2016年12月19日号
先週の為替相場
FOMC後ドル高強まる
米連邦公開市場委員会(FOMC)後にドル高の動きが一気に広がる展開となった。
注目された13日・14日の米FOMCは、市場の事前見通し通り0.25%の利上げを決定した。利上げ自体は完全に織り込まれていたが、市場は同時に発表された会合参加メンバーによる経済見通し(SEP)の変化に反応した。
年8回開催されるFOMCのうち、半分の4回で発表されるSEPでは、GDP成長率、失業率、物価および政策金利について、メンバーによる見通しが示される。特に政策金利見通しについては、各メンバーの見通しがチャート上にドットとして示されることで、ドットチャートとも呼ばれているもの。前回9月のドットチャートでは来年中に二回の利上げが中央値となっていたが、今回の発表では来年中三回に上方修正された。
トランプ次期大統領による経済政策への期待感が米国で広がっているが、実際の就任は来年1月20日であり、まだ不確定要素が多いこともあって、今回の見通しには反映されず、利上げ見通しも前回の2回が維持されるとの見方が広がっていた分、サプライズとなった。
実際、2017年のGDP成長率や失業率はともに9月から0.1%の改善にとどまり、インフレ見通しにいたっては前回の同水準で維持されており、トランポノミクスの影響は今回の見通しには大きく反映されてはいない。そのため、今後実際に景気が浮揚しインフレ圧力が高まった場合、更なる利上げの可能性が強まるという見方が、ドル高を誘った面も。
ドル円は115円ばさみでの推移から一気に117円台に乗せ、その後もドル高が続いて一時118円台半ばを超える場面まで見られた。ユーロドルが1.06台半ばから節目の1.05を割り込み、さらには1.04割れまでユーロ売りドル買いが進むなど、ドルは全面高の展開に。
15日の英中銀金融政策会合(MPC・用語説明1)は、政策金利・量的緩和とも据え置きを決定。金融政策の現状維持自体は事前見込み通りであったが、市場は議事要旨に反応した。議事要旨では今後のスタンスについて中立を維持した。英中銀は9日の消費者インフレ態度調査で直近のインフレ期待の上昇を報告、13日の消費者物価指数(CPI)の好結果もあって、インフレ圧力の拡大から利上げ方向を意識する姿勢を示すとの期待が見られたが、結果的に中立を維持したことで、ポンド売りとなった。ポンド円はドル円の上昇もあって148円台まで持ち上げられていた状況から146円台に。
今週の見通し
基調としてはドル買い円売りが継続も、クリスマスシーズンを前に、調整の動きも予想される。
米金利の上昇傾向が継続しており、中長期的なドル高への意識は継続。先週末の中国による米無人潜水機摂取の報道を受けてのドル売りの際も117円台前半がしっかりしているように、下がったところでの買い意欲が依然強い。
もっとも今週の後半から来週初めにかけてはクリスマス期間。市場の多くは休みとなる。通常、祝日であっても参加者がそれなりにいることが多いが、クリスマスに関しては参加者がほぼいなくなることが多い。いわゆるクリスマス相場(用語説明2)に入る時期であり、いったんポジション調整の動きが広がる可能性も。
ただ、あくまで調整の一環であり、流れが変わるとみる向きは少ない。クリスマス明けからのドル高トレンド再開に向けて、下がったところではドル買いが出てくる可能性が高い。
なお、取引が相当少なくなるだけに、大口の売買による予期せぬ振幅に要注意。クリスマス相場では基本的にほとんど動きのない展開が予想されるが、まれに荒っぽい動きをすることも。
クリスマス明けも、年内はそれほど重要な経済指標発表は予定されておらず、市場の注目は2017年に。
不透明感が強く、実際の就任後は失望感が広がるのではとの見方も一部であるトランプ次期大統領の経済政策については、当面は期待感継続でドルを支えてくると予想される。
基調としてのドル買いを意識しながら、クリスマス明けまでは117円台から118円台半ばにかけてのレンジ取引を中心とした展開が続きそう。
用語の解説
英中銀金融政策会合(MPC) | MPCはMonetary Policy Committeeの略。毎月上旬の水・木曜日に開催される。かつては結果のみが会合直後に公表されていたが、カーニー総裁の就任後、市場との対話重視の姿勢から改革が行われ、結果と同時に議事要旨が公表され、会合の状況がわかるようになっている(議事要旨を作成するため、プレ会合を本会合前に行い、プレ会合と水曜日の会合一日目でほとんどの議論を終了し、二日目は実質採決のみとして、要旨を作成する)。また、2月、5月、8月、11月の会合では、従来MPCとは別の日に発表されていた四半期インフレ報告をMPCの結果と同時に公表するように変更された。 |
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クリスマス相場 | クリスマス前後の取引参加者が極端に少なくなる時期の相場のこと。クリスマスに合わせて休暇を取っているケースも多く、通常の祝日などよりもはるかに参加者が少なくなる。 主要な経済指標発表などもなく、極端に閑散とした相場となるケースが多い。 ただ、まれに大口の注文が入ってくる場合があり、指値注文なども少なくなっているため、こうした注文を市場がさばききれず、思わぬ大きな値動きとなるケースも。 |
今週の注目指標
米イエレン議長講演 12月20日03:30 ☆☆ | FOMCでの参加メンバーによる政策金利見通しの中央値が来年中2回の利上げから3回に引き上げられたことについて、イエレン議長はFOMC後の記者会見で「小幅な調整」と発言し、市場の過剰な反応を警告する姿勢を示した。しかし、市場は見通しの変化を受けてドル買いで反応した。こうした流れを受けて、議長は講演でどのようなコメントを示してくるのかが注目される。 記者会見と同様に今回の変化を大きくとらえないように継承してくるようだと、いったんドル売りが広がる可能性も。117円を割り込むようだと、調整が加速し、115円を意識する展開も。 |
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日銀金融政策決定会合 12月20日 ☆☆ | 日本銀行は19日・20日と金融政策決定会合を開催する。結果発表は20日のお昼前後の見込み。トランプ氏の次期大統領就任が決まって以降、世界的に金利上昇の動きが広がっているが、今回の会合で日銀は現行の長短金利操作付き量的質的緩和を継続し、短期金利-0.1%、長期金利0%程度という目標水準も維持すると見られる。米国などとの金利差拡大の見通しが広がり、ドル高円安の材料となる可能性。118円台半ばをトライするきっかけとなる可能性も。 なお、今回の会合では景気判断が上方修正される可能性が高い。すぐに緩和後退につながるものではないが、市場で緩和政策の将来的な後退見通しが広がるようだと円買いに。ドル円は117円割れを意識する展開に。 |
米7-9月期GDP確報値 12月22日22:30 ☆☆☆ | 米景気回復の本格化を受けて、10月末に発表された7-9月期GDPの速報値は前期比年率+2.9%と高水準の伸びを記録。11月末に発表された改定値はさらに伸びが強まり+3.2%に上方修正された。今回発表される確報値はさらに上方修正されて+3.3%が期待されている。 リーマンショック前の水準まで低下した失業率に見られるように、米雇用市場の改善が著しく、個人消費が堅調。4-6月期に全体の数字を押し下げた在庫投資も回復が期待されており、全体を支えている。予想通りの数字が出てくるとドル買いの流れを支えていきそう。119円トライのきっかけとなる可能性も。 |
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