2017年01月16日号

(2017年01月09日~2017年01月13日)

先週の為替相場

ドル安・ポンド安が目立つ展開に

 9日からの市場はドル安ポンド安の目立つ展開となった。

 市場が注目したのは11日に行われたトランプ次期大統領による記者会見。トランプ氏は大統領選勝利後、定例となっていた記者会見を行っておらず(昨年7月の会見が最後であった)、ツイッターなどSNSを通じて、短文で一方的に主張を公開していた。そのトランプ氏がついに会見に応じるということで、今後の経済政策動向への思惑なども絡んで重要な材料とされた。

 会見を前にポジション調整の動きが優勢となり、週初からドル売りの動きが広がった。ドル円は117円台から115円台前半まで値を落とし、その後少し買い戻しが入って会見を迎えた。

 会見では本来のテーマであった自身の事業と大統領職務との利益相反(用語説明1)を避けることについての説明に加え、中国・日本・メキシコを名指しで貿易問題があると指摘。オバマケアやメキシコとの国境の壁建設についてなど、大統領選において話題になった材料についての言及が見られた。

 しかし、市場が期待した財政支出や減税、規制緩和などについては具体的な言及がなく、市場は会見後失望感からドル売りを強める結果となった。

 ドル円は一時113円台まで下落。ユーロドルなどでもドル売りが入るなど、ドルは全面安に。

 一方、別材料で売りが強まったのがポンド。

 英国のメイ首相が欧州単一市場へのアクセスが外れてもEU離脱を強行するとの観測が広がり、ハードブレグジットによる英経済への悪影響を懸念したポンド売りが広がった。

 ポンド円は週初の144円手前から140円を割り込むところまでポンド売りが広がっている。

今週の見通し

 木曜日にECB理事会、金曜日に米大統領就任式と、重要なイベントが週の後半に控えている。

 先週末、米経済指標の堅調な結果を受けたドル買いが、ごく短時間にとどまり、往って来いで安値圏に戻されたように、ドルの頭は依然として重い。

 ただ、重要イベントを前に、突っ込んだ売りにも慎重な姿勢が予想されており、基本的にはレンジ取引か。

 ドル円は115円台を維持できなかったことで、115円手前から売りが出やすくなっている。113円-115円あたりが基本的なレンジとなりそう。

 ポンド円でのポンド安円高も、リスク警戒感での円高を誘いそう。

 ポンドに関しては、ハードブレグジット懸念での売りが根強い。

 メイ首相はこれまでも離脱について強気な発言を繰り返してきた。3月までにEU離脱の正式なプロセスのスタート(リスボン条約第50条(用語説明2)に基づく離脱の通達)を行うという従来の姿勢を維持し、ハードブレグジットを回避することよりも、移民を制限するための立法権の確保を重要視する姿勢を明らかにしつつある。

 メイ首相の判断は政治的にはともかく経済的には明らかなマイナスと見られており、ポンド売りが強まる可能性が高い。

 すでに先月半ばの高値147円台後半から10円以上ポンド安が進んでいるが、もう一段大きなポンド売りが入り135円割れを試す可能性も。

用語の解説

大統領職務との利益相反 利益相反とは一方の利益となると同時に他方への不利益となる行為のこと。米国の規定上、公職についている者は、自分の職務権限によって影響する権益の放棄義務があるが、大統領に関しては規定の対象外となっている。もっとも、歴代大統領は基本的に利益相反を回避する姿勢を示してきた。トランプ氏の不動産業・海外事業は利益相反に値する可能性が高いため、メディアなどから説明が求められていた。トランプ氏は今回の会見で自身のビジネスを息子に譲り、自身は手を引くことですべて解消されると主張した。
リスボン条約第50条 2007年にリスボンのジェロニモス修道院で署名された(発効は2009年12月)従来のEU基本条約の修正条約のことを通称リスボン条約と呼ぶ。同条約によると、全ての加盟国は憲法上の要件の下、離脱する権利があることが示されており、同条約第50条において離脱についての手続きが定められている。離脱を希望する加盟国は欧州理事会(EUの最高協議機関)に離脱を通告することで正式な離脱手続きが始まる。その後、当該国と理事会との間で脱退協定締結に向けた交渉が行われる。同協定の発効日から離脱国はEU法の適用を外れる。

今週の注目指標

メイ首相 記者会見
1月17日
☆☆☆
 英国のメイ首相が17日に行う演説(時刻未定・18日になる可能性も)において、移民制限を優先するため、欧州単一市場と関税同盟から離脱する用意があることを表明すると、英紙が報じている。
 昨年6月の国民投票において、EUからの離脱を決めた英国。離脱の要因となった移民問題に関して制限をかけつつ、欧州単一市場へのアクセスを残すソフトブレグジットへの道を探っていたが、EU側との交渉が難航。
 今回の会見で、欧州単一市場からも離れるハードブレグジットとなっても、EU離脱を進めるべきというメイ首相の姿勢が示される模様。
 ポンドにとっては大きな売り材料。135円を割り込む大きな動きになる可能性が高い。
ECB理事会
1月19日21:45
☆☆☆
 ECB理事会が19日に開催される。先月の理事会で、量的緩和(QE)について今年いっぱいの継続(従来は今年3月まで)が発表されており、政策の変更余地は小さい。もっとも、今月12日に発表された当該理事会の議事要旨では、一部メンバーが期間延長に反対したことが明らかになっている。
 その後、ドイツ連邦統計局は2016年のドイツの経済成長が前年比+1.9%と5年ぶりの大きな伸びを記録したことを公表。ユーロ圏の一部の国で経済成長が著しいことが判明しており、今後の緩和継続について市場の思惑が交錯している。
 理事会での決定自体に波乱要素はほぼないが、その後22時半から行われるドラギECB総裁の会見で、ドイツなどからの緩和終了圧力に対して、どのような発言が出てくるのかが注目される。
 緩和姿勢の後退が意識されると、ユーロは買いが入りそう。ユーロ円は直近の上値を抑えている123円台後半を試す可能性も。
米大統領就任式
1月20日
☆☆☆
 20日の就任式での宣誓をもって、トランプ氏が正式に米国の第45代大統領に就任する。ワシントンの連邦議会前で行われる就任式は現地時間(米国東部時間)正午前から始まり、まず次期副大統領のペンス氏が宣誓を行い、正午ごろトランプ氏が宣誓を行う。
市場の注目は宣誓後に行われる大統領就任演説。
 メインテーマは大統領選の勝利演説でも使われた「Dream Big(大きな夢)」。
 経済政策などへの具体的な言及はまずないと思われるが、強いリーダーシップを印象付け、今後の様々な政策の実現に向けて前向きな姿勢を示すことができると、ドル買いが入る可能性も。
 市場の今後の期待感が強まるとドル円が120円を目指すきっかけとなりそう。

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