2017年02月27日号

(2017年02月20日~2017年02月24日)

先週の為替相場

頭の重い展開に

 先週のドル円は、週の前半は比較的しっかりとなったものの、週の後半にかけてドル安円高が優勢な展開となった。

 月曜日の北米市場が休場(米国はプレジデントデー、カナダはファミリーデー)となる中、先々週後半のドル安ムードが後退し、ドルの買い戻しが入る展開に。

 今年のFOMCで投票権を有するハーカー・フィラデルフィア連銀総裁が3月の利上げに前向きな発言を行ったことなども、ドル買いに寄与した。

 もっともドル円は114円手前に売りが入っており、上値進行を止められると、週の半ばにかけていったんは113円台を中心にしたもみ合いに。

 23日にムニューシン米財務長官が「低金利は続く可能性、ドル高に一定の問題がある」と発言。その後はドル安が優勢な展開となった。

 トランプ大統領による最初の議会演説(用語説明1)が28日に決まり、市場はそれまで様子見とのムードが広がったこともあり、突っ込んだ動きには警戒感も出ていたが、戻りが鈍く、ドル円は一時111円台まで値を落とす場面が見られた。 

 その他動きが目立ったのがユーロ。フランス大統領選を巡る思惑がユーロ相場に影響を与える展開となった。

 世論調査では、ルペン氏のトップが変わらない中、5月の決選投票に進むことができる二番手争いが激化。

 夫人への不正給与問題などで支持率を落としていた中道右派統一候補フィヨン元首相が支持を徐々に取り返し、マクロン元経済相と激しい二番手争いに。

 フィヨン氏でもマクロン氏でも、決選投票でルペン氏を破るとの見通しは変わらないが、フィヨン氏のほうがより接戦となるという見方が広がっており、ルペン氏が逆転する可能性を意識した市場がユーロ売りで反応した。

 その後、22日になって支持率で6位につけていた中道無所属バイル氏がマクロン氏に共闘を呼びかけ、マクロン氏も受諾。両者の支持率を足すとフィヨン氏を大きくリードすることから、市場はそれまでの警戒感が後退し、一気にユーロの買い戻しに。

 ユーロドルは1.05割れから1.06台を一時回復。ユーロ円は118円台から119円台後半まで一時回復という動きに。もっともユーロ円は、ドル円の下げもあって120円が重く、週末にかけて再びユーロ安円高に。

今週の見通し

 基本的には28日のトランプ大統領による議会演説待ち。

 減税に向けた姿勢が強調されるようだと、株高からのドルの買い戻しを誘いそう。ただ、今回の演説は一般教書演説代わりのもの(就任1年目の大統領の慣習)であり、減税も含めた予算問題は来月半ばごろの予算教書演説に回される可能性が高いため、どこまで言及があるのかは不透明。

 相場はイベントを前に頭の重い展開となっており、発表後もドル売りが入る可能性。

 ダウ平均株価が11連騰している中でドル売り円買いが進んでおり、リスク警戒感というよりもポジション調整が主体か。

 会計年度末を前に本邦企業のレパトリ(用語説明2)が入る時期でもあり、実需的にもドル売り円買いが入りやすいことも、ドル円の重石に。

 大統領の演説次第の面はあるが、基本的には頭の重い展開が続くか。112円台後半が重くなると、111円ちょうどを試しに行く可能性も。

 その他リスク要因は欧州の政治状況。

 3月15日に総選挙のあるオランダは、極右政党PVVが世論調査でトップに立っている。予想獲得議席は30議席前後で、過半数の76議席には程遠い上に、主要政党が軒並み連立拒否を表明しているため、極右政権が樹立される可能性はまずないが、世論調査で2位につける与党VDDが中道右派系の連合を組んだとしても、過半数には届かないため、政治的な混乱が予想される。

 4月・5月のフランス大統領選は、極右政党ルペン党首と中道無所属マクロン氏が決選投票に進む可能性が強まってきた。極右政党への忌避感からルペン氏勝利の可能性は低いとみられるが、世論調査の結果、両者の差が縮まってきており、今週の調査結果次第では再び波乱要素として注目されそう。

 こうした状況はユーロ円の大きな重石。118円をしっかり割り込むと、昨年後半にポイントとなった116円を試しに行く流れに。

用語の解説

大統領議会演説 基本的に議会に出席する権利の無い米国の大統領は、自身の1年間の方針を議会に説明する場として、1月の最後の火曜日に一般教書演説(State of the Union Address)という形で、演説を行う。
 この演説は国政報告という形をとっていることもあり、就任1年目の大統領が行う演説の名前としてはふさわしくないこともあり、就任1年目の大統領は一般教書演説に代わって、2月の末ごろに議会からの招待を受けて通常の議会演説という形で演説を行うことが、1980年代から慣習となっている。
 一般教書演説と同様に、大統領、副大統領(上院議長を兼務)、下院議長、連邦最高裁判事、各省庁長官、統合参謀本部議長など、米国のトップが一堂に会する場となる。
レパトリ レパトリエーション(Repatriation)の略。海外の資金を本国に戻すこと。日本企業の場合3月末が決算となっているケースが多く、会計年度末に合わせて2月後半から3月前半にかけて、こうしたレパトリの動きが大きくなりやすい。外貨売り(特にドル売り)円買いの材料となる。

今週の注目指標

トランプ米大統領議会演説
2月28日
☆☆☆
 トランプ大統領による初めての議会演説が2月28日に上院合同本会議で行われる。一般教書演説に代わるもので、今年の政策運営の基本方針が示される。外交や軍事を含めた全体の基本政策がテーマとなるため、経済・通商問題についてどこまで踏み込んでくるのかは不透明。市場が期待する減税などに関しては3月13日前後に予定されている予算教書演説に回る可能性がある。
 ただ、トランプ大統領は今月9日の米大手航空会社首脳らとの会合において、「2~3週間以内に税に関する驚くべき発表を行う」と発言しており、タイミング的にはちょうど3週目に当たる今回の議会演説で何かしらの発表があるという見方も。減税の実施などに対して強い意欲を見せ、株高が広がるようだとドル買いの動きに。ドル円は114円をターゲットに上昇する可能性も。
米ISM製造業景気指数(2月)
3月2日0:00
☆☆
 前回1月分の数字が2014年11月以来2年2ヶ月ぶりの高水準である56.0を記録した米ISM製造業景気指数。今回も同水準が期待されており、期待通りの数字が出てくると米企業の景況感の底堅さが意識される。また、前回の同指標は、構成要素のうち雇用部門の数字が56.1と、かなり強めの数字となった。今回も同様に強めに出てくると、10日に発表される米雇用統計への期待感にもつながり、ドル買いに繋がりそう。ドル円は下げ基調が一服し、113円台をしっかり回復する流れが期待される。
イエレンFRB議長講演
3月3日
☆☆☆
 3月14日・15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、3月4日からブラックアウトルールの適用期間(FOMC関係者が会合前の一定期間金融政策に関する発言を禁止されている期間)となる。その直前の3日にイエレン議長が講演を行う。金利市場の織り込みから見た3月の利上げ確率は3割前後に留まっており、見送り見通しが大勢。ただ、無視できるほど小さい割合でもない。議長の講演などで状況を見極めたいという意欲は大きい。講演により3月の利上げ期待が高まるようだと、ドル買いに。展開によるが115円台を回復するような動きまで期待される。

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