2017年01月30日号

(2017年01月23日~2017年01月27日)

先週の為替相場

トランプ相場

 23日からの週は、20日に発足したトランプ新政権の動向に右往左往する展開となった。

 週初はドル売りが優勢な展開となった。TPPからの離脱やメキシコとの壁の建設(用語説明1)推進などの動きに加え、23日に実施された企業幹部との朝食会で生産拠点の海外移転について極めて大規模な国境税を課すとの発言があるなど、保護主義的な動きを一気に進める大統領に対する警戒感がドル売りを誘った。

 大統領以外でも次期財務長官に指名されているムニューチン氏が「過度に強いドルはマイナス」との発言を行うなど、新政権絡みでのドル売りが目立った。

 ドル円は大統領就任式前につけた安値をわずかながら割り込み、今年の最安値を更新。もっとも、その後は一服感もあって値を戻す展開となった。 

 トランプ大統領の経済政策への期待感などから、米株が上昇。ダウ平均株価が史上初めて2万ドルの大台に乗せたことなどがドルの買い戻しに寄与した。

 米国債利回りの上昇も目立ち、ドルを支える結果に。

 注目された米第4四半期GDPは弱めとなり、瞬間売りが出たものの、下がったところでしっかり買いが入るなど、ドルの堅調地合いを継続し週の取引を終えた。

 その他通貨で目立ったのはポンド。

 英国の最高裁判所は24日、EU離脱に関する欧州議会への通告に関して、実施には英国議会(用語説明2)の承認が必要という判断を示した。英下院議員はブレグジット反対派が過半数を占めているため、この判断によるブレグジット進行の後退が意識された。しかし、一方で同判断ではスコットランド議会や北アイルランド議会の承認は不要と示された。メイ首相の今月の演説以降、英国議会内では首相に同調する動きが広がっており、議会承認に向けた調整は可能と目されている。一方、スコットランド議会などでの承認はほぼ不可能であるため、裁判所判断は結果的にブレグジットに追い風との思惑がその後広がった。

 ポンドはこうしたブレグジットへの思惑をめぐり神経質に振幅。最終的にはポンド買いが優勢となった。ブレグジットへの動き自体は進展という見方が強まったが、すでに織り込み済みであり、ここに来て延期などの事態が避けられ、混乱が回避されたという思惑が広がって、ポンド買いの動きに繋がった面も。

今週の見通し

 トランプ政権の動向をにらみながらの政治相場が続きそう。一部の国からの入国の制限なども含め、外交・通商面での混乱が生じており、ドルの頭を押さえる展開に。

 もっとも、トランプ氏の経済政策は本来ドル高の材料だけに判断が難しい。

 減税や財政支出に関しては、共和党との調整が難しいと見られていたが、大統領の政策実現への強い意欲を受けて、期待感が広がっている。

 これまで頭を抑えてきたダウ平均の2万ドルという壁を超えたことで、米株高がさらに進む可能性があることも、ドル買い期待につながっている。

 今週は31日、1日に米FOMC(連邦公開市場委員会)、3日に米雇用統計と、週の半ばから重要イベントが予定されており、週の初めは様子見ムードも。

 特に米雇用統計は、強めの数字が出てくると追加利上げ期待が強まり、ドル買いが進む可能性が高い。先週末の米第4四半期GDPの弱さを受けて、FOMCが想定する年3回の利上げは難しいという思惑が広がっているが、雇用統計の結果次第では再び期待感が強まる可能性も。

 114円前半~115円台前半にかけての水準を基本レンジとして、ドル高方向への動きを意識する展開となりそう。

用語の解説

メキシコとの壁建設 トランプ米大統領は25日、視察中の国土安全保障省においてメキシコとの国境沿いに壁を築くように命じる大統領令に署名した。選挙戦の中でも再三主張していた壁の建設に関して、正式に動き出す格好となった。費用についてはまずは米国の連邦予算で負担するものの、最終的にはメキシコ政府が負担するという主張をしているが、メキシコ側は拒否する姿勢を示している。共和党のライアン下院議長が、「米国の安全のための措置、トランプ政権とともに取り組んでいく」と共和党内には賛同する動きも。
英国議会 上院とも呼ばれる貴族院と、下院とも呼ばれる庶民院の二院制。庶民院での決議事項について、貴族院が反対した場合でも成立までの時間が長引くだけで決議が覆ることはない(貴族院が修正案を出した場合も基本的には庶民院案のまま決定される)など、庶民院が優越権を持っており、議会承認などという場合、一般的には庶民院での承認を指す。庶民院は現在650議席中与党保守党が330議席を占め単独与党となっている。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
1月30日・31日
☆☆☆
 日銀の金融政策決定会合が1月30日、31日に開催される(結果発表は31日昼前後)。現状の金融政策「長短金利操作付き量的・質的緩和」は維持される見込み。今回の会合は3ヶ月に一度公表される「経済・物価情勢の展望レポート」の公表回に当たっている。直近の景気動向から、2017年の経済成長率見通し及び物価上昇率見通しについては、上方修正される可能性が高い。経済成長率に関しては、GDPの基準改定もあり前回の+1.3%から1.5%前後に変更されると見られる。2017年の物価上昇率に関しては7月時点での+1.7%から前回+1.5%に下方修正されたが、今回は+1.6%程度に回復する見込み。ただ、2%目標の到達時期に関しては前回同様に18年度を維持するとみられる。物価上昇率の予想以上の上方修正や、目標到達時期の前倒しなどがあると円買いにつながる。この場合、ドル円は113円を試す展開も。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月31日・2月1日
☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)が1月31日、2月1日に開催される(結果発表は日本時間2月2日午前4時)。前回のFOMCで追加利上げを実施したところであることに加え、今回のFOMCは議長会見や参加メンバーによる経済見通しなどの発表が行われない回に当たるため、注目度はやや低い。
 20日に誕生したトランプ大統領が、外交・通商問題などを中心に様々な動きを進め、世界的に不透明感が強まる中、今回のFOMC声明でこうした状況への言及があるのかなどが注目材料に。言及内容にもよるが今後の利上げに慎重な姿勢が見られた場合は、ドル売り材料となる。ドル円は114円をしっかりと割り込みに行く可能性。
米雇用統計(非農業部門雇用者数)
2月3日22:30
☆☆☆
 前回の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が予想に届かなかったものの、平均時給が予想以上に上昇するなど、総じてまずまずの結果となった。今回のNFPは前月比+17.5万人が予想されており、前回の+15.6万人から伸びが拡大すると見込まれている。イエレン議長は1月18日の講演で「FRBは2つの目標(雇用の最大化、インフレターゲット2%)に接近している」と発言しており、雇用情勢の堅調さに自信を見せている。今回の雇用統計が予想通りもしくはそれ以上の数字を示してくると、今後の利上げへの期待に繋がりそう。この場合ドル買いの大きな材料となり、ドル円は116円を意識する展開に。

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