2016年12月05日号

(2016年11月28日~2016年12月02日)

先週の為替相場

OPEC減産合意がリスク選好誘う

 30日のOPEC総会と2日の米雇用統計が注目された週となった。

 週の前半はOPEC総会をにらむ展開に。イラン・イラクとサウジアラビアの対立が報じられ、総会直前まで不透明感が強まる中、リスク警戒でのドル安円高の動きが広がった。

 トランプ大統領による経済政策への期待感などから11月25日に114円手前まで上昇していたドル円は、111円台まで値を落とす展開が見られた。

 しかし、総会が始まると一転して合意ムードが報じられて、開催中から原油高ドル高円安の動きに。OPECは結局日量120万バレルの減産で合意。8年ぶりの減産合意に原油価格が上昇、リスク選好の動きが広がる格好でドル高円安の動きも強まった。

 

 ドル円はOPEC総会前の高値を超えて114円83銭近辺まで大きく上昇。ユーロドルが1.05台までユーロ安ドル高となるなど、ドル全面高の動きに。

 もっとも、高値トライ後は、週末を前に調整の動きが優勢となった。4日に行われたイタリアの国民投票を控えたリスク警戒の動きも。

 上院の権限を大幅に縮小し、現状の二院制を事実上の一院制に変更するための憲法改正の是非を問うイタリアの国民投票は、事前世論調査で否決が優勢と報じられた。否決された場合レンツィ首相が退陣を表明しているため、政治的混乱が生じるとの思惑が広がった。

 また、イタリアが解散総選挙となった場合、世論調査で与党と並ぶ支持率を誇る五つ星運動(用語説明1)が台頭する可能性が指摘された。同党は政権をとった場合ユーロ離脱の国民投票を行うと表明しており、イタリアのユーロ離脱の流れが強まる可能性があるとして、リスク警戒につながった。

 金曜日の米雇用統計は、11月の失業率がリーマンショック前の2007年8月以来の低水準となる4.6%まで低下。一方、非農業部門雇用者数は、11月分の結果自体はほぼ予想通りも前月の数字が下方修正されており、やや弱め。平均時給も予想外の前月比マイナスとなっており、好悪入り混じる結果に。

 ドル円が114円台を挟んだ振幅を見せるなど、市場は上下に反応した。その後は週末を前にしたポジション調整に押されて、ドル円が113円台前半に値を落とすなど、頭の重い展開に。

今週の見通し

 115円手前の売りを崩せず、週末を前に少し調整が入ったが、基調はまだドル高方向。

 OPEC総会での原油増産が決定したことで、リスク要因が一つ解消し、トランプラリー(用語説明2)が継続しやすい展開に。

 

 原油先高観が出ることで、オイルマネーなどの投資資金がより活発に動き出す期待があることも、ドル高に寄与しそう。

 ドル円は115円の大きな節目を前に、流石に過熱感もあるだけに、高値からの買いには慎重な姿勢も見られるが、下がったところでは確実に買いが出る流れか。

 トランプラリーがいつまで続くのかが今後の焦点となる。 

 ポイントとなるのは13日14日のFOMC(連邦公開市場委員会)か。利上げが確実視されている同会。声明や参加メンバーの金利見通し(ドットチャート)などで、2017年の追加利上げペースの加速が見込まれるなど、状況の変化が見られると、これまでの流れが変わる可能性は十分にある。

 それまでは基本的にドル高の流れが継続。ドル円は115円を試すタイミングを計る展開となりそう。

 週末のイタリアの憲法改正の是非を問う国民投票は、事前世論調査で否決が優勢。金曜日のイタリア株式市場が、他の欧州主要株式市場に比べて小さな下げに留まるなど、すでに織り込みが進んでおり、決定後のユーロ安は限定的なものになるとみられる。

 注目は8日のECB理事会。3月が期限となっている量的緩和について、延長が発表される見込み。発表に際して今後の終了に向けた姿勢が見られるとユーロ買いドル売りが広がる可能性も。この場合ユーロドルは1.07超えまでの回復が期待される。今後も当面のしっかりした緩和の継続が示唆されると、ユーロ売りドル買いの動きに。この場合は、ポイントの1.05を割り込み、中期的なターゲットであるパリティ(1ユーロ=1ドル)を意識する展開もありそう。

用語の解説

五つ星運動 イタリアの政党。2009年に同国の人気コメディアンらが結党。大衆の不満への賛同を支持基盤とするポピュリズムが特徴。EU離脱を主張しており、政権を取った場合、EU離脱の是非を問う国民投票を実施すると公言している。支持率はレンツィ首相率いる与党民主党とほぼ互角となっており、総選挙が行われた場合、政権を取る可能性がある。
トランプラリー トランプ次期米大統領が提唱する大幅減税、インフラ整備を中心とした公共事業拡大、金融規制緩和などのいわゆるトランポノミクスへの期待感から、米株高、ドル高が進み、さらにはそうした動きが世界中に波及していく一連の流れのことをトランプラリーと呼ぶ。

今週の注目指標

豪中銀金融政策理事会
12月06日12:30
☆☆☆
 前回11月の会合での議事要旨において、インフレリスクが概ね均衡していると示した豪中銀。これまでの利下げ局面が終了し、当面金利の変更はないという見通しが広がっている。今月の理事会でも金利据え置きが濃厚。これまで中国経済の減退や国際商品市場の低迷などの懸念が豪ドルを抑えていた面もあるが、ここにきて主力輸出品である鉄鉱石や石炭の価格はかなり上昇してきており、景気鈍化懸念が後退していることも、豪政策金利の当面の据え置き見通しを支えている。声明で前回以上に前向きな表現が出てくると、基本的には豪ドル買いの材料に。85円を超えて上昇トレンドが強まるきっかけとなる可能性も。
中国貿易収支(11月)
12月8日
☆☆
 トランプ氏の新大統領就任決定を受けて、対米輸出への影響が注目される中国。大統領選後からドル高元安の動きが広がるなど、経済への影響がすでに広がっている。中国自体の経済状況は一時の悲観論が後退し、まずまずの状況を保っているが、前年比でみた輸出・輸入額はともに減少。11月に関しては輸出の落ち込みがより厳しく、貿易黒字の減少が予想されている。こうした流れは対中国向けの原料輸出が大きい豪州経済にも悪影響。予想以上に弱めの数字が出てくると、豪ドル円の83円のサポートを試しに行く展開も予想される。なお、同指標は発表時刻未定。
ECB理事会
12月8日21:45
☆☆☆
 政策金利は現状維持見込み。来年3月が期限となる量的緩和策(QE)について、期限延長を含めた対応が行われるかがポイントになる。ドラギ総裁は現在のユーロ圏の弱いインフレ状況や景気動向などから当面の緩和姿勢維持を明言しており、今回の理事会で期限延長が示される可能性は高い。ただ、現状規模での延長は主たる買い入れ対象であるドイツ国債の需給ひっ迫感を誘うことから、規模の縮小や将来的なQE打ち止めを示唆するなどの対応が取られる可能性も。将来的なQEの縮小や廃止が強調されるとユーロ買いが広がる可能性。ユーロドルが1.07を超えて、直近の安値からしっかり回復する動きを誘う可能性。結果発表は21時45分。その後22時半からドラギ総裁の会見が行われる。

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