2017年02月20日号

(2017年02月13日~2017年02月17日)

先週の為替相場

115円手前の売りに反転

 イエレン議長による議会証言や米経済指標の好結果を受けて、米国の早期利上げ期待が広がり、一時ドル高が強まったものの、ドル円で115円の手前に控える売り注文を崩せず、ポジション調整もあって週の後半はドル安円高が進む展開となった。

 14日、15日の議会証言において、イエレン議長は今年前半での利上げを示唆。期待が後退していた3月の利上げについても、可能性を指摘するなど、前向きなものとなった。

 15日の米消費者物価指数や小売売上高など、利上げに向けて注目される重要指標が予想を上回る好結果となったこともあり、ドルは一時全面高の展開となった。

 しかし、オプションがらみといわれる115円手前の売りが厚く、上値を完全に抑えられると、その後はドル買いに対する調整の動きが本格化した。

 さらに、フランスの大統領選挙に関して、これまでも噂のあった社会党(用語説明1)と左翼党の協調に向けた動きが進んだことが、市場の期待する中道右派勢力へのダメージにつながるとして、リスク警戒でのユーロ売り円買いが広がり、ドル円にも重石となった。

 世論調査の支持率で4位の社会党アモン氏と同5位の左翼党メランション氏が連立を組むと、単純な合計で2位のマクロン氏を上回るということもあり、警戒感を誘った格好。

 ユーロ円は121円台から119円台に下落している。

今週の見通し

 リスク警戒の動きが根強い。

 今週はそれほど大きな材料がなく、基本的にはこれまでの材料を消化する展開に。

 米国の早期利上げ期待が強まるとドル買い円売りの動きに。一方、トランプ政権に対する不透明感や、仏大統領選をめぐるリスクへの注目が集まるとドル売り円買いに、という展開か。

 金利市場などでの米国の早期利上げの織り込み度合いは、イエレン議長による議会証言後明らかに上昇。FF金利先物市場(用語説明2)の動向から計算された利上げ確率は、3月のFOMCが30%超え、6月のFOMCが70%超えという状況。

 前回のFOMC(1月31日、2月1日開催)及び2月3日発表の米雇用統計(1月分)を受けて、3月の利上げ期待は一時大きく後退していただけに、かなり期待感が回復している。

 こうした金利見通しの変化は為替市場の中長期的な流れに大きな影響を与える。今週はそれほど目立った経済指標の発表予定はないが、米地区連銀総裁の講演が多数予定されており、要人の発言などがこうした利上げ期待をさらに押し上げてくるようだと、ドル買いが強まると期待される。ドル円は先週上値を抑えた115円を試しに行く可能性も十分にある。

 一方、トランプ政権の下での政策への不透明感は根強いところに、ここにきてフランスの大統領選へのリスク警戒感が強まってきた。フランスの大統領選に関しては、リスク警戒感がもう一段高まる状況、具体的にはルペン氏の大統領就任確率が高まる状況が見られると、ユーロ売り円買いの動きに。ドル円に対しても重石となると見られ、展開によっては112円割れを試す可能性も。

用語の解説

仏社会党 オランド現大統領が所属し、フランス国民議会でも単独過半数を有する政権与党。国民議会内では共和国市民運動、左派系諸派などと連立で中道左派の会派を結成している。今年の大統領選では同党のアモン氏が中道左派の代表として立候補を表明している。
 もっとも、現政権に対する批判が強く、支持率は急落しており、最新の世論調査ではアモン氏への支持は14%程度と、第4位となっている。
FF金利先物 FFとはフェデラルファンドの略。米国の民間銀行によるFRBに対する準備金のことで、これ自体は無利子。FF金利市場とは民間銀行が課せられた準備金の過不足を調整するために資金の調達・運用を行う短期金融市場のこと。FRBは同金利の翌日物の水準を誘導目標として政策金利としている。同水準を参照とする金融派生商品がFF金利先物市場で、CBOTに上場されている。

今週の注目指標

米地区連銀総裁講演
2月21日
☆☆☆
 今週は米地区連銀の総裁による講演などが多数予定されている。20日月曜日にはメスター・クリーブランド連銀総裁、21日火曜日にはハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁、23日にはロックハート・アトランタ連銀総裁が今のところの予定。このうち注目度が高いのが21日のハーカー・フィラデルフィア連銀総裁とカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁。ともに今年のFOMCでの投票権を有している。金融政策へのスタンスはほぼ真逆。タカ派として知られるハーカー総裁は早期利上げに前向き姿勢を示すとみられる。ハト派として知られるカシュカリ総裁は慎重な姿勢を示すとみられる。ただ、本来ハト派なイエレン議長が早期利上げにかなり前向きな姿勢を示しているだけに、カシュカリ総裁も利上げの可能性を示唆してくる可能性は十分にある。この場合、FOMC内が利上げへの姿勢で一致しているとの印象を与え、ドル買いに。ドル円は115円をターゲットに上昇を見せると期待される。
米中古住宅販売件数(1月)
2月23日0:00
 今週は22日のNY市場で中古住宅販売件数、23日のNY市場で新築住宅販売件数の発表が予定されている。米FRBの利上げ姿勢に加え、トランプ大統領による減税や財政支出の拡大姿勢を受けて、米国の金利は上昇傾向にある。景気回復期の金利上昇は自然な動きではあるが、投資面ではデメリットも指摘されるところ。すでに上昇傾向が目立つ住宅ローン金利の動向もあり、米国の住宅市場への注目度も高まっている。
 特に注目度が高いのは、件数も多く発表も早い中古住宅販売件数。景気回復傾向が著しいこともあり、昨年2016年通年では10年ぶりの高水準を記録した同指標。もっとも前回12月分に関しては予想を大きく下回る弱い結果となった。今回は回復が期待されており、期待通りの数字が出てくると、利上げへのハードルが下がる格好でドル買いに。ドル円は114円台に向けた動きも期待される。予想に反し、前回並みの水準にとどまると、警戒感からドル円の頭を抑える可能性。この場合112円台の安値圏トライも。
米FOMC議事録
2月23日04:00
☆☆☆
 1月31日、2月1日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が発表される。12月のFOMCで追加利上げを決めた後ということもあり、同回のFOMCは金融政策の現状維持が事前に完全に織り込まれており、実際の結果もサプライズなく現状維持となった。市場では3月の利上げに向けて声明で示唆があるのではとの期待が一部に見られたが、声明での目立った示唆はなく、会合後は3月の利上げ期待が後退する場面が見られた。
 もっとも、今月のイエレン議長による上院・下院での議会証言において、今年前半での利上げが示唆され、3月についても可能性が指摘されたことで、再び早期の利上げ期待が強まってきている。そうした中、前回のFOMCでどこまでタカ派的な議論が出ていたのかが注目されるところ。内容次第では3月の利上げ期待が一気に広がり、ドル円は115円を目指す展開に。

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