを示す指標。10月は確報値ベースで87.2と2015年9月以来1年超ぶりの低水準を記録した。米国の早期利上げ期待を受けて消費者マインドが慎重になっているのではとの思惑がこの結果により一部で広がっていた。今回は87.9と少し改善の見込み。12月の利上げを織り込む動きが続く中、予想通り改善を示すと、ドル買いの安心材料に。105円を超えるような動きに対するサポートとなりそう。

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