2016年11月21日号

(2016年11月14日~2016年11月18日)

先週の為替相場

ドル買い加速

 14日からの週は、ドル円が111円に迫るなどドル買いの動きが加速する展開となった。8日の大統領選で勝利したトランプ氏の提唱する経済政策、トランポノミクスへの期待感が、米株高米国債安(利回り上昇)ドル高の動きにつながった。

 大型減税とインフラ整備による財政出動により、米景気の押上げが期待されることや、ドッド=フランク法(用語説明1)の改正も含めた金融規制緩和姿勢により、市場の活況が期待されるということなどが、株高ドル高を誘った形。また、こうした施策により財政赤字の拡大が意識されることで、金利の上昇圧力が強まり、米国債利回りが大きく上昇したことも、ドル買いに寄与した。

 ドル円は心理的にも大きな節目と見られた110円をあっさり上抜ける力強い動きを見せた。米債利回りの上昇が目立つ中で、ドルは全面高となっており、ユーロドルが1.05台を付けるなど、各通貨に対してドル買いが強まった。

 米債利回りの上昇につられて、世界的に国債利回りの上昇がみられる中、日銀は初めての指値オペ(用語説明2)を実行。今後も日本の金利が低水準に維持されるとの見込みが強まり、日米の金利差拡大期待などからドル円での円売りが入った面も。

 株高を受けてのトランプリスク警戒感後退などから円売りの動きも見られ、クロス円も軒並みの上昇。ユーロや豪ドルなどは対米ドルで売りが入った分、ドル円に比べて上昇幅が抑えられた。

今週の見通し

 流石に過熱感はあるものの、基調はまだドル高方向。

 金曜日の海外市場で週末を前にいったんポジション調整などが入ったものの、NY午後に高値圏までドルの買い戻しが入ったように、買い意欲は相当強い。

 選挙戦の中でトランプ氏の主張していた大型減税とインフラ整備や規制緩和について、どこまで実際の政策に反映されるのかは未知数。ただ、景気を刺激する方向での動きが強まるとの見方は一致しており、ドル買いが入りやすい地合いとなっている。

 17日のイエレン議長による上下両院合同経済委員会での議会証言において、トランプ氏の経済政策による望まぬインフレ加速の可能性が指摘され、来年の利上げペース拡大の思惑が広がったこともドル高に寄与した。

 足元の米景気についても、15日の小売売上高が予想以上に強めに出るなど、かなりしっかりしており、ドル買いに安心感を与えている面も。

 トランプ氏が大統領選で勝利する前後でいったん大きな調整が入り、市場のポジションが整理されたことも、その後の買いにつながっている面も。

 トランプリスクへの警戒感が消えたわけではないが、実際に政策を実行するのは1月20日の就任以降であり、まだ期間がある。とりあえずは期待感を先行させる展開となっている。  

 心理的な節目を超えてきただけに、ドル円の上値目途が難しいが、2015年の125円台からの下げ局面で大きな節目となった115円が大きな目標に。短期的には111円台半ばを付けると、もう一段の買いが意識される。

 ユーロドルで2015年に二度下値を止めた1.05が近づいており、他の通貨でもドル高が節目を意識する展開となっている点には注意。

用語の解説

ドッド=フランク法 正式にはドッド=フランク・ウォールストリート改革・消費者保護法(Dodd–Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)。リーマンショックなどの影響を受けて定められた金融規制に関する法律。2009年にオバマ政権によって提案され、上下院での修正を経て両院を通過。2010年7月に成立した。なお、ドッド=フランクは両院での修正の責任者であるドッド上院銀行委員会委員長とフランク下院金融サービス委員会委員長の名前をとったもの。
 トランプ氏及び同氏の周辺は同法案がリーマンショック後の米経済の回復を遅らせたと批判しており、法案の撤廃を主張している。
指値オペ 日銀が2016年9月の日銀金融政策決定会合において決定した「長短金利操作付き量的・質的緩和」において、特定年限の国債利回りの上昇を防ぐために実施するとされた金融調節手法。2016年11月17日に2年債と5年債を対象にして初めて実施された。

今週の注目指標

米FOMC議事録
11月24日04:00
☆☆☆
 11月1日2日に開催されたFOMCの議事録。次回、12月13日14日開催のFOMCでの利上げ決定がほぼ確実視される中で、金利の据え置きを決めた前回11月のFOMCでは、どのような話し合いがあったのかが注目されるところとなっている。
 このときのFOMCでは、それまで利上げを主張してきたローゼングレン・ボストン連銀総裁が据え置きに転じた。ただ、同総裁は12月に利上げに言及しており、大統領選直前というリスク意識もあっての据え置き転換であり、基本的なタカ派スタンスは変わっていないとみられる。こうした各委員の姿勢にも注目が集まる。
 なお、この時の声明では「利上げの根拠が引き続き強まった」との表現で、早期の利上げを示唆したものの、12月への言及は避けられた。会合の中でどれだけ12月が意識されていたのかがはっきりすると、ドル買いが入る可能性も。また、来年以降の利上げスタンス継続についても言及が見られると、こちらもドル買いに。
 サプライズ要素は少ないが、全般にドル買い材料が優勢となる見込みで、想定通りの内容が出てくるとドル円の110円台を買い支える材料となりそう。
独IFO景況感指数(11月)
11月24日18:00
☆☆
 ユーロ圏経済をけん引するドイツの代表的な経済指標。先月25日に発表された10月分の同指標は、9月分の数字を上回り2014年4月以来の高水準を記録した。ブレグジット懸念で一時後退したドイツの景況感は、このところ明らかな改善を見せている。こうした傾向が続くとユーロの買い戻しに寄与しそう。先日発表されたZEW(欧州経済センター)景況感指数同様に予想を超える好結果が出てくると、下げが目立つユーロドルを支え、1.07台への回復を誘う可能性も。
ブラックフライデー
11月25日
☆☆
 11月の第4木曜日に行われる米国の感謝祭の翌日の金曜日。この日から米国の大手小売店での年末のクリスマス商戦が本格的にスタートとなる。1年でもっとも売り上げの多い日と呼ばれるこの日。堅調な雇用情勢に支えられている米国の個人消費の回復の流れが本格化しているのかどうかを占う大切な指針となる。米国はGDPの約7割を個人消費が占め、他の先進国と比べても比率が高いことで知られている(日本は6割程度)。今後の米国の経済成長を見通すうえでも重要なポイントだけに、報道などでの売り上げ状況に注目。活況差が目立つようだと、ドル買いの安心感につながり、ドル円が115円のターゲットを目指す支えに。
                                                 

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