2017年01月23日号

(2017年01月16日~2017年01月20日)

先週の為替相場

英・米のイベントが相場に大きく影響

 16日からの週は、注目材料となった英・欧・米のイベントを受けて、神経質な展開が見られた。

 週初は英ブレグジット絡みの動きが目立つ展開となった。週末に英紙が「メイ首相は17日の演説で欧州単一市場(用語説明1)からの離脱を発表」と報じ、ハードブレグジット懸念からのポンド売りが広がった。

 17日の演説でメイ首相は事前報道通り欧州単一市場からの離脱を表明。ハードブレグジットへ向かう姿勢を示した。もっともリスボン条約第50条に伴うEU離脱のための最終的な通告に関しては、議会の承認を得る姿勢を表明するなど、英国議会への配慮も見せた。

 この演説を受けて、ポンドは一転して急騰。ポンド円は137円近辺から140円をつける動きとなった。

 こうしたポンド絡みの動きが週初から目立つ一方、ドルに関しては金曜日の米大統領就任式に向けて、神経質な動きが続いた。

 11日のトランプ会見以降頭の重かったドル円は、トランプ氏が米紙のインタビューで「ドルは高すぎる」と発言したことを受けて、ドル売りが加速。

 さらに18日に行われた、トランプ政権での商務長官に指名されたウィルバー・ロス氏(用語説明2)の上院商業科学運輸委員会での指名承認公聴会で、「悪意ある通商慣行や国有企業、政府補助を受けた生産を容認すべきではない」「中国は最も保護主義的な国」など中国への警戒感を示したことも、ドル安円高の要因となった。

 もっとも、こうした動きが18日のイエレンFRB議長の講演で一変。議長は講演において「FRBは2つの目標に接近」と発言。インフレ率(PCEデフレータ)2%、雇用の最大化というFRBの2つの目標に近づいたことで、今後は追加利上げ基調が強まるとの市場の期待が広がり、ドル買いが一気に強まった。

 112円台半ばまで値を落としていたドル円は115円台半ばを回復する動きに。

 その後115円を挟んでもみあって、20日の大統領就任式を迎えた。

 就任式でのトランプ大統領の演説はこれまでの選挙戦同様にアメリカファーストの姿勢を強調するものとなった。また、演説後にホワイトハウスのWEBサイトでTPPの離脱方針などが公表されたこともあり、市場では保護主義的な動きに対する警戒感からドル売り円買いが広がる展開となった。

今週の見通し

 トランプ政権下での最初のポイントは通商問題となりそう。トランプ氏が主張する財政拡大や減税については議会承認(過半数)を得るため、共和党議会との調整が必要。ドッド・フランク法の廃止などの法案問題については、議会で60議席の賛成が必要なため、共和党に加えて民主党議会との協力が必要となる。このためすぐには動きが出にくい。一方で通商問題などは、外交問題が中心で大統領権限が非常に大きいため、最初に動きが出やすい事案となっている。

 今のところ、対中国を中心に牽制が行われているが、11日の記者会見で中国、メキシコと並んで日本が名指しされたこともあり、日本に対しても警戒感が広がっている。この状況はドル円にとって大きな売り材料(ドル安円高材料)であり、当面は頭の重い状況が続きそう。

 先週の報道通り、トランプ氏がドル高に対する強い警戒感を持っているとすると、直接のドル高是正発言などにも注意が必要で、ドルを買いにくい状況となっている。

 ドル円は下方向へのリスクを強く意識した展開が続きそう。

用語の解説

欧州単一市場 EU域内で人・物・サービス・資本の移動を自由にし、国境や障壁に妨げられることなく欧州を一つの市場にするという施策。EUの基本目標の一つ。EUの前身である欧州経済共同体(ECC)の設立条約の前文に目標として掲げられており、1985年のシェンゲン協定によって移動の自由が定められている。
ウィルパー・ロス 米国の著名な投資家。米投資銀行に勤務した後、投資会社を設立。破綻企業の再生などを投資手法とした。トランプ大統領によって商務長官に指名された。指名を受けて18日に上院商業科学運輸委員会において指名承認公聴会に出席した。ニューヨークの日米交流組織ジャパン・ソサエティーの会長を2010年から努めており、知日派として知られている。

今週の注目指標

EU離脱についての英最高裁判断
1月24日18:30
☆☆
 英国の最高裁判所は、英政府がEU離脱(ブレグジット)交渉の正式なスタートとなるEU基本条約第50条に基づくEUへの通告を行うにあたって、議会の承認が必要かどうかの判断を24日に言い渡すことを明らかにしている。
 当初メイ首相は議会の承認を得ず政府権限での通告を予定していたが、ロンドンの高等法院が昨年11月に議会の承認が必要との判断を示し、政府が最高裁に上告していたもの。英国の国会議員は離脱反対派が多数を占めるため、承認が必要となると通告が難しくなるとの思惑が一時広がっていた。ただ、メイ首相は承認が必要になるとの判決を見越して調整を進めており、3月末までに議会承認を得ることができるようになるとの見方が広がっているため、今回の判決での混乱は限定的なものにとどまりそう。いずれにせよ議会承認が必要との正式判断は、一旦はポンド買いの材料となる。ポンド円が145円を回復するきっかけとなる可能性も。
英第4四半期GDP
1月26日18:30
☆☆☆
 ブレグジット絡みの警戒感が強いものの、英国経済自体は堅調な推移を続けている。そのため、ブレグジット関連が落ち着くと、ポンドは上昇基調に復するとの期待感が強い。26日に発表される英第4四半期GDPにより、そうした堅調な英経済状況が印象づけられると、ポンド買いが強まる可能性も。予想は前期比+0.5%、前年比+2.1%と第3四半期のそれぞれ+0.6%、+2.2%から小幅に鈍化。もっとも水準的にはかなり順調な数字で、予想前後の数字が出てくると、英景気回復に対する安心感に繋がりそう。ポンド円にとっては140円近辺を支えるサポート材料となりそう。
米第4四半期GDP
1月27日22:30
☆☆☆
 今年も複数回の利上げが期待されるなど、経済成長への期待感が強い米国。現状の景気動向を確認するもっとも重要な指標の一つである実質GDP速報値が発表される。第3四半期は前期比年率+3.5%と2014年第3四半期以来の高い伸びを記録した。もっとも、この数字は南米で大豆が不作になったことによって、米国産の大豆輸出が急激に伸びたことによる特殊事情の影響が大きい。また、第2四半期に予想外にマイナスとなった在庫が回復したことも全体を支えていた。今回の予想は+2.2%と、前回からは伸びが鈍化も、水準としては強め。予想前後の数字が出てくると、今後の追加利上げに対する期待感につながり、ドル高への期待感も。ドル円の目先のターゲットは115円台前半。中期的なターゲットは118円近辺。

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