2017年04月10日号
先週の為替相場
ドルは神経質な振幅
3日からの週、ドル円は地政学的リスクなどを意識した不安定な展開となった。
3日の英紙にトランプ大統領が「単独でも北朝鮮に向けて行動」と発言し、リスク警戒感からドル円は111円台から110円台半ばへ。
その後、5日朝に北朝鮮が弾道ミサイルとみられる飛翔体を発射との報道などにドルが重くなる展開が続いた。
しかし、5日の米ADP雇用者数が予想を大きく上回り、金曜日の米労働省による雇用統計への期待感が広がったこともあって、ドル円は買い戻しが優勢に。
同日NY市場午後に発表されたFOMC議事録ではFRBのバランスシートの縮小(用語説明1)について言及があり、瞬間的にさらにドル買いも、その後は一転してドル売りと不安定な動き。
金曜日の米雇用統計と米中首脳会談を前に利益確定売りの動き。
その後、110円台後半を中心にした値動きが続くと、7日朝に米軍がシリア(用語説明2)をミサイル攻撃したことが報じられ、一気に110円台前半に。
シリア政府軍が化学兵器を利用した可能性が高まったことを受けて、トランプ大統領が米中首脳会談の最中に強硬手段を決断したもの。
一時110円13銭までと先月27日、28日の安値に迫る動きを見せたものの、110円手前の買いがしっかりで、雇用統計を前にドル円は110円台後半を回復。
雇用統計では非農業部門雇用者数前月比がまさかの10万人を割り込む鈍い増加にとどまり、再び一気のドル売り。しかしこちらも110円10銭台で止めらえると、下値のしっかり感に買い戻し。
更にダドリーNY連銀総裁が年末もしくは来年の早い時期でのバランスシートの正常化開始の可能性に言及したことで、ドル買いの流れが強まり、111円台を回復して週の取引を終えている。
欧州通貨は対円ではドル円の上昇局面でしっかりとなったものの、対ドルでは頭の重い展開に。
米国のバランスシート縮小への動きが欧州通貨売りドル買いを誘ったことに加え、7日の英鉱工業生産をはじめ、経済指標がいまひとつ冴えなかったことが重石となっている。
今週の見通し
ドル高の流れが期待されるところ。
米FOMCでの今年の利上げは3回がコンセンサスになりつつある。一時4回以上の利上げを期待する動きが強まっていただけに、やや物足りなさもあり、ドルの重石となっていた。しかし、バランスシートの正常化が比較的早い時期に開始されることで、利上げと同様に金融引き締めの効果が期待されるだけに、ドル売りの動きも落ち着きを見せると期待される。
3度にわたるQE(債券購入プログラム)政策を経て、FRBのバランスシートは約4兆5000億ドル(約500兆円)にまで膨れ上がっており、この正常化に向けた動きはドルに対する信認が強まる効果も期待される。
中長期的にもかなり大きなドル買い材料だけに、当面はドルがしっかりとなる可能性も。
今週はそれほど目立った材料もないだけに、先週末からのドル高の流れがどこまで継続していくのかが注目材料に。
ドル円は先週末の大きなドル売り材料を受けても110円の大台を維持した。この動きは短期的なドル安の一服感を誘っており、こうした面からもドル買いが出やすい局面に。
ドル円の111円台半ばから112円にかけては依然として売り注文も入っているが、流れ的にはこうした売りをこなして、先月末に付けた112円20銭台の直近高値を超えて、113円を試す展開を予想している。
用語の解説
バランスシート縮小 | リーマンショック以降、米FRBが3度に渡って行った債券購入プログラム(QE政策)の結果、FRBが保有する証券は約4.5兆ドルに上っている。すでに新規の債券の購入自体は取りやめているが、満期が来て償還した債券については再投資を行っており、バランスシートの規模は維持されている。この償還が来た債券について、再投資を取りやめることで、バランスシートの自然な縮小が可能となる。もっとも、2018年以降償還期限の来る証券が急増するため、すべての再投資を取りやめると市場に与える影響が大きくなる可能性がある。 |
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シリア | 中東・西アジアに位置する共和国。北にトルコ、東にイラクなどと国境を接する。2011年以降アサド大統領率いる政府勢力と、ジハード主義勢力、クルド人勢力など複数の反政府勢力、ISISなどの勢力に別れ、紛争が続いている。米国は1976年時点からテロ支援国家として認定するなど、政府勢力を批判している。一方、ロシア・中国などは比較的関係が深い。 |
今週の注目指標
イエレン議長講演 4月11日05:00 ☆☆☆ | イエレンFRB議長が、米国時間で10日、日本時間で11日の午前5時からミシガン大学で講演を行う。先週発表されたFOMC議事録において年内の開始に言及があり、先週末のダドリーNY連銀総裁による発言でも年末もしくは来年の早い時期として肯定されたバランスシートの縮小について、議長がどのような発言を行うかが注目される。ツイッターでも質問が募集されており、市場が注目する事項について突っ込んだ発言が期待されるところ。早期のバランスシート縮小を肯定するとドル買いの材料に。ドル円は113円のターゲットを目指す可能性も。 |
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米小売売上高(3月) 4月14日21:30 ☆☆☆ | 米国の個人消費動向を表す指標。先週末に発表された米雇用統計が3月に北米を襲った寒波の影響もあり、予想外に弱いものとなっただけに、個人消費の堅調さが維持されているのかが注目されるところに。小売売上高は前回前月比+0.1%と6ヶ月ぶりの低い伸びに留まっており、今回も同様に弱めの数字が出てくると、先週末の雇用統計と合わせて市場の警戒感を誘う可能性。今回の予想は前月比変わらずと前回以上に弱めの見込み。ただ、今年に入ってやや鈍い新車販売の影響などを受ける自動車及び同部品の売上を除くコアは前月比+0.2%と堅調さを維持する見込み。予想通りもしくはそれ以上でドル買いに安心感も。同時に発表される消費者物価指数次第でもあるが、113円を試す動きも。 |
米消費者物価指数(CPI)(3月) 4月14日21:30 ☆☆☆ | 米国のインフレ目標の対象はPCE(個人消費支出)デフレータであって、消費者物価指数ではないが、発表が早く、傾向はほぼ同じとなる(水準自体はCPIのほうが一般的に高く出る)CPI に市場の注目が集まる。予想は+2.6%と、前回の+2.7%よりは低いものの、かなりの高水準。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアは前年比+2.3%と前回よりも強めに出る予想となっており、物価の上昇傾向が継続しそう。 コアの数字が予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、6月の利上げ期待が拡大し、ドル買いが強まる可能性。同時に発表される小売売上高次第でもあるが、113円を試す可能性。 |
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