2017年02月13日号

(2017年02月06日~2017年02月10日)

先週の為替相場

週末にかけてドル高

 政治リスクを意識する展開が続いた。

 週の前半は仏大統領選をめぐるリスクが意識された。4月から5月にかけて行われる仏大統領選挙は、先月後半まで支持率でトップに立っていたフィヨン元首相が、夫人に対する不正給与疑惑で一気に支持率を落とした。変わって支持率でトップに立ったのが極右政党国民戦線のルペン党首。決選投票では反極右勢力がまとまるため、現在支持率で二位のマクロン元経済相が圧勝すると見込まれているが、市場は反EUを掲げるルペン氏当選の可能性を警戒して、ユーロ売りを進める展開となった。

 先月後半に123円台をつけていたユーロ円は120円の大台をしっかり割り込むところまで売り込まれる展開に。

 ユーロ円でのユーロ売り円買いからドル円も重くなり、ドル円は111円台をつける場面が見られた。

 週の後半にかけてはドル買い円売りの動きが優勢となった。

 トランプ大統領が9日の航空業界との懇談において「2~3週間のうちに目を見張るような税制改正案を発表する」と発言したことが報じられ、減税への期待感が広がったことがドル買いを誘った。2月末頃に発表される予算教書(用語説明1)への期待感が広がっている。

 また、週末の日米首脳会談への期待感もドル買い円売りを誘う格好に。

 10日から始まった会談では、為替問題などへの日本に対する厳しい追求がなかったことに加え、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領との間で経済的対話の枠組みが出来上がったことなどを好感してドル買いが進んだ。

今週の見通し

 ドル高円安の動きが期待されている。

 日米首脳会談での両首脳の和やかな姿勢がリスク警戒感を後退させたことに加え、今後に向けて、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領との間で経済的対話の枠組みが出来上がったことが、市場の安心感を誘っている。

 また、今週はイエレン議長の半期議会証言(用語説明2)が予定されている。一部の地区連銀総裁などから3月の利上げの可能性について言及があるものの、市場では3月のFOMCでの利上げは見送られるとの見通しが大勢を占めている。もっとも雇用市場などは基本的にかなり堅調。インフレ動向次第では追加利上げが有り得る状況だけに、議長の証言に於いて前向きな姿勢が印象的になるとドル買いが加速する可能性も。

 この場合、ドル円は115円台をしっかり超えて、さらに上値を目指す可能性が期待される。

 債券利回り動向への注目度も高い。

 今後の追加利上げ観測や、トランプ大統領による経済政策の結果としての財政赤字拡大観測もあり、米債利回りはやや上昇傾向。一方、日本国債に関しても日銀によるオペの状況が市場の注目を集めるなど、利回り動向を意識した展開が続いている。

 日米金利差が広がる場面ではドル買い円売りが入りやすい展開となっている。展開次第では115円を目指すきっかけとなる場合もありそう。

 また、フランスの大統領選を巡るリスク警戒感から、ユーロ内で独仏の利回り格差が拡大傾向にある。同傾向が目立つようだと、ユーロ売りの材料となる。ユーロドルが1.06をしっかり割り込む材料となる可能性も。

  

用語の解説

予算教書 米国では大統領に予算編成権がなく、議会が予算に関する関連法案を作成し、予算を決定する。大統領は議会に対して翌会計年度(同年10月から翌年9月)の予算に対する編成方針を示した文書を提出し、大統領の意向に沿った予算編成を促す。この文書を予算教書という。通常は2月上旬に発表されるが、新しく大統領が就任する年は就任から作成までの準備期間が必要となるため、2月末から3月にかけて発表される。
半期議会証言 FRB議長が半期に一度上院・下院の両院で行う証言。通常は2月と7月に行われる。インフレ抑制などを目的としたハンフリー・ホーキンス法に基づいて始まり、法律自体は90年台にすでに失効したものの、慣習として継続しているもの。上院は銀行委員会、下院は金融サービス委員会で証言が実施される。どちらの委員会で先に証言が行われるのかは通常年毎に入れ替わる。証言テキストは両院で共通のものが利用される。

今週の注目指標

イエレンFRB議長半期議会証言
2月14日・15日
☆☆☆
 イエレンFRB議長の半期に一度の議会証言が、14日に上院銀行委員会、15日に下院金融サービス委員会で行われる。トランプ政権下での財政政策・減税などの今後の動向が不透明で、先行き見通しが難しくなっている面があるが、雇用情勢などは堅調さを維持しており、今後の利上げにどこまで前向きな姿勢を示してくるのかがポイントに。なお、証言テキストは上院、下院ともに同じものとなるため、14日の注目度が高いが、質疑応答などで15日の証言が材料となることもある。議会証言を受けて3月の利上げ期待が広がるようだと、大きなドル買い材料に。一方、慎重姿勢を崩さないといったんはドル高に対する調整が入る可能性。この場合ドル円は113円割れも意識される。
米消費者物価指数(CPI)(1月)
2月15日22:30
☆☆☆
 3日に発表された米雇用統計は、通常注目度が最も高い非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る好結果になったにもかかわらず、瞬間のドル買い後はドル売りで反応した。平均時給の弱さが嫌気されたと見られた。市場は利上げに向けて既にかなりの水準にある雇用の増加ではなく、インフレ動向に注目しており、今後のインフレ圧力に大きな影響を与える平均時給が注目された格好。
 米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであるが、発表が遅い同指標と基本的には同様の動きを見せる消費者物価指数(CPI)への注目度が高まっている。予想は前年比+2.1%、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアが+2.4%となっている。予想通りだとすると、6か月連続での上昇となり、米国のインフレターゲット2%を超える水準となる。PCEデフレータのほうがCPIよりも一般的に低く出るため、実際には米国の物価がターゲットを超えるというわけではないが、予想通りもしくはそれ以上の水準が記録されると、利上げへの大きなきっかけとなりうるだけに、ドル買いの動きを誘いそう。ドル円は115円をしっかり超えて上値を試す動きも期待できる。
米小売売上高(1月)
2月15日22:30
☆☆☆
 米国の個人消費動向をまともに表すこともあり、注目度の高い指標。GDPの約7割を占める個人消費の堅調さは、利上げに向けて重要な材料となるため、注目度が高い。1日に発表された米新車登録台数が前年同月比-1.8%と、3か月ぶりに前年実績を割り込むなど、1月は自動車販売がやや不振となった。自動車及び同部品は小売売上高の中で最も売り上げが大きい項目だけに全体の数字を抑えると見られ、予想は前月比+0.1%と前回の+0.6%から伸びが鈍化する見込み。もっとも同項目は販売キャンペーンなどの影響で、月ごとのばらつきが非常に大きい。自動車を除いた数字は前月比+0.4%と前回の+0.2%から伸びが拡大しており、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、個人消費の堅調さへの信頼は継続しそう。同時に発表される消費者物価指数の数字にもよるが、ドル買いの材料となって115円台を試すきっかけとなりそう。

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