2017年02月06日号

(2017年01月30日~2017年02月03日)

先週の為替相場

トランプリスクが円買いに

 1月30日からの週も、トランプ大統領の言動に相場が振り回される展開が続いた。

 トランプ大統領がシリアやイランなど中東・アフリカの7か国からの入国禁止の大統領令(用語説明1)を出したことを受けて、週明けからドル売りの動きが広がった。世界的な不透明感の高まりが、ドル売りに加え、リスク警戒感からの円買いを誘い、ドル円は値を落とした。

 27日まではトランプ大統領の経済政策への期待感からドル買いが優勢となっていたが、雰囲気が一変した格好に。

 さらにトランプ大統領が31日「他国は通貨切り下げで優位に立っている。日本と中国は市場を手玉に取った」と発言したことで、円高が強まる展開に。ドル円は112円10銭近辺までと、サポートとみられる112円に迫る動きを見せた。

 その後はいったん買い戻し。週末の米雇用統計を前にして、相関関係の高いADP雇用者数やISM製造業景気指数などが、予想を大きく上回る好結果となり、ドルの買い戻しを誘った。ドル円は114円手前まで上昇。

 31日、1日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、今後の追加利上げについて目立ったヒントを与えず。3月の利上げが一部で期待されている中で、示唆がなかったことでドル売りが強まる展開となり、31日の安値をわずかに下回る動きとなった。もっとも、この動きでも112円台が維持されたことで、その後は買い戻しが入って3日の米雇用統計へ。

 米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る好結果。瞬間ドル買いが入り、ドル円は113円台半ば手前まで。もっとも、平均時給が予想を下回り、インフレ圧力の拡大傾向が見られないとして、すぐにドル売りに転じ、一転して112円台前半まで値を落とした。

 米国に関しては、今年2回もしくは3回の利上げが予想されている。回数のカギを握るのはインフレ傾向と見られており、通常重要視される非農業部門雇用者数よりも、平均時給に対する市場の注目度が高まっている。

 なお、金利面での注目度が高まる中で、日本の金利にも注目が集まりつつある。3日の市場では午前のオペで市場が期待した大幅な増額や指値オペ(用語説明2)が見送られ、日本の長期金利が上昇。10年債利回りが0.15%を超える場面が見られた。日銀は長期金利の目標をゼロ%程度としており、-0.1%~+0.1%に抑えると見られていただけに、この動きはサプライズとなり、一時円高が優勢に。この長期金利の上昇に対して、日銀金融市場局は指値オペを通告。一気に金利が低下し、ドル円は112円台半ばから113円台までドル高円安が進行した。

今週の見通し

 日米首脳会談などを控え、トランプリスクを意識する展開となりそう。

 非農業部門雇用者数の数字などにも表れているように、現状の米景気動向はかなりしっかりしている。ただ、ドルを買い上げるにはトランプ政権がらみの不透明感が強い。

 今週は目立った指標発表予定がないだけに、市場はトランプ政権の動向に神経質になりそう。

 トランプ大統領は3日にドッド・フランク法撤回に向けた大統領令に署名するなど、選挙中の公約実現に向けた動きを続けている。

 同法が実際に撤回されるとドル買いの材料となるが、法改正にはある程度時間を要することもあり、週明けの反応は限定的。ただ、本来は大きなドル買い材料だけに、今後、実際の法改正に向けて動きが広がると、ドル高円安のきっかけとなる可能性。ドル円は115円台を目指す可能性も。

 日米首脳会談では、為替問題への言及がどこまであるのかが注目材料に。安倍首相だけでなく、麻生財務相や財務省の市場関係の責任者である浅川財務官なども同行予定。

 トランプ大統領が円安牽制姿勢を続けるようだと、ドル円は112円割れを試す可能性が高い。直近同水準がサポートとして意識されており、割り込むと110円割れが現実味を帯びてくる。

 その他注目の通貨としては、中銀金融政策理事会の結果が7日に公表される豪ドル。

 国際商品市場の堅調さなどを背景に、豪景気は回復傾向にあるが、豪州としてはかなり低い物価動向が続いており、インフレ目標達成のために豪中銀が今年前半に利下げを実施するという期待が少数派ながら根強く残っている。中銀声明などでその期待が高まるようだと豪ドル売りも。もっとも、今の経済状況からは中立バイアスを維持する可能性が高い。この場合年後半に向けての利上げ期待が意識され、豪ドルはしっかりの展開が期待される。先月後半二度上値を抑えた87円超えの水準をしっかりと上回り、87円台半ばを付けてくると、長期的な流れが変わる可能性も。

  

用語の解説

大統領令 Executive Order、EOとも略される。米国の大統領が議会の承認を得ることなく、連邦政府や軍に対して行政権を直接行使することができる命令。
 法律と同様の効力を持つが、連邦議会が大統領令に反対する法律を制定したり、連邦裁判所が差し止め判断や違憲判断を出すことなどで対抗することは可能。
指値オペ 日本銀行による「長短金利操作付き量的・質的緩和」の実行にあたって導入された新しい金融政策手段。日銀が定めた金利水準(現状では長期金利を0%程度)から逸脱した際に、日銀が指定する利回りで国債を無制限に(もしくは買い入れ額の目途を示して)買い入れるもの。

今週の注目指標

豪中銀金融政策理事会
2月7日12:30
☆☆☆
 豪中銀の金融政策理事会の結果が7日12時半に発表される。政策金利であるOCR(オフィシャルキャッシュレート)は1.50%で現状維持の見込み。先月発表された第4四半期の豪CPIが弱めに出たことで、今年前半の利下げ期待が一部残っており、今回の理事会にしても、ごくごく一部で利下げの期待がある。ただ、ほとんどの専門家が据え置きを予想しており、金利面での波乱要素は少ない。注目は声明の内容となりそう。保護主義的な政策を進める米国のトランプ政権の動向は、天然資源輸出が経済の大きな部分を占める豪州にとって大きなリスク。さらには難民問題で豪首相と米大統領の対立が報じられたところでもあり、トランプ政権に対するリスクなどが声明で言及されるのかが注目材料に。声明に組み込まれると警戒感が強まり豪ドル売りも。豪ドル円は85円を割り込む可能性も。
日本国際収支(12月)
2月8日08:50
 12月の日本の国際収支が8日に発表される。米国との通商問題がクローズアップされている状況だけに、全体の黒字額だけでなく、対米貿易黒字などの数字にも注目が集まる。経常収支はこのところ6か月連続で前年同月比プラスとなるなど、黒字拡大傾向が目立っている。今回も約1.18兆円と、11月分よりは黒字額減少も、7か月連続での前年同月比増が期待されている。貿易収支が6月以来の高水準である7400億円の黒字と予想されており、全体を押し上げている。予想通りもしくはそれ以上の結果となり、対米黒字の拡大も見られるようだと、日米首脳会談まで神経質になっている市場はドル売り円買いで反応する可能性。111円トライの動きまで期待される。
日米首脳会談
2月10日
☆☆☆
 安倍首相が訪米し、ワシントンDCでトランプ米大統領と会談を行う。トランプ氏が正式に大統領に就任する前に非公式会合を行っているが、就任後としては初の会談となる。会談後、トランプ大統領の別荘があるフロリダ州に移動し、翌11日も会談を行う予定。
 新政権からは通商問題で円安誘導批判を受けるなど、緊張感が高まっているが、安倍首相とトランプ大統領との関係は良好と伝えられており、為替問題などについて前向きな結果が出てくることが期待されている。円安批判が収まるような発言が出てくるとドル円の買い材料に。115円を目指す可能性も。

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