2017年03月13日号

(2017年03月06日~2017年03月10日)

先週の為替相場

利上げを織り込む動き広がる

 6日からの週は、14日、15日の米FOMC(連邦公開市場委員会)での利上げを織り込む動きが広がった。

 115円の手前にオプション取引に絡んだドル売りや3月の会計年度末を前にした実需絡みのドル売りが並んでいたこともあり、週の半ばまではもみ合いが続く展開に。

 英国の上院(貴族院)でEU離脱法案審議が難航していることを受けて、ポンド円でポンド売り円買いが出たことなども、ドル円の頭を押さえる材料となった。

 8日に発表された中国の2月の貿易統計が予想外の赤字となったことも、ドル売り円買いを誘い、113円60銭近辺まで値を落とす場面が見られた。

 状況が大きく変化したのは8日のADP雇用者数(用語説明1)。米労働省が発表する雇用統計のうち、非農業部門雇用者数の民間部門の数字との相関関係が高い同指標が予想を遥かに超える前月比+29.8万人を記録。金曜日の雇用統計への期待感につながり、一気にドル買いを誘った。

 米雇用統計の発表まで期待感によるドル買いの流れが続き、9日NY市場で節目であった115円を超える動きに。その後115円台半ばを超えるところまでドル高円安が進む場面が見られた。

 10日の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想の前月比+20.0万人をしっかり超える23.5万人という好結果を記録したものの、事前のドル買いが強かったこともあり、発表後は利益確定の売りが優勢に。

 ロス米商務長官が日本との貿易協定の優先度が高いと発言したことなども重石となり、114円台まで値を戻して、週の取引を終えている。

 他の通貨では週の後半にかけてユーロの買いが目立った。3月9日のECB理事会後のドラギ総裁会見では、インフレの基調は依然低いとして、現状の緩和策の維持を強調したものの、経済見通しに関しては、成長のリスクバランスは改善したとして、前向きな姿勢を示し、ユーロ買いを誘った。また、この時の理事会で量的緩和の終了前に利上げが可能かが議論されたとの報道が金曜日に入り、ユーロ買いを誘った面も。

今週の見通し

 FOMCでの利上げはほぼ完全に織り込まれた格好。

 市場の注目は、今回の利上げの後に向いており、今回のFOMCで示されるFOMC参加メンバーによる経済見通し(プロジェクション)と、FOMC後のイエレンFRB議長による記者会見に向いている。

 年8回行われるFOMCのうち、半分の4回で示されるプロジェクションでは、経済成長、物価、雇用など幾つかの項目の見通しが発表される。今回、特に注目されているのが、各メンバーの政策金利見通しをドットで表したドットチャート。

 前回12月のドットチャートでは2017年中に3回の利上げが中心的な見通しとなった。もっとも、12月時点では本線と見られていた今年最初の追加利上げに関して、今回のFOMCでの実施が濃厚となったことで、年内に4回の利上げを行う可能性が高まってきている。

 ドットチャートでそうした見通しが強まっているようだと、大きなドル買い材料となる。

 ドル円は115円台にしっかり乗せて、中期的に118円をトライするきっかけとなる可能性。

 また、今週は16日に予算教書(用語説明2)が発表される。国防予算を540億ドル増額することをすでに発表しているトランプ大統領であるが、それ以外の裁量的な支出を同程度削減するという方針以外、具体的な提案が示されていない。

 今回の予算教書で財政赤字に考慮しつつ、景気を支える格好で予算案が示されると、ドル買いを試す可能性が高い。減税についても具体的な方針が見えてくるようだと、ドル買い材料となる。

 内容次第では、ドル高円安の動きが加速し、中期的な大きなターゲットである118円を意識する展開も。

 

用語の解説

ADP雇用者数 米国の給与計算代行業大手ADPが、顧客である約50万社による2300万人の給与データを基に発表している雇用者数に関する指標。原則として米労働省による雇用統計の2営業日前に発表され、雇用統計本番の先行指標として注目を集めている。ADPによる雇用者数には民間部門のデータしか含まれていないため、労働省による非農業部門雇用者数のうち、民間部門の数字との相関が高いと言われている。
予算教書 米国の大統領が議会に対して提出する翌会計年度の予算に対する大統領の方針を示した文書。一般教書、経済教書(大統領経済報告)と合わせて3大教書と呼ばれるものの一つ。
 米国では議会に予算の編成権があり、大統領は議会に通常出席する権利を持たないため、大統領は議会に対して予算教書で方針を示して、議会が作成する予算関連法案への指針とする。
 今回トランプ大統領が提出する予算教書は今年の10月から来年9月までの期間のもの。なお、今回は予算案の骨格のみが示され、本格的な予算案の提出については5月になる見込み。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
3月16日 03:00
☆☆☆
 14日、15日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。結果発表は日本時間16日午前3時。今回のFOMCは年8回の会合のうち半分の4会合で実施される参加メンバー全員による経済見通し(プロジェクション)と、会合後の議長による記者会見が予定されている回に当たっており、実施のない回に比べて金融政策の変更が行われやすいとして、注目を集めている。
 政策金利(FF金利翌日物誘導目標)を0.25%引き上げて0.75%~1.00%とすることはほぼ確定的と見られている。
 市場の注目はプロジェクションや議長会見を通じて、今後の継続的な利上げが示唆され、現状で年3回と言われている利上げの見通しがさらに強まるかどうか。政策金利見通しの変化は大きな買い材料となるだけに、前向きな姿勢が目立つようだと、大きなドル買いにつながる可能性も。
 115円をしっかり維持し、中期的なターゲットである118円を目指すきっかけとして意識される。
米予算教書
3月16日
☆☆☆
 トランプ大統領は16日に初めての予算教書を議会に提出する。今回の予算教書は2017年10月から2018年9月までの2018年会計年度に向けたもの。トランプ大統領は国防費を前年度比約1割増となる6030億ドル(約69兆円)にする方針を既に示している。その分を他の裁量的な予算の削減で埋め、財政赤字を増やさない方針としている。具体的にどの分野の予算が削られるかなどが注目される。環境保護局(EPA)や国務省(日本での外務省に相当)などの予算が削られると見られている。
 景気刺激への影響が小さく、財政赤字を増やさない方針が確認できると、ドル買いの材料となる。減税の方針なども確認できると大きなドル買いにつながり、直近高値を超えて116円台に乗せてくる可能性も。
G20
3月17日、18日
☆☆☆
 3月17日、18日にドイツでG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が開催される。注目されているのは共同声明。草案段階でこれまで定例となっていた為替相場の「過度なボラティリティー」を牽制する文言や「競争的な通貨の切り下げを回避」との文言が削除されていると報じられている。中国やドイツ、さらに日本などに向けて貿易の不均衡を牽制する米国の意向が働いているとみられる。為替相場の安定につながる文言が削られ、貿易の不均衡を牽制する文言が入ると、ドル安が進む可能性がある。声明のトーンにもよるが、ドル円は114円を割り込み、大きく値を落とす可能性も。

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