2016年11月14日号
先週の為替相場
トランポノミクスへの期待感がドル買いに
8日に行われた米大統領選挙は、下馬評を覆してトランプ氏が勝利し、第45代大統領の就任が決定した。
事前見通しではクリントン氏が有利とされ、さらに当日朝に不在者投票の状況からクリントン氏の優勢見通しが強まったとの報道もあり、期待感からドル買いが入る展開に。開票が始まる日本時間9日午前を前に、ドル円は105円台半ばまで上昇する場面が見られた。
しかし、開票が始まるとトランプ氏の得票が予想外に伸び、徐々に優勢になるに従ってドル売りが進行。トランプ氏勝利で大勢が決した9日午後にはドル円が101円台前半まで値を落とし、高値から4円超の下げを記録するなど、ドルは全面安に。
女性に対する問題発言などに加え、駐日米軍の日本への費用負担や、メキシコとの国境にメキシコの費用負担での壁建設など、外交的に荒っぽい発言を続けてきたトランプ氏が大統領職につくことへの警戒感が、ドル売りに繋がった格好。
もっとも、安値から値を戻すと、今度は一転してドル買いが優勢に。
勝利演説が比較的穏当なものとなり過激な姿勢への警戒感が後退したこと、インフラ整備を中心とした公共投資拡大や、金融規制緩和による市場の活性化など、トランプ氏の打ち出す経済政策、いわゆるトランポノミクス(用語説明1)への期待感が、一転してドル買いに繋がった格好。
ドル円は選挙前の高値をあっさり超えて、大きく上値を試す展開となった。
ユーロドルが1.07台まで値を落とす(ユーロ安ドル高)など、ドルは全面高基調。
また、株や商品市場の上昇を好感して円安が進み、クロス円も好調な展開に。
今週の見通し
ドル高の流れは当面続きそう。
トランポノミクスへの期待感が強いことに加え、トランプ氏当選前後で一旦ドル安が進行したことで、短期筋のポジションがかなり整理されており、新規のドル買いが入りやすくなっていることも、ドル高基調に寄与している。
大幅減税と公共投資拡大というトランポノミクスによって財政赤字が拡大する可能性が高く、これにより米国の実質金利が上昇する(用語説明2)とみられることから、ドル買いが入っている面も。
12月13日14日に開催される次回のFOMCについて、金利市場動向などから割り出される利上げ確率は8割を超えており、利上げ期待がドル高につながる状況も継続。
トランプ氏の政策運営への懸念は根強いものの、問題が出てくるのは1月20日の就任式以降のこと。人事面も含め、未確定材料が多い現状で懸念を先走らせることはないとの見方も広がっている。
ドル円は106円をしっかり超えて上昇を見せたことで、かなり上を意識する展開に。
目先のターゲットである108円をしっかり超え、状況によっては110円をトライする展開まで意識される。
その他通貨でも円安が続きそう。ダウ平均が史上最高値を更新。トランプ大統領誕生で一時値を崩した日本株が再び上昇を見せ、上値トライの流れになるなど、世界的な株高の影響で円安も進んでおり、80円をしっかり超えてきた豪ドル円を中心に、クロス円の上昇も期待される。豪ドル円は85円を中期的なターゲットに。
用語の解説
トランポノミクス | トランポノミクスとは、トランプ(Trump)氏と経済(Economics)をあわせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策を指す。法人税の大幅な減税、インフラ整備を中心とした公共投資、規制緩和などが中心となる。1980年代にレーガン大統領のもとで行われた、減税と規制緩和を中心とした経済政策レーガノミクスの再来とも言われている。トランプ氏は大統領選のスローガンに、レーガン大統領による「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大な国に)というフレーズを利用していることなどもレーガノミクスを意識させる要因となっている。 |
---|---|
財政赤字拡大と実質金利上昇 | 一般的に財政赤字の拡大は実質金利の上昇を招くと見なされている。財政赤字拡大に伴う大量の国債発行が金利の上昇を招くことと、将来的な財政赤字の持続性への懸念がリスクプレミアムの上昇を招くことの、2つの経路によって、実質金利の上昇がもたらされると言われている。 |
今週の注目指標
米小売売上高 11月15日22:30 ☆☆☆ | 米国の個人消費動向を示すことから注目度の高い同指標。12月の利上げを前に注目度が更に高まっている。米雇用統計は一時期ほどの強さは無くなったが、依然として堅調。小売売上高も同様にしっかりした数字を示すことができると、12月の利上げ期待を後押ししていきそう。今回発表される10月分の事前予想は前月比+0.6%、変動の激しい自動車を除いた数字の前月比が+0.5%と、いずれも9月分と同水準。予想前後の数字が出てくると利上げへの障害にはならないことから、ドル買いに作用しそう。110円を目指すドル円の動きのサポート材料に。 |
---|---|
安倍・トランプ会談 11月17日 ☆☆☆ | 予想外となったトランプ氏の大統領選勝利。同氏は選挙戦の中で日本に対して駐日米軍の費用負担を求めていることに加え、TPPへ反対の姿勢を示しているなど、これからの日米関係に不透明要素が大きい中で、急遽決定した同会談への期待感は大きい。親密な日米関係の維持が印象づけられる結果となると、リスク懸念が後退しドル買い円売りに作用。110円を目指す動きとなる可能性も。 |
イエレン議長議会証言 11月17日 ☆☆☆ | イエレンFRB議長は17日、上下両院合同経済委員会で議会証言を行う。同証言のスケジュールが発表されたのは、トランプ氏の当選が決まった後。トランプ氏は選挙戦の中でイエレン議長を批判、大統領になった場合、トランプ氏が出演していたTV番組での決め台詞「You're Fired(お前はクビだ)」の言葉を浴びせると発言している。実際にFRB議長を更迭することは制度上難しいが、18年2月3日までとなっている任期を延長しない可能性は十分あるなど、政府とFRBの関係悪化が意識される中、議長が議会証言という公的な場でどのような発言をするのかに注目が集まる。消極的な発言が出てくるようだと、一旦ドル買いに調整が入る可能性も。この場合106円が大きなポイントとなる。 |
免責事項
本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。
Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.
auじぶん銀行からのご注意
- 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。
以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。