2017年01月10日号
先週の為替相場
振幅激しく活気のある展開
年明けの市場は上下に振幅を見せる展開となった。
週初は、これまでの調整相場の一服が期待されドル高が優勢となった。
クリスマスを前に、これまでのドル高に対する調整が目立つ展開となった。ドル円はISM製造業景況感指数(用語説明1)の強さもあって、3日の海外市場で一時118円60銭近辺まで上昇。昨年の高値近辺をトライする展開となった。
高値からはいったん調整が入る場面が見られたが、117円台前半まで戻した後、4日に再び118円台を付けるなど、当初はドルがしっかり。
もっとも、週の半ばから後半にかけては一転してドル売りに。先月の高値トライでも頭を抑えた118円台後半から119円にかけての重さが意識され、いったんポジション調整が入る展開に。5日のADP雇用者数が予想を下回ったことや、同日のISM非製造業景況感指数が全体の数字こそ予想より強かったものの雇用部門の数字が弱めに出たことなどで、6日の米雇用統計への警戒感が強まったことも、ドル売りに寄与した。
ドル円は年初にドル買いに回った短期筋のポジション調整の動きなどを巻き込んで値を落とし、一時115円07銭近辺まで値を落とす展開に。もっとも雇用統計前に115円台前半での売りには慎重姿勢が見られ、116円台を回復する場面が見られながら、注目の米雇用統計の結果発表を迎えた。
注目の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を下回ったものの、前回値が大きく上方修正されており、差し引きでまずまずの結果に。失業率の0.1%悪化も事前予想と一致。市場が反応したのは平均時給(用語説明2)の結果。前年比+2.9%と2009年4月以来の高水準を記録。前月比でも+0.4%と、前回11月分の-0.1%から一気に回復を見せた。この数字を受けて、今年中の利上げペース拡大の期待が広がり、ドル円は117円台半ばを回復するところまでドル買いに。
今週の見通し
トランプ次期大統領の大統領選勝利後初となる記者会見を11日に控え、市場は政治問題に神経質な反応を見せるいわゆる政治相場の様相を呈している。先週末に米ダウ平均株価が節目の2万ドル目前まで上昇するなど、株高利回り高からのドル買いの動きが入っているが、政治リスクを意識した円の逃避買いも見られ、上下ともにレンジを超えた動きがやりにくい。
質疑応答のある記者会見に慣れていないことから、失言が飛び出すのではとの警戒感がドル買いを抑える格好となっている。
もっとも、米株高米利回り高の流れは崩れておらず、政治リスクが収まるとドル高円安基調の再開もありそう。
ただ、11日の会見まではドル買いが入りにくい。頭の重さを意識しながらのレンジ取引が予想される。
115円を割り込むようだと、もう一段のポジション調整を誘いそう。113円台半ばあたりまで売りが進む可能性も。
クロス円もやや軟調地合い。特にポンド円はハードブレグジットがらみの懸念が広がっており、警戒感が強い。英国の最高裁判所がEU基本条約第50条の発動に関して、政府判断ではなく議会承認がいるかどうかの判断を今月下すこととなっており、こちらも政治リスクが意識されている。メイ首相が主張しているように政府判断のみで発動が可能となると、一気に事態が進展する可能性。この場合は基本的にポンド売りが強まる。ポンド円は一気に135円トライなどの動きが出る可能性も。
用語の解説
ISM製造業景況感指数 | 米国の供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)が、300社以上の製造業の購買・供給管理責任者を対象として行うアンケート調査を基にした指標。毎月の第一営業日に発表される。日本の日銀短観や各国のPMIなどに類似する指標で、速報性に優れていることなどから重要視される。生産、新規受注など10項目の調査が実施され、そのうち雇用に関する調査については、労働省の雇用統計の関連指標としても注目される。 |
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平均時給 | 米国の労働省が発表する勤労統計の一つで、非農業部門雇用者数や失業率と同時に発表される。平均賃金ともいう。雇用情勢がひっ迫すると平均時給が上昇圧力を受けるため、雇用市場の動向を示す指標の一つとして注目される。また、週平均労働時間や雇用者数と掛け合わせると米国の勤労者所得(農業部門除く)が算出出来る。所得の増加は個人消費の活性化につながるため、この点でも注目度が高く、平均時給の上昇が利上げに向けてのハードルを低くするとみなされている。 |
今週の注目指標
トランプ次期大統領 記者会見 1月11日 ☆☆☆ | 20日に就任式を迎えるトランプ次期大統領が11日に大統領決定後初となる記者会見をNY市で行う。3日に本人がツイッター上で表明し、同氏の顧問も認めた。トランプ氏は昨年7月の会見以降一度も会見を開いていない。前日10日にオバマ大統領がシカゴでお別れ演説を行う予定となっており、その演説に答える格好となる。大統領就任後の政策運営について、様々な発言が出てくると予想され、内容次第で相場が大きく荒れる可能性。トランポノミクスの実現を力強く宣言するものとなると基本的にはドル買い材料。120円超えの契機となりそう。 |
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イエレン米FRB議長 タウンミーティング出席 1月13日09:00 ☆☆ | イエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長が主催するタウンミーティングが現地時間12日に行われる。FRBの役割などについて話をする他、聴衆だけでなくWEB閲覧者からの質問にも答えるとしており、今後の金融政策運営についての言及も出てくると予想される。11日のトランプ次期大統領の会見で、FRBに対する要望などが出てくる可能性もあり、その場合、質疑応答の中で言及がある可能性が高いため、11日の会見次第では注目度がさらに強まる。今後の利上げ期待が強まるようだとドル高が広がると見られ、120円が意識される可能性も。 |
米小売売上高(12月) 1月13日22:30 ☆☆☆ | 米国のGDPの約7割を占める個人消費動向があらわされることもあり、注目度の高い同指標。前回11月分は自動車販売が減少したこともあり、10月分から伸びが鈍化。事前予想値も下回る弱めの結果となった。もっとも、全体の数字、変動の激しい自動車を除いた数字、GDP算出に利用される自動車、ガソリン、建設資材、食品サービスがいずれも微増ながらプラス圏を維持したこともあり、米国の消費動向の堅調さを印象付ける格好となった。今回は自動車販売が高水準となるなど、関連指標が好調さを示していることもあり、全体の予想値が前月比+0.7%、自動車を除いたコアが同+0.5%と、前回を大きく上回る伸びが期待されている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、好調な数字を示した6日の米雇用統計と合わせ、米景気の力強さが意識され、120円を中期的なターゲットとするドル買いにつながる可能性も。 |
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