2016年12月12日号
先週の為替相場
ECB理事会後にドル高加速
欧州情勢に左右される展開となった。
4日のイタリアでの憲法改正の是非を問う国民投票は、日本時間5日朝に開票が行われ、否決される結果となった。否決された場合首相を辞めると明言していたレンツィ伊首相は、敗北宣言と辞任を表明した。
この事態をうけて5日からの週は一気にユーロ売り円買いで始まったが、すぐに値を戻す展開に。国民投票での否決は事前見通し通りであり、反応が限定的なものにとどまった形。
なお、5日朝にはキーNZ首相が家庭の事情で突然辞任を表明し、NZドル売りが入る場面が見られたが、こちらもイングリッシュ副首相兼財務相が後を継ぐとの思惑がすぐに広がり、政治的な継続性が意識されたこともあり、影響は限定的に。
5日の欧州市場ですぐにユーロ高が広がるなど、ECB理事会まではユーロ買いが優勢に。
8日のECB理事会では、これまで来年3月が期限であった資産買い入れプログラム(APP・用語説明1)について、来年末まで9か月間延長することが決められた。月ごとの買い入れ額についてはこれまでの800億ユーロから600億ユーロに減額された。
市場の事前見通しは買い入れ額を維持したうえでの半年間の延長であったため、発表直後は買い入れ額減額に反応し、ユーロ買い。ユーロドルが節目の1.08を超えて1.08台後半まで上昇。ユーロ円も123円台に乗せる展開となった。
しかし、買いが一巡すると、一転してユーロ売りドル買いが優勢に。
6か月間800億ユーロに比べて、9か月間600億ユーロでは総額として大きいこと、ドラギ総裁が今回の措置はテーパリング(量的緩和の縮小)ではないと明言したことなどがユーロ売りを誘った。
ユーロドルは1.05台まで下落。ユーロドルでのドル買いが、ドル全面高を誘う形でドル円も上昇。週末前には節目である115円を超えて上値を試す展開となった。
世界的な株高、米債利回り上昇によるドル高の流れが再開。ドル円に関しては高値警戒感も見られたが、株・利回りの上昇による押上げの勢いが勝った。
今週の見通し
当面はドル買いが継続するとみられる。
ダウ平均が史上最高値を更新。ドル買いの一番の材料であった米債利回りの上昇も再開しており、流れが止まらない。
注目は13日・14日の米FOMC(連邦公開市場委員会)。0.25%の利上げ自体はすでに織り込み済み。FF金利市場の織り込みはほぼ100%となっており、もし見送られた場合のインパクトは相当大きいが、現実味は薄いか。
焦点はFOMC参加メンバーによる金利見通し(ドットチャート)。年8回のFOMCのうち、半分の4回で公表される同見通し。前回9月のFOMC時点では2017年中に二回の利上げを行い金利目標が1.00-1.25%になる、という見通しが最も多い見方であった。
その後、大統領選でトランプ氏が勝利し、大型減税、大規模なインフラ投資、規制緩和などによって米景気の押し上げとインフレ圧力の上昇が予想される状況となり、米金利も大きく上昇する中で、こうした見通しがどこまで変化しているかがポイントに。
同チャート上での見通しの中央値が年3回以上の利上げにシフトするなど、FOMC参加メンバーの金利見通しの上方修正が明らかになるとドル買いの材料に。ドル円は118円を意識する展開が予想される。
もう一つの注目材料は、株・為替以外の市場動向。債券市場ではベンチマークである10年債の利回りが心理的に大きな節目である2.50%に迫っている。同水準を上回ると利回り上昇(債券価格下落)に拍車がかかる可能性がある。長期金利の変化は中長期的に大きなドル買い材料となるだけに注意したいところ。10日のOPEC及びOPEC非加盟国閣僚級会議で15年ぶりの協調減産が決まったNY原油価格動向にも注目。原油高は現時点ではドル高につながっているだけに、ドル円を支える材料となっている。
これら他市場動向が今のトレンドを維持するとドル円は116円を超えて上値を試してくる可能性が高い。
用語の解説
資産買い入れプログラム | 欧州中銀が実施する量的緩和策(QE)である資産買い入れプログラム(APP:AssetPurchaseProgrammes)。2014年9月の理事会で導入が決定され、15年1月から実施された。当初はABS(資産担保証券)・カバードボンドなどが対象とされ、2015年1月の会合で国債や政府機関債など公的部門の債券が対象に加わり(実施は同年3月から)、2016年3月には社債が対象に加わっている(実施は同年6月から)。 2015年1月時点で月額600億ユーロとされた購入額は、2016年3月に800億ユーロまで拡大している。期限は当初2016年9月までとされ、その後2015年12月の会合で2017年3月まで延長された。今回の会合で期限について2017年12月まで延長。延長分の9か月間については購入額を600億ユーロとすると変更された。 |
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ドットチャート | 年8回開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)では、そのうち半分の4回(通常は3月、6月、9月、12月開催のFOMC)において、参加メンバーによる経済および政策金利見通しが公表される。経済成長率、インフレ率などについて3年先までの各年末時点と長期の予想が、平均値、中央値、予想のレンジという形で示される。また、政策金利見通しについては、各メンバーの予想がグラフ上にドットとして示されることから、ドットチャートと呼ばれる。 |
今週の注目指標
米小売売上高(11月) 12月14日22:30 ☆☆☆ | 前回は予想を大きく上回る伸びを記録し、米国の消費動向の活発さを印象付けた同指標。今回の対象となる11月は米年末商戦がスタートするブラックフライデーやオンラインショップのセールが始まるサイバーマンデーを含んでおり、特に注目度が高い。調査会社などの調べによると、ブラックフライデー、サイバーマンデーともに売り上げはかなり好調。11月全体の数字も好結果が期待されるところとなっている。来年1月20日に就任するトランプ次期大統領への期待感も加わり、米国の消費動向はかなりの好調さが期待されており、そうした期待を裏付ける結果が出てくると、ドル買いの動きをサポートしてきそう。予想を上回る数字が出た場合は、ドル円も116円を超えてくる期待も。 |
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米FOMC(連邦公開市場委員会) 12月15日04:00 ☆☆☆ | 政策金利であるFF金利翌日物誘導目標については、現行の0.25%~0.50%から0.50%~0.75%への0.25%の利上げが確実な情勢。金利市場での織り込みはほぼ100%となっている。為替市場でも利上げが完全に織り込まれており、この結果だけを受けての市場の反応は限定的なものにとどまると予想される。焦点は参加メンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)。ドットチャートの結果が前回9月FOMC公開分の2017年中2回の利上げから、3回もしくはそれ以上に変化しているようだと、ドル買いの動きが広がりそう。ドル円は118円のターゲットに向けた動きが強まると予想される。 |
英中銀金融政策会合(MPC) 12月15日21:00 ☆☆☆ | 政策金利・量的緩和ともに現状維持見込み。来年3月が目途となる英国のEU離脱(ブレグジット)を前に当面は慎重な姿勢を継続すると予想されている。ただ、英国では直近のインフレ期待が強まっている。先週金曜日に公表された英中銀によるインフレ態度調査では、向こう一年のインフレ期待が2.8%まで上昇。英中銀がターゲットとする年2%の物価上昇を大きく上回る水準となっている。また、約40%の消費者が来年の利上げを予想しており、前回8月調査の21%から急上昇している。こうした状況を受けて、今後の利上げの可能性について、議論などが出てくるかどうか、結果発表と同時に公表される議事録の内容が注目される。利上げ期待が強まるようだとポンド買いの動き。ポンド円は6日に付けた直近の高値を超え、150円が視野に入る展開に。 |
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